受付等担当者の当日の流れ
受付等の担当者は開演時刻の3~4時間くらい前に集合することが多い。集合後は打ち合わせとセッティングをしてチラシの挟み込みを行って開場時刻に備えるという流れである。午後公演でも夜公演でも食事休憩を挟むことが多い。受付等担当者がスタンバイ状態となるのは開場時刻ではないことに注意しなければならない。全員が早めの時間にスタンバイとする必要はなく、例えばドアマンなどは会場時刻直前でも問題ないが、少なくても外から見える部分に関しては早めに準備を終わらしておくべきである。受付スペースは開場時刻前に外に並んだお客さんから丸見えの状態なので、開場時刻ギリギリまで食事休憩をしていたり各ブースの設置作業をしていたりするのはいいことではない。開場時刻の30分前にはスタンバイ状態でいたい。人気公演でお客さんの集まりが通常よりも早いようなら、開場時刻を早める場合もある。主催者側やステージマネージャーの判断で早くなる場合もあるし、ホール側からホール敷地外に行列をはみ出させないために開場時刻を早めるように指示される場合もある。そのようなことにも対応できるように早めに準備しなければならない。
集合して打ち合わせが終わった後はチラシの挟み込みとなる。挟み込みの時間には他団体から助っ人がくることもあるし、受付担当者だけで作業を行うこともある。スムーズに挟み込みの作業を開始するためには、受付担当者のうち数人で事前に挟み込み用の机などのセッティングをしておくといい。チラシを置くための台を並べチラシを順に置いていくだけのことだが、全員が集合してから動きだすと手際が悪い印象となってしまう。チラシとアンケートをプログラムに挟み込むことが多いが、挟み込む順番については事前に主催者と相談しておいた方がいい。挟み込みの作業自体は、人海戦術で行うほかない。挟み込みが終わるのと同時に受付ゲートを設置し、挟み込みが行われたプログラムをゲートの机の上や中に積み上げていく。これまでの経験上、挟み込みをする各団体から1人来てもらい受付担当者数名と一緒に挟み込み作業をすると、500部のプログラムに挟み込むのにだいたい20分~30分かかる。1000部だとその倍の時間が必要である。
受付等のセッティングは挟み込み作業の前後で行う。先に大まかにセッティングをしておき、挟み込み作業後に修正する場合と、挟み込み作業前には何もせずに挟み込み作業の後にセッティングする場合がある。挟み込み作業で使用する机やスペースが十分にあるのなら先にセッティングを済ませておいた方がいい。そうでない場合は、嫌でも挟み込み作業後にセッティングとなってしまう。
到着の早いお客さんは、開場時刻の1時間前でも着いてしまっていることがある。お客さんが一人でも見えたら誘導係は動き出さなければならない。また、受付近辺の荷物を整理しお客さんを迎え入れる状態とならなければならい。開場時刻までお昼休憩というモードではいけない。お客さんから見えないところでリラックスしているのはかまわないが、お客さんから見えるところでは時間前でも接客モードとなるべきである。
開場時刻になったら、もぎり担当者はチケットを確認しお客さんを迎え入れる。もぎりと同時に、体温を測ることもある。体温を測る場合は通過に時間がかかることになるので渋滞を回避するためにレーン数に工夫が必要である。それらのことが終わったらお客さんにプログラムを渡す。机の上に並べて置き自由にとってもらうスタイルもあるし、担当者が手渡しするスタイルもある。チケットを受け取ったりプログラムを手渡ししたりする場合は爪をしっかりと整えておいてもらいたい。意外と目につくものである。
開場時刻後のお客さんがロビーにいる状態の時は、受付等の表回りの担当者に休憩時間はなくなる。一見もぎり担当者以外は仕事がないように思うかもしれないが、お客さんはそういう目ではみていない。制服を着ている学生がいれば、全員が何らかの役割を常に持っていると考えてしまうものである。なので、例えばドアマンは開演時刻まで役割はないかもしれないが、友達同士でしゃべっているのではなく笑顔でお客さんをお迎えするように心がけるべきである。ホールに不慣れなお客さんの方が圧倒的に多いので、表回り担当者の誰もが何等かの問い合わせを受ける可能性がある。様々な質問にもしっかりと対応してもらいたい。
受付等の仕事時間は、全員のお客さんがホールを退館するまでである。時々、多数のお客さんが目の前にいるにもかかわらず水分補給をしたりスマートフォンを操作したりしている人をみかけるが、それは遠慮すべきことである。水分補給やスマートフォンの操作は演奏中でお客さんがロビーにいないタイミングや、受付担当者用の休憩スペースで行うべきである。演奏終了後に気が緩んでそういう雰囲気になりがちなので、最後のお客さんが掃けるまで油断した行動はとらないようにお互いに注意しなければならない。
本ベルが鳴ると同時にドアマンがドアを閉じ、演奏中はドアの開閉を見守る。ドアマンがいるなら、お客さんに扉の開閉操作をさせてしまわないようにする。お客さんが扉の開閉をしてはいけないというわけではなく、重たくて面倒な開閉作業をさせてしまうのは申し訳ない、あるいは演奏会の格式をあげるための配慮である。二人でドアを担当する場合は、一人はドアの外側に待機し演奏中に外側からお客さんが入らないように堰止めをする。もう一人はドアの内側(客席内)で待機し、客席内を見張る役割もする。ドアマンが内側に待機する場合は、ドアマン用の席を確保しておくべきである。演奏中、客席内で立っているのはお客さんの演奏への集中を散らす原因となるので避けるべきである。演奏中に内側からお客さんが外に出る場合、二重扉が同時に開かないように片方ずつ開いてお客さんを外に誘導する。曲の合間でドアを開けていいタイミングを知らせるのもドアマンの役割である。曲間に外側からお客さんを入れる時も可能な限り二重扉の両方を同時に開けないで済むようにする。そのためには、曲が終わりそうなタイミングでお客さんを外扉と内扉の間に誘導し、その後、外扉を閉め、曲が終わったタイミングで内扉を開けるようにする。そのような操作を完ぺきにこなすためには、ドアマンもある程度曲を知り、演奏時間を把握しておくべきである。注意しなければならないのが、組曲である。組曲は数曲がまとまって一つの曲を構成するものであるが、それぞれの曲間でお客さんの入れ替えを行っていいのかを事前に確認しておく必要がある。交響曲やコンチェルトなども楽章間でドアを開けてもいいのかを確認しておかなければならない。アタッカとなる場合は、曲の分かれ目が分かりにくく、現在何曲目なのかを間違えることもある。アタッカのタイミングでお客さんの出入りを認めることは通常はない。問題は、アタッカに近い状態で曲を進める場合である。曲により、あるいは指揮者により、曲と曲の間をほとんど開けないという方針をとることがある。その場合もお客さんが出入りできる時間はなくなる。
また、あと何分で客席に入れるようになるのかとお客さんに尋ねられることも日常茶飯事である。演奏開始のタイミングで時計を見て、何分後に曲が終わるのかを把握しておくといい。休憩時間、終演後は、二重扉の内外両方全てのドアをドアマンが開けて解放状態とする。逆に演奏会が始まった後は、休憩時間と終演後以外は基本的にはドアをオープンな状態にはしない。時々曲が変わるたびにドアを全部開けてしまう演奏会を見かけるが、それは本来のクラシックコンサートのスタイルではない。新型コロナウィルス感染予防のためにこまめに換気する習慣がついてしまっているのかもしれないが、古くから伝わる作法としては間違いである。プログラム終了後にアンコールがあるかないか、ドアマンは事前に把握しておかなければならない。それにより、ドアを開放するタイミングが変わるからである。アンコールがあるにもかかわらず、プログラム終了時点でドアを開け放つようなことをしてはならない。ドアが解放されるとお客さんはアンコールがないものだと思い、拍手をやめ立ち上がり帰ろうとしてしまう。ドアの解放は拍手が止み客席内の照明が点灯してから行う。演奏開始時にドアをクローズすることも忘れてはならない。開演時刻前、休憩時間中はドアが解放されており、本ベルが鳴るタイミングでドアをクローズするのはドアマンの仕事である。ドアマンがいない場合、受付担当者などが各ドアを回って閉めなければならない。そうしないと、ドア近くに座っているお客さんが気を利かせてドアを閉める、ということになってしまう。ドアのクローズは予ベルが鳴ってだいたいのお客さんが席についたタイミング、あるいは本ベルと同時に閉めるのが望ましい。ステージのライトが上がる前にはドアを閉めておくべきである。
演奏開始後は、受付の荷物を徐々に片付けていくようにするといい。遅れてくる人もいるので途中休憩までは受付をオープンしていなければならないが、規模を縮小してかまわない。また後半プログラムになったら完全に受付をクローズのモードにしてしまい、来客者が現れた場合のみ個別対応としてかまわない。受付を縮小させると同時に、演奏会終了後のモードに切り替える必要がある。具体的には、受付ゲートの机等を片付け、アンケート回収ボックスを設置する。たまに、1曲目の終了時で帰路につくお客さんもいる。そういう人にも対応できるようにしておきたい。受付の片づけは演奏会終演後でもかまわないのかもしれないが、演奏会終了後お客さんが完全に掃けるまでには時間がかかり、それを待ってから撤収作業をするとホールの閉館時間に間に合わなくなる。そのため、開演時刻後のお客さんのいないタイミングで受付を徐々に片付けるようにするべきである。最後のお客さんをお見送りした10分後にはきれいさっぱりと片付いているのが理想である。片付けは受付で使用したテーブルや文房具を元に戻すのと、色々な小道具を搬入口へと運ぶ作業をする。受付の荷物をトラックに積み込まないとトラックが出発できないので、そのつもりで片づけをしなければならない。
演奏会の開始前や休憩時間中に寄付金を募るスペースを設けることもある。クラシックの演奏会では、大きな声をだして寄付金を募集することは少ないが、うまく目立つように工夫している団が多い。寄付金の集め方は、募金箱を持って立つこともあるし、募金箱を机の上に置いておくだけのこともあるし、寄付金を頂戴するときに領収書を渡すこともある。寄付金の場合、1~2人なら並んで待ってもらえるが、それ以上の行列になると並ぶ意欲を無くす人が多いような印象を私はもっている。
受付等表回り担当者の演奏会終了後の解散手順についても事前に確認をしておくべきである。解散の合図がないと受付担当者はなかなか帰ることができなく、おまけに演奏会終了後はステージ片付けや来客の対応で主催者から忘れ去られがちである。受付業務の仕方によっては、1曲目の演奏終了時に一部の人は解散とする場合もある。表回り担当者全員が最後までロビー付近で待機している必要はないので、工夫して少しでも多くの人が演奏を中で聞けるように配慮があるといい。