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#82 散文「月がでしゃばる日には」 実話。偉そうに解説付き。

月がでしゃばる日には

夜の部屋に耐えきれなくなり500円玉を握り外に出た。

気分に沿ってコンビニで無駄なものでも買おうと決めた。

入り口横のゴミ箱近くでピンク色のモンスターをストローで飲むセミロングの女性と目が合い、思わず惚れた。モンスターをわざわざストローで飲む姿はどこか上品で、私の元から消えたあの人を影に見た。

私の買うものは決まっており、例によって栄養ドリンクと肩を並べるそれを手に取った。その時、まだあの女性は外にいる。

「モンスターはストローで飲むのが良いですよね」なんて話しかければ
連絡先まで聞く人たらしを演じる話術はあると自負していた。

レジには大学生くらいの男の子。
袋の有無は聞かれる前に食い気味に言う。

早くあの方のところへ行きたい。

裸でポケットに入れていた500円玉を置くと同時に
言わずもがなストローが出てきた。

こいつか。


解説

コロナ禍に関西から関東へ転勤。
友達もいない。外出は控えなければいけない。
鬱のような症状はこの頃から見え隠れしだす。

会社寮、ワンルーム。
息詰まり、慌てて呼吸をしようとして過呼吸気味になって部屋に居るのがまずいと思ったので500円玉を握りしめて外に出た。

満月じゃなかった。1/4ほどの月、でも雲ひとつなかった。
満月だとドラマチックなことでも起きるかなと本当に思っていた。

この時の女性の顔はもう覚えていない。
とにかく美しかった。
だから話しかけようと思った。その材料としてモンスター買ったのに。
店員さんの男の子・・・

ストローで飲むのは彼女がポリシーじゃないとわかって、
なんかその日の月のことを思い出した。



友人の感想


「月が本文とは関係ないのが良いね」


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