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目の前の人を見つめていく
精神科の外来には様々な人が訪れます。
うつ病の方、依存症の方、トラウマを抱えている方。
疾患は本当に様々で、それらが混在していることも多くあります。
また、疾患が同じでも、各人が固有のストーリーを持っており、一つとして同じケースはありません。
薬物療法が有効な、脳機能の障害と思われる疾患もあります。
しかし、かなりの割合の方が、薬じゃない、人との関わりを必要とした方々です。
私はそんな方々に日々関わらせて頂いています。
会社でうまくいかなくて不調を抱えた方。
人と関わる中でトラウマを負った方。
人とうまくつながることができず孤立している方。
人間関係の中で不調をきたし、精神科の外来を訪れるのです。
とても苦しい境遇にいる方に寄り添う。
この世の出来事だと認めたくないようなひどい体験をした方のトラウマに一緒に触れる。
誰ともつながれない深い孤独の中にいる方とつながる。
自分の仕事は、この世界の中でどんな役割を持つのだろうと考えることがあります。
「心を病んだ人と毎日会っていて体調崩さないのか」と言われることがあります。
確かに、怒りや悲しみなど、激しい感情を向けられた時、高い緊張状態を経験して疲弊します。
深く傷付いた、心の傷に一緒に触れる時、自分も一緒に傷付いている感覚があります。
治療者も自分自身のケアが必要だと思います。
でも、自分が削られていく感覚はないのです。
困難の中にいる人を支援していると、人間はこのような困難の中でも生きることができるんだと感じます。
困難の中を生きる人を支援することで、私は人間への信頼を深めてきました。
人間という存在の力を深く信じることができるようになりました。
人間への信頼が、自分への信頼にもなりました。
それは愛する誰かを信頼することにもつながります。
出会い、一緒に治療に取り組んできた方々に感謝しています。
自分が直接関わることができる人の数は限られています。
一生かけても、せいぜい数千人だと思います。
それでも私は目の前の人と必死に関わることが、私にできる、私のための、愛する人のための、人類のための行動だと思っています。
目の前の人を見つめて、その中に人間の力強さや希望を見る。
苦境の中を生きる人が、必死に生きることで、私に見せてくれました。
見つけた希望を抱いて、目の前の人に関われたら、私が関わった人がまた誰かに関わって。
そうやって、私は世界に関われている気がするのです。