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クラシエ「共想いカンパニー」津田聖一郎さん・北原裕子さんインタビュー

ファンベースなコミュニティを実践されている企業に対談形式でインタビューしていく連載企画「ファンベースなコミュニティを考える」。

第3回はクラシエ株式会社が行う少人数のコアファンとの共創コミュニティ「共想いカンパニー」を担当する経営企画室 企画部 兼 CRAZY創造部の津田聖一郎さん・北原裕子さんにインタビューを行いました。

クラシエでは2022年より社員とクラシエファンが「誰かを想う」気持ちをエンジンにした、共創(共想)活動を行う「共想いカンパニー」を開始されています。ファンが感じるクラシエの価値を経営に活かしていきたいと語るお二人にファンベースカンパニーの宮下(以下、FBC宮下)がお聞きしました。

右から)クラシエ 津田さん 北原さん、ファンベースカンパニー 宮下

【基本情報】
コミュニティ名: 共想いカンパニー
開始時期:2022年
実施内容:3か月間(1回2時間、全3回)オンラインで実施
会員数:1回につき8名程度  これまでに2期開催(2024年時点)
運営体制:社員の参加メンバーが2名、サポートスタッフを含めて6名

共創コミュニティ「共想いカンパニー」

「クラシエファン」との対話を通じて、どんな価値を感じてくださっているのか確認したい

FBC宮下: 「共想いカンパニー」の取り組みを始められた経緯について、お聞かせください。なぜ経営企画部門でファンとのプロジェクトに取り組まれようと思われたのですか?

津田: 最初のきっかけは、「クラシエ」という企業のファンは本当にいるのだろうか、という素朴な疑問でした。私たちは主に卸流通を通じて商品を小売店で販売しているため、実際に商品を購入してくださるお客様の顔が見えにくい状況でした。ブランドや商品ごとにファンが実在することはわかっていたのですが「クラシエという企業のファン」って本当にいるんだろうか、と。

北原:私は元々、日用品事業のマーケティングを担当していて、その後日用品、薬品、食品という3つの事業のマーケティングに関わる部門にいました。3事業のマーケティングトップと、 クラシエの強みや特徴は何なのか という議論をしていた際に、みんななんとなく一致するおぼろげなイメージはありつつも、ちゃんとした言語化ができていませんでした。
その頃、それぞれの事業の調査などに参加する機会があり、お客様が3事業に共通するクラシエらしさを見つけてくださっているという場面に何度も立ち会うことがありまして。このお客様が感じる「企業としてのクラシエ」の特徴を他の人にも共有できる形にしたいなっていうのが個人的な思いとしてありました。企業が提供する価値は、私たちが決められるものではなくて、受け止める側に生まれるものだと考えています。ファンとの対話を通じて、どんな価値を感じてくださっているのか確認することが必要なんじゃないかと思っていました。

少人数のコアファン同士・ファンと社員が共想(きょうそう)を目的にとことん対話しあう

FBC宮下: ファンとの対話を目的に始めようと思われたのですね!「共想いカンパニー」はどのようにスタートされたのでしょうか。

津田: 2020年から準備期間として、ファンの定義や、どのようなコミュニケーションが可能かをリサーチしていました。実際に「共想いカンパニー」が始動したのは2022年です。
リサーチを進める中で、人数の規模よりも一人一人のファンの声に耳を傾け、深い対話を通じて、私たちの企業価値を本当の意味で理解することが大切だと気づきました。そのため「共想いカンパニー」では深い対話ができる少人数のコアファンと活動しています

参加者には「特別社員証」をお送りしている
顔合わせのキックオフ「入社式」の様子

北原:共想いカンパニーは誰かを想う気持ちを原動力に、一緒に新しい明日を生み出す共想(きょうそう)の場です。
まずアンケートへご回答いただいた方へオンラインで事務局との「顔合わせ会」を行っています。ここではご挨拶とともに参加意向をお伺いしながら、個別に世の中のどんなことに興味があるのかをヒアリングさせていただきます。
その後「共想いカンパニー」なので「入社式」という顔合わせのキックオフを行っています。そして、1か月ずつあけて「共想いミートアップ」DAY1(初回ミートアップ)、DAY2(2回目ミートアップ)を開催しています。
DAY1では、クラシエという共通項でお集りいただいたので「クラシエの好きなところ」について、とことん語っていただいています。
「顔合わせ会」の際に個別にヒアリングさせていただいた中の共通テーマについてDAY1とDAY2の間にTeams上でやり取りを行います。Teamsでの発言を元にDAY2ではクラシエから離れて、社会課題や、身の回りで気になっていることをとことんお話いただいています。
ここまでの流れを約3か月間で行っています。

FBC宮下:さすが「共想いカンパニー」!「入社式」を開催されたり、オンライン上のプラットフォームもTeamsでやり取りをされているんですね!

多様な意見を安心して発言できる場をファンも社員も楽しんでいる

FBC宮下: DAY1とDAY2の間のTeamsでのやり取りはどんなコミュニケーションが行われているんですか?

北原:ミートアップのDAY1とDAY2の間のTeamsでのやり取りが非常に活発なんです。いくつか毎回取り上げるテーマがあるんですが、それにかかわるようなウェブ記事やニュース記事を紹介すると、それに対して「身の回りでこんなことがあって」みたいなことを投稿される方がいて、またそれに対して「私はこうだよ」みたいな感じで会話が続いていく感じです。
参加後のアンケートでも、ミートアップDAY1からDAY2に向けて、満足度が高まる傾向があって。Teams上で、文字だけのやり取りのところで、ぐっと高まるみたいなことが起きていますね。それがDAY2のディスカッションの時の満足度に繋がるっていう感じがしています。

FBC宮下:「満足度」というお話も出ましたが、参加したファンの方からはどんな感想があがっていますか?

北原:「同じものを好きっていう人とお話ができるっていうのが楽しい」とか、参加したクラシエ社員も含めて、「学校など以外で、こんなふうに深く議論をすること自体が、なかなかできないから、それが面白い」という声をいただいています。
クラシエファンという共通点がありながら、背景が異なる人々が集まることで生まれる多様性に、大きな価値があると感じています。
例えば、家族の形や就活時のステレオタイプ的な話など、シリアスな話題も出てきました。また今のグローバルスタンダードに対する個人的な疑問など、普段は人前で言いにくいことを率直に発言してくださる方もいらっしゃいます。「実はこう思う」というその方の率直な意見を共有してくださる。
プライベートに踏み込んだお話をしてくださったり、安心してお話ができると思っていただけているのかなと非常にありがたく感じています。

FBC宮下:普段、人前で話しにくいことまで話せる場になっているのですね。安心してコミュニケーションを取れるよう、何か工夫されていることはあるのですか?

北原:基本的なルール、例えば「否定しない」「違う意見を面白がる」といったことは提示していますが、実際にはあまり心配する必要はありませんでした。
ニックネームを使うというのも工夫のひとつです。参加者の方にご自身でニックネームを決めていただき、運営スタッフも含めて全員がニックネームで呼び合うようにしています。津田はせいちゃん、私はきたさんです(笑)。
また、最初にコミュニケーションガイドラインを丁寧に作りました。どういう関係性を築きたいか?例えば「フラットな関係性」など、いくつかのキーワードを決めて、それに合わせたコミュニケーションの指針を作りました。起こりうるシチュエーションを想定しながら、「共想いカンパニーらしい」対応を考えました。

ファンの声は社員を勇気づけ、経営判断の重要な要素にもなり得る

FBC宮下:参加された社員からはどんな感想がありましたか?

北原:普段、会社の中でへこんだ時に、特にDAY1のクラシエについて語っていただく日は、「本当に力をもらえた」「安心した」とか、「もっと他の社員の人にもこの会に参加してもらいたい」といった声が多く寄せられていますね。参加者のみなさんからいただいたお声は社内ニュースなどでクラシエ社内に共有しています。

FBC宮下:社内にも共有されているんですね!社内からはどんな反応がありますか?

津田:商品のお客様だけを追いかけていては見えなかったものが見えてきたことに、社内でも驚きを持って受け止められています
最近は経営メンバーへの質的な情報のインプットの一つとして伝えています。経営陣も自社の強みを外からの評価で確認したいと考えており、実際に商品を愛用してくださるお客様の声は、経営判断の重要な要素になり得ます。
今後の目標としては、「共想いカンパニー」でもクラシエの中期的なビジョンをお示しした上で、お客様のお声を伺える場にしていきたいと考えています。

FBC宮下:お客様の声を定期的に聞き続けられる環境があるというのは、素晴らしいですね!

FBC宮下:今後さらに取り組んでいきたいことはありますか?

北原:参加者の方々は誰かと繋がりたいといった参加動機ではなく、「自分が役に立てる時に参加したい」とはっきりおっしゃっていました。
現時点では「共想いカンパニー」は3か月のプロジェクトとして開催していますが、参加いただいたクラシエファンのみなさんとゆるやかに繋がり続けられる関係性をどう構築していくか、これが現在の最大の課題ですね。
企業側から働きかけるのではなく、ファンの方から「こんなことをやりたい」と声が上がってくるような関係性を築いていけたらと思っています。

FBC宮下:生まれた安心して対話ができるこの関係性をつなげていけると素敵ですね!ありがとうございました!

―インタビューを終えて
FBC宮下:子どもの頃、「ねるねるねるね」が大好きで、近年は子どもと「マー&ミー」を使っていたり、先日も風邪気味の時に「葛根湯」にお世話になったりと幅広い分野で私の生活を支えているクラシエさんの商品。
今回「共想いカンパニー」では少人数のコアファンの方々と対話を重視したコミュニケーションをおこなわれていらっしゃるということで、お話を伺うのをとても楽しみにしていました。
「共想いカンパニー」という名前にあわせて特別社員証を送られたり、入社式という名前のキックオフミーティングを行われたり、「『共想いカンパニーらしい』対応について事前に考えられていたというお話から、きっと参加するファンの方々も安心してお話しやすい場を築かれていらっしゃるのだろうなと感じました。
ブランドや商品単位だけではなく、3事業全体を共通する「クラシエファン」の声を経営に活かしていきたいというお二人のお話にワクワクし、これからの更なる発展が楽しみです!

提供写真:クラシエ株式会社
人物写真撮影:安達英莉

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