
不登校支援は、なぜ難しいのか。
不登校は、過去最高の人数を記録し社会問題化しています。いろいろな施策が取れられていますが、うまくいったという話を耳にしないのはなぜでしょう。なぜ、不登校支援は難しいのか。
私的な見解ですが、聞いてもらえると幸いです。
私が、不登校支援を始めたときに、いろんな文献を読み漁りました。ところが、書いている不登校の事例が、私の関わっている子どもの状態とあまりにも違い過ぎるのです。
①年齢
私の関わっていた子は、小学校低学年でした。しかし、中学生や高校生ばかりで、中には、大学生や幼児の登園しぶりなども出てきます。年齢が異なると、支援のポイントはかなり異なるように感じました。高校生だと進路に対する悩みなど。
②学校種による違い
文献の中には、特別支援学級や特別支援学校の事例も出てきます。私の専門は特別支援学校ですので、不登校の原因として、「保護者と学校の指導に対する考え方の違い」と聞いて、とても納得できます。ただし、通常の学級の場合、その原因や対策は異なるように感じます。
③診断の有無
不登校のお子さんの中には、発達障害をもっている子もいます。その場合、学級担任の発達障害に対する理解不足ということも原因としてあげられます。診断が出ている場合は、課題はシンプルですが、学級担任は特別な配慮をしたいと思っているが、保護者が拒否している場合や診断がないため具体的な対応が取れない、診断は出ているが発達障害は個々により困るポイントは異なるので、本に書いている対応でも効果がないなど、複雑化しています。
④子どもの望んでいるものの違い
不登校のお子さんに聞くと、「学校は行きたいけど、行けない」と主張するお子さんがいます。一方で、「学校は前を通るのもいや」という子もいます。子どもの望んでいるものによっても対応は異なってきます。
⑤保護者の思いの違い
お子さん本人以外にも、保護者の思いの違いもあります。「別の方法があるなら、学校へは行かなくてもよい」「何がなんでも学校へ行ってほしい」など求めていることもの異なります。支援者は、たくさんの不登校で困っている保護者と会っていますが、保護者は、自分の子の事例しか知りません。その日の子どもの様子や保護者の状況によって、「学校へ行ってほしい」と思う日も「学校へ無理していかなくても」と思う日もあり、思いは揺れてしまいます。支援者は、保護者の思いの揺れを理解しながら対応していきたいです。
⑥支援対象は誰?
不登校の状況を改善するときに、支援を受ける対象が子どもなのか、親なのか、学校なのか、学級担任なのか、教室環境なのか、などで全く視点は異なります。ここを明確にしないまま、不登校に対する支援を考えても議論はいつまでも噛み合いません。
⑦原因は明確化、不明確か
不登校の要因として、学級担任との相性が合わないなど原因が明確な場合があります。その場合は、第3者を入れて話し合いをして互いに折り合いをつけていかなければなりません。
しかし、原因が不明確な場合があり、私の経験上ほとんどの場合が原因がよく分かりません。その場合、支援者が集まっていろんな視点から考えていく必要があります。
⑧要因の違い
以前に、全然知らない人と話しているときに、私が不登校支援をしているということを伝えたことがあります。その時、その相手が、「俺も息子も不登校だ。学校へいかないでバイクばっかりいじってる」と言っていました。私は、内心、そうか、それも不登校の一つかと思いました。
⑨不登校の定義
文部科学省では、年間30日以上の欠席がある状態を不登校と定義しています。※「経済的な理由を除く」などの条件があります。しかし、29日しか休みがないから、「うちの子は不登校ではない」と安心する保護者はいないと思います。もっというと、毎日遅刻していく子は、欠席が0かもしれません。保健室に登校し、教室に入れない子は、現状不登校ではありません。
欠席が〇日以上だから、ということではなく、一人ひとりの課題に向き合いたいですね。
以上のように、一言で「不登校」といっても要因、状況、対象は様々異なるのです。それらを同定せずに「不登校には、〇〇がよい」などとは言えないはずです。このことが不登校支援の難しさだと思っています。