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元有名ブランドのアパレル販売員がD2Cの視点から今後のアパレル販売を考察してみた。

こんにちは、riteの古谷です。
現在riteのインターンとしてブランディング支援のお仕事に携わらせて頂いている私ですが、以前は某有名アパレルブランドの販売員を数年していた時期がありました。
そこでの経験がきっかけで現在riteのインターンとして働かせて頂いているのですが、今回はその経験をもとにD2Cの有用性やこれからのアパレル販売のあり方などをお話させていただこうと思います。

ユニクロの存在、実店舗と販売員の存在意義

これは数年間アパレル販売の仕事をした私の中での結論なのですが、正直なところ有名ブランドの1着4800円のTシャツとユニクロの1着1000円のTシャツに品質的な違いは一切無いです。
これはアウターなど他のアイテムも同様で、レザーなど一部特別な素材の商品以外はワンポイント、ブランドのロゴが入っているかやデザインの違いを除けば、同等またはそれ以上の品質の商品がユニクロで購入できてしまいます。近頃だとデザインの面においてはユニクロが海外の有名なファションブランドのデザイナーとのコラボ商品を出すようになったり、ZaraやH&Mなどの様にユニクロもハイブランドのコレクションから発信される流行のデザインを取り入れるようになってきたので差別化ができなくなって来ました。
本当にワンポイントブランドのロゴが入っているかどうかだけの違いです。

また、実店舗で服を買うという行為自体も今はオンラインストアという便利な選択肢があり、わざわざ店舗へ赴き、時間と労力を消耗しなくとも服を買うことができます。

ではユニクロ以外の多くのアパレルブランドや実店舗やそこで働く販売員は時代の流れの中で淘汰されて消えてゆく存在なのでしょうか?
答えは半分Yesで半分Noです。この言葉の意図を說明するとブランドとしての付加価値が出せないブランドは淘汰され、売ることが一番の目的の実店舗は必要とされなくなるということです。
では、どうすればもう半分のNoに入り生き残ることができるのでしょうか?
ここで鍵となってくるのがブランドD2Cの思想といったワードです。
たとえば、私がいたブランドはハイブランドほどの高価格帯のブランドでは無かったですが、"フレッピースタイル"というファッションスタイルをブランドアイデンティティとして掲げていて、日本では「上品」や「高貴」「きれいめ」といったイメージが浸透しており、30~50代の方だと「海外の美男美女が着てそう」とか学生だと「このブランドのアイテムを持ってるだけでおしゃれ」といったようなニーズで、ユニクロでほぼ同じ品質の物が安く買えたとしても+αの価値を求めて買いに着てくれるお客さんがたくさんいました。

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これは私の在籍していたブランドT.Hのブランドカラー、これだけでどのブランドかわかる方も多いはず

つまり、ブランドとしてなにか+αの他には無い価値を創出することができれば品質に対するコスパで劣っていても存在価値を見いだせるという意味です。
こうした価値の創出はファッションのテイストとしての付加価値以外でも同じです、例えばPatagoniaやecolf、allbirdsといったエシカルファッション、サスティナブルブランドも近年ミレニアム世代を中心に支持を伸ばしています。
といったようにブランドとしての+αの価値が必須になる時代では、+αの価値をユーザーに伝達するために卸や販売業者を挟まず生産から販売を一貫して行うD2C的な動きをするブランドがさらに増えてゆくでしょう。

もともと実店舗で服を売るという行為自体が非常に効率が悪く、客は買った商品は帰りの荷物になり、店側では在庫管理のジレンマがつきまといます。
事実私の職場では体感3割の業務は在庫管理に費やしていましたし、この商品すごく売れるのにもううちには在庫が無い!といったことが多々ありました。客側も持って帰るのが面倒なので店で商品を試着だけして購入はオンラインで行うお客さんも多くいました。

となると店はあくまでも商品を試着する場所で店には最低限の在庫しか置かず買った商品は後日配送といった仕組みのほうが互いに取って都合が良く今後そのようなブランドが増えてゆくでしょう。

また、そうなると全店舗で共通して在庫を持つため店ごとの売上にこだわるのでは無く如何にしてブランドとしての売上を伸ばすかが店舗のメインミッションになり商品を売ることでは無く、ブランドの世界観や商品の良さを伝える事などが店舗の使命になり、店舗はブランドを好きになって貰うための場所になると私は考えています。

またこのような取り組みを行っているブランドは既にいくつかあり、D2CブランドであるFABRIC TOKYOでは採寸のために実店舗を構えており、また原宿のGUスタジオでは既に「買った服は後日倉庫から自宅に発送」という方式が取られています。

「販売員が売っているのは服ではなく、感動だ」

これは私が販売員を始めて間もない頃に上記に綴ったような「なぜ同じ品質で安くも無い服をお客さんはわざわざ店舗まで出向いて買うのか?」といった疑問を同じ店舗のベテラン販売員に投げかけた時に返ってきた言葉です。
この時の私は単順にECで買うことに慣れていない事や実はユニクロでほぼ同じ品質の物がもっと安く買えることを「知らないから」がこの問の答えだと思っていたのですが、返ってきた答えは「お客さんは単純に服が欲しいだけでうちに来ているわけでは無い」「アミューズメントとして"買い物を楽しみ"に来ている」「つまり我々販売員が本当にお客様に提供するべきものは服では無く、それに付随する感動である」といった内容の言葉でした。

この考えはriteでの仕事を通してD2C的な視点を得た今でも正しいと思っていて、実店舗に買い物にくる客は商品を買いに来たというより、買い物を楽しむ事が目的で本当に求めているのは好みのアイテムに出会った時や接客、店の雰囲気を通して得られる"感動"だと思います。
といったようにユーザー自身も実店舗という存在には"感動"を求めてやってくるので実店舗は商品を売る場所では無くブランドを好きになって貰う場所というのは合理的で、いずれ一般的になると思っています。
またその時、販売員に求められるのは単順な販売力では無くブランドの魅力を最大限に伝える力であり、販売員全員がブランドのアンバサダーのような存在であるのが理想なのでは無いでしょうか。

こうした流れは既に実際にあり、韓国発の人気セレクトショップAlandの発想がかなりこれに近いです。

Alandの事例

2020年日本に上陸した韓国の超人気セレクトショップAlandでは韓国で人気が爆発した要因の1つであるカリスマ店員の文化を日本の店舗でも根付かせようと韓国ファッションに精通していることやSNSでの情報発信力を採用の基準としてスタッフを採用しており、現在約15名程度のスタッフがインスタグラマーとしており店員のインスタライブは平均視聴率3万超えにも登るという。

Alanndのカリスマ店員

これから販売員の価値は上がってゆく

このように実店舗は売る場所からブランドを好きになって貰う場所になり、それに伴いそこで働く人間が販売員からアンバサダーへと昇華してゆくと確実にその条件をクリアできる人間は少なくなります。

現在は販売員に求められているもののメインは販売力ですので、実は自分の働いているブランドの服なんてプライベートじゃ一切着ないし、ぶっちゃけ好きでもなんでも無い、そんなショップスタッフはざらにいます。

しかし、アンバサダーとなるとその人自身のブランドへの愛だったり、共感を生む力だったりと求められる物は販売力よりもさらに高次のものになりますし、あくまでも売ることがメインの店舗では無いので店舗数も今までよりは少なくなるでしょうし、店舗あたりに必要な人員も少なくなるでしょう。

となると必然的に販売員の価値は上がりインフルエンサーのように一握りの人が自分の才能や能力でなれる憧れの職業になることもあり得ると考えています。

最後に

今回の話のまとめは以下の3つになります。

・これからはブランドとしての+αの価値が必須になる。
するとその
価値を創出するためにD2Cのような動き方をするブランドは今後増えてゆく。
・またD2Cの思想を取り入れたブランドでは実店舗は商品を売る場所からブランドを好きになって貰う場所へと変わってゆく。
・そこでの販売員はアンバサダーのような働きを求められ、そのような動きのできる販売員の価値は高騰する。

最後までお読み頂きありがとうございます、今回は元アパレル販売員とD2Cマーケティング支援に携わるマーケターの2つの視点でこれからのアパレルブランドについて考察させていただきました。
今回はアパレル業界中心の考察でしたが、ここで述べたような生産技術の進歩やECの普及の先にある流れはほぼすべての業界であてはまる。というのが我々fab.の考えです。

現在fab.ではアパレルのみならず飲食からインテリアまで、さまざまな業界の企業様のブランディングを支援させて頂いております。

ブランディング・マーケティングなどの分野でお悩みのある経営者様や企業様、今後D2Cの概念を取り入れたブランド戦略を考えていきたい経営者様、企業様は、一度ご相談を頂戴できれば嬉しいです。


弊社の提供しておりますD2C支援サービス「fab.」もよろしければご覧ください。

・fab. サービスサイト

・fab. プレスリリース(2020年11月11日)

よろしくお願い致します。
文責:rite株式会社 古谷