#69 酔うと最近覚えた知識を振り撒く先輩の自由はどれか。
酔った先輩は少しの知識と自身の考えでオカルトじみたことを話す。
「夢日記ってな、書き続けてたらな、次第にな、現実と夢の境目がわからんくなってくんねんて」
「なんか聞いたことありますね。やってます?」
「やってないわ。なんでやんねん」
少し怒られた気がしたがそれはそれで意味わからなすぎる。
空いたスミノフをテーブルに置いた先輩は同じものをタッチパネルで注文した。
お開きはまたの空き瓶を待つ。
「そもそもな、なんでこんな話してるかわかるか?」
「マジでわかんないです」
興味ある話題なのに不意に怒られたことでもう話したくもない。
「これな、いま現在が夢の可能性あるやろ?」
「ん、確かに」
「もうすでにな、その状態かもしれんってことや。てことはな、いま俺の夢の中ですよって言われても俺から見れば夢かもしれんからな、完全には否定できひんってことや」
なんか意外と面白そうな気がしてきた。
遮るように店員がスミノフを持ってきた。
それに釣られて先輩はスミノフの話をしようとした。
あほぅ。
「ほんでほんで、夢を完全否定できひんのですよね?」
「あ〜そそ、やからな、どうすんねんってことや」
「??、どうする?」
「俺はな、この世界で何してもええってことや。だって俺の夢の中やろ?他人がなにしようが全く関係なくな、夢の中やとしたら目覚めるまでバリ自由やん。俺はな、自由に生きる」
「宮崎駿の最新作見ました?」
「僕たちはどう生きるかやっけ?それは関係ないわ」
酔うと可愛い。
シラフじゃ言えないんだろうなと思うとみんな可愛い。
店を出るとちょうど先輩の同期に出くわす。
私はその人と面識がなく、疲れが足にまできていたのでそこで帰宅した。
次の日の朝。
先輩は寝坊して30分遅刻した。
反省顔が得意なこの人が昨夜は自由に生きるって言ってたっけな。
夢の中で寝坊してどうすんねん。