演奏者の写真の撮り方②
ここでは、楽器別の撮影のコツについて書きます。演奏者の撮影の全般的なことについては下の記事をご覧ください。
指揮者を撮るには、指揮棒の位置に注意しながらとる必要がある。指揮者は腕を振り上げている時間が8割、振り下ろしている時間が2割くらいだと感じている。腕を振り上げている間にシャッターを押してしまうと、腕や指揮棒が顔にかぶってしまう。指揮棒が下がっている瞬間、要するに拍ちょうどのタイミングでシャッターを押すことができると顔に余計なものが被らない状態で撮れる確率が上がる。ただし、拍の打点を打つ瞬間は動きが速いので腕や指揮棒がぶれる可能性が高くなる。拍の打点で撮影するためには演奏している曲を歌いながら拍をとり、そのタイミングでシャッターを押せばだいたい合う。また、4拍子の曲の場合、3拍目の終わりのタイミングを狙うと腕が下がっており、かつ腕が横に開いている写真を撮ることができる。指揮者によって、撮影する方向に向き不向きがある。ちょっとした癖の積み重ねでそのようなことが起きているのだと思っている。
バイオリンやビオラを撮る時は、弓が先端にきている時を狙うと、奏者と楽器本体と弓が収まった構図となりやすい。逆に、弓が根元の位置にある瞬間に撮影してしまうと弓や右腕が顔にかぶってしまう。弓が下げ弓から上げ弓、あるいはその逆に切り替わるタイミングでシャッターを押すとほかの部位も動いてしまっていることが多いのでぶれやすくなる。指揮者を狙う時とは逆に拍のタイミングではなく拍の終わりかけを狙った方がぶれない写真を撮ることができる。弦楽器の時は息を吐きながら歌い、息を吐ききる少し前のタイミングくらいだとちょうどよくなることが多い。Google等の画像検索で「バイオリン奏者」と検索するとたくさん写真が出てくるが、弓先の状態にある時の写真の方が圧倒的に多い。弓元での撮影を狙うなら、少し上から撮るなどの対策をしなければ顔が隠れてしまう。また、低音側の弦を弾いている時に撮るか高音側の弦を弾いている時に撮るかで写真の雰囲気が変わる。バイオリンやビオラでは、高音側の弦を弾いている時は、顔の横側から撮らないと弓が顔にかかってしまう。
チェロ奏者は譜面台を低めに設置することが多く、また弓と弦が交わる演奏の位置が低いため顔がうつむきになりがちである。そのため、チェロ奏者を撮る時は、少し下からあおり気味に撮ると顔がレンズの方を向いた写真となりやすい。しかしながらオーケストラの撮影でそのアングルを構えられることはほとんどない。指揮を見る瞬間を狙えば顔をとらえることはできるが難しい。バイオリンやビオラとは違い、弓の位置をあまり気にしなくても全身と楽器がほどよく構図に収まる。しかし、弓先で弾いているタイミングを狙った方がきれいなバランスとなる。また、バイオリンやビオラとも共通するのだが、根本で構えた時、初心者は演奏フォームが崩れがち(特に右肘の位置)となっている人が多いので、弓先ならフォームの崩れがあまりないという利点もある。右肘が下がってしまっている状態の写真を撮ると、いかにも初心者という印象の写真となってしまう。チェロを撮る時は、左手のポジションに注目した方がいい。第一ポジションで弾いているタイミングを狙うより、サードポジションなど少しポジションが上がった位置に左手を構えている時の方がすっきりとする。こちらもGoogle等の画像検索で「チェロ奏者」と検索すれば、上記の意味を理解できるはずである。
コントラバスは顔の大きさに対して楽器が大きすぎて、楽器全体を入れようと思ったら顔が小さくなってしまうし、顔をアップしようとすると何が何だかわからない写真になってしまう。妥協策として、頭の天辺から駒の位置まであたりを立て長の写真としてとるとコントラバスらしい写真となる。楽器が譜面台の陰に隠れてしまうことが多く、譜面台の隙間から楽器と人物を撮れる撮影場所を確保することが重要なポイントである。
管楽器奏者の写真は弦楽器奏者に比べて動きが少ないので撮りやすい。管楽器で唯一動きが大きい楽器はトロンボーンである。弦楽器とは違い、音を出している瞬間は動きが止まっているので、テンポが超高速でなければ大きな問題とはならない。トロンボーンのスライドが長く出ている時に撮影すると楽器全体を写真の構図に収めにくい。休みが多い楽器は、事前にスコアを見て計画的に撮影していかないと撮り損なってしまう。特にアシスタント奏者、ピッコロ、コールアングレ、コントラファゴットは出番が少ないので要注意である。ファゴットとトロンボーンは撮影ポジションをうまくとらないと顔が楽器の影に隠れてしまう。トランペット、クラリネット、オーボエ等は一見左右対称なので正面でない場合左右のどちらから撮っても同じように感じるかもしれないが、意外と左右で違う。特にトランペットは演奏者の左手の側から撮ることが多い。その方が手の重なりと楽器のバランスが良くなるからである。フルートは、顔を少し左に向けて演奏している。顔を正面から撮ろうと思ったら演奏者の左手側から撮ることになるが、そうすると体全体がそっぽを向いたような写真となってしまうし、楽器がとても小さく見えてしまう。演奏者の少し右側から撮ることで体全体がカメラの方向に正面を向くことになり、楽器と人物の大きさのバランスも整う。
私が撮影している時にいつもおもしろく感じていることは、管楽器奏者は多彩な表情をとりながら演奏している人が多いことである。一方、弦楽器奏者は「ポーカーフェイス」がデフォルトである。少しでもいい顔を撮影しようと思ったら、同じ構図でも何枚も撮ることで当たりの写真を手に入れることができる。
パーカッションの撮影は、演奏の出番が少ないことと奏者の体の向きに注意する必要がある。演奏の出番が少ない曲はかわいそうなくらい出番が少なく、奏者のコメントとして「ワタシ、今日は一回しか出番がないんです。。。それもチーンの一発だけ(涙)。せめてパーンがよかったな(笑)。」という声を聞くほどである。撮影者としては、その「チーン」を撮り逃さないように事前にスコア等でタイミングを確認しておかなければならなくなる。楽器を演奏しているタイミングを狙って撮るのは当然だが、まさにたたく瞬間をとらえる必要はない。むしろ、演奏のためにスティックを構えてから実際に叩いてスティックを置くまでのどこかで撮影すればよく、シャッタースピードを上げきれないような状況では、むしろ演奏直前の構えている間に撮影した方がきれいに撮れることが多い。パーカッションの演奏は、基本的に楽器が体の正面にくるように体の向きを変えながら演奏する。そうすると、カメラで狙ったときにソッポ向いていることがよくある。特にティンパニー奏者を狙うときはその傾向が顕著である。シンバルは、うまく撮影ポジションを選ばないと、顔が楽器の影に隠れてしまう。楽器を大きな音で叩いた直後の楽器が広がっているタイミングがベストだとは思うが、中々そういうタイミングはない。
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