#59 朝5時の京都にて牛丼に殺されかける。
早朝途方に暮れる
電車まで1時間ある。この頃の朝は想像より寒い。
とりあえず店内に入りたい。イートインできるコンビニを探すが、そりゃない。お腹は空いていないが何かお腹に入れておこう。
そういえば近くに牛丼屋があった。
早いし安いしうまいやん
牛丼が好き。丼が好き。
なんせ食べるのが楽だから。
おかずと米の往復がどんぶり一つで解決している。
「肉を米の上に乗っけよう!」
「鶏肉を子供の卵で綴じちゃう?」
「刺身とか乗っけたら掻き込めるお寿司じゃね?」
誰が初めに考えたんだろうか。
個人的にはすき家が好き。山かけわさびが良い。
すき家ばかり行っていた。
それが私を殺そうとする理由になったと言っても過言ではないかもしれない。
早朝ワンオペ
久々に訪れた牛丼屋は形態が変わっていた。
フードコートのような店内、配膳はご自身、ドリンクバー。
朝っぱらからの牛丼は小盛りで良いのにいつも胃袋に負担をかけるようにワンサイズ大きいのを頼んでしまう。
またやっちまったなぁと思いながら紅生姜と七味をトッピングして席に座る。
コンプレックス
「ちまちま食うな」
まだ会社員だった頃、社会人野球に所属していた。
午前中の練習が終わり、若手の選手だけで昼ごはんを食べることになった。
私の提案に全員が賛成し牛丼屋に行った。
私と同期は箸で食べようとすると
「え、箸で食べるん?」
小柄だが運動センスが高い一つ上の先輩が純粋に驚いていた。
「俺絶対スプーンやな」
「なんでなんですか?」
「そりゃ男はちまちま食わんとがっつくやろ」
少し中性的な顔で先輩から可愛いと可愛がられるこの人にとって男らしくありたいという思いがあるのかもしれない。
コンプレックスが習慣を変えるのか。
事件簿
それから私はスプーンで牛丼を食べる。
確かに掻き込みやすいなぁと思い出していたら、うまく飲み込めない。
うまく口を動かせない。
やばい、喉に詰まった。水!水!
私としたことが寒いからといって熱いお茶を注いでいた。
でも躊躇してられない。
早く!早く!あつ!あつ!
お茶が喉と牛肉の隙間を流れそれと共に牛丼も流れていった。
危ねぇぇぇええええ!!!!
本当に危なかった。
うっすい肉提供してんねんからしっかり切っとけや、よく見れば他にも切れておらず一口に行くにしては難しいお肉がちらほら見える。スプーンでは切れない。恐る恐る口に入れて歯で噛むがそれでも切れない奴もいる。なんだこの兵器は。プルトンか?ポセイドンか?
電車まであと15分を切っていた。
殺されかけたうえに少し走らされて始発に乗った。