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安全対策をやめよう

ブルーカラーの底辺労働者である筆者は、建設現場、土木工事現場、工場等によくお邪魔するのだが、そこで思う事があるのだ。
KY活動とか安全ミーティングって何のために有るのだろうか
そもそも安全運動って逆効果じゃないのか?
その理由について書いていこうと思う。

はじめに

今年も暑かった。毎年下請けの従業員が熱中症で倒れる。
熱中症対策をしていない訳では無い、むしろ立派な対策があって、それでも毎年倒れる人が出るのだ。
なぜ、事故は無くならないのだろうか。元請けのホワイトカラーは悩んでいる。
もっと安全管理を強化するべきなのだろうか?

安全対策をするべきでは無い理由

労働者を子供扱いする

どんな労働者でも、事故を起こしたい人はいない。
熱中症対策について一番分かっているのは、暑い中働く労働者自身だ。決してエアコンの効いた部屋で安全対策活動に取り組むホワイトカラーではない。
挟まれそうな機械を見れば、どんなバカな作業員でも逃げ出すものだ。わざわざ数百キロ離れたオフィスの安全な環境で働いている人に注意されないでも十分ではないのか。
余裕のあるスケジュールと身の回りのことを決められる裁量権さえ有れば、わざわざ危険な事に手を出す作業員などいないのだ。

無駄な費用がかかる

専用の監視員を巡回させ、監視カメラを確認する人、ICレコーダーを聴く人を雇い、ポスターやらステッカーだのの企画をするのに、どれだけの資金が掛かっているのだろうか。
当然その資金は、末端労働者により厳しいノルマを与え、余裕の無い無茶なスケジュールを組む事で補うしかない。

仕事から余裕を奪う

安全対策には手間がかかる。
本来身体を動かして働く筈の人が、大量の安全管理書類の山に押し潰されて仕事出来ず、チームが余裕の無い状況で働かざるを得ない状況をよく見る。
残業ばかりの余裕の無いスケジュールで働いている作業員は、例え危険だと知っていても時間に追われて近道行動に手を出さざるを得ない。

そもそも安全に役立たない

ある現場で、「ヘルメット良し」だの「服装良し」だのと唱和していた。彼らは元請けからICレコーダーを渡されて、仕方無くやっているのだ。
ところが唱和している誰もヘルメットをしていない、これが何の役に立つのだろう?
土木工事で管路埋設した後、写真を撮る為だけに土留め壁を設置してすぐ外す(本来は埋設前に土留めが必要)。えらく手間がかかるが、何の為にしているのか誰にも分からない。

社内に聖域を作る

「安全は全てに優先する」。良い言葉だが、安全を言い訳にすれば何でも許されるとも言える。
何をしているか分からないコンサルが金を騙し取っていても、天下りを大量に雇い、誰も読まないマニュアルを作らせても構わないのだ。
これは経営者側に限らない。昔国鉄で法律によりストライキを禁じられた労組は、遵法闘争として[安全のために]鉄道をわざと遅延させた。
これらの行動は果たして安全に繋がったのだろうか?

オカルトを推進する

ワッペンを胸に付けたり、のぼり旗を工場に立てたら事故は減るのだろうか?
御守りを買ったり、御札を貼るのとどこが違うのだろうか。
事故がたまたま連続するとパニックを起こす工場も有る。
統計学的に事故が連続して起こることなどよくある事なのだが、偉いさんは数学が出来ないのか、それとも何かの呪いのせいと思っているのか、慌てて緊急対策と称して効果があるのか分からない対策を取る。
個人で占い等のオカルト行為を行うのは、当人の自由だろう。ただ会社組織でそれを行うのは褒められた事では無い。

ウソがはびこる環境を作る

「ゼロ災で行こう」といくら言っても事故は無くならない。人間のやる事にミスは付き物だし、全ての事態を想定できる超人はいない。
ところが安全教のはびこる社内で、それを言う事は許されない。事故は無くさなくてはならない物だし、事故が起こった以上何らかの不備があった訳で、対策を取らねばいけないのだ。
事故が起きると[事故は無くせる]という歪んだ前提の下で作られたさまざまな書類に対策を書き込む必要の有る事業所も多い。当然書き様の無い項目にはテキトーにウソを書いて誤魔化すしか無いし、そんな手間を掛ける位なら事故を隠蔽した方が楽だと判断する人が多いのも仕方無い事だろう。

おわりに

下請けの現場責任者は今年の熱中症対策を見て頭を抱えた。「毎日温度、湿度を計測し、写真撮影の上チェックシートに記入する事。温度が基準値以上の場合は作業を中止する事」だそうだ。
全く面倒な手間を掛けさせるものだ、それに作業中止したら確実に納期に遅れてしまう。
作業中止した分は納期を遅らして良いのか聞いてみたところ「常識で考えろ」との事。どうすれば良いのか。

下っ端作業員は暑い中働いている。ノルマは毎年きつくなり休む暇さえ無い。先程現場責任者が温度計をクーラーボックスの氷で冷やして写真を撮っていた。
現場責任者は頭がおかしくなったのだろうか。温度計を冷やして熱中症対策とは呆れるしかない。あのクーラーボックスに飲み水でも入っていればまだどれだけ良かった事だろう。