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パーソナルスペースを突き破る鳩


■はじめに


16時。町全体が夏のミストシャワーの様な雨に包まれている。

あえて傘はささない。左手に持つだけだ。
「傘は持っているが、さす必要は無いと思っている」アピールをする為。
顔全体にマイナスイオン的な汚水を浴びながら、散歩をしてみた。

ただ、目についた道に進んでいく。知らない方へ。

20分後、少し錆びれたスーパーの看板の上。
見上げるとそこにはハトが4匹じっと雨宿りをしていた

4匹は寸分の狂いも無く、絶妙な間を開けて等間隔で鎮座している
森見登美彦さんで言う所の「鴨川等間隔の法則」ばりだ。

人の安心できる「パーソナルスペース」は良く聞くが、ハトにもあるのだろうか?

「ビジョナルスペース」はあるのだろうか?
そう思った。

■パーソナルスペースとは?


その前にパーソナルスペースについて改めて確認してみる。

パーソナルスペースとは、個々が自分のスペースだと認識している空間のことです。また、他の人との距離や接触を調整するためのスペースでもあり、他者に侵入されると不快に感じる心理的なテリトリーともいえます。そのため、他の人と過ごす際、自分に必要なスペースが確保されていない時は、「居心地が悪い」「落ち着かない」と感じることもあるでしょう。

パーソナルスペースの範囲は、性別・年齢・姿勢・人種・文化・相手との親密度や関係性など、様々な要因で変化します。
例えば、男性は前方の半径が長く後方の半径が短い楕円形で、女性は自分を中心に円形のパーソナルスペースを持つ傾向にあるといわれています。さらに、社交的な人のパーソナルスペースは狭く、内向的な人は広いなど、それぞれの性格による個人差も大きいため、人と関わる際には十分に気をつける必要があります。

https://www.daiken.jp/buildingmaterials/publicnews/article/other_column012.html

<パーソナルスペースの分類>
●密接距離(intimate distance :45cm以下)
家族や恋人など、ごく親しい人に許される距離
●個体距離(personal distance :45~120cm)
友人や知人などの親しい間柄なら不快にならない距離
●社会距離(social distance :120cm~360cm)
仕事上の業務や商談などに用いられる距離
●公衆距離(public distance :360cm以上)
講演会や演説などで用いられる距離

https://www.daiken.jp/buildingmaterials/publicnews/article/other_column012.html
パーソナルスペースの分類

つまり、割と近接範囲における不快にならない程度の空間をパーソナルスペースと呼んでいる。

また、パーソナルスペースの範囲にも傾向があるようだ。

人は全体的に「前方」に対し、後方よりも2倍以上広いパーソナルスペースを感じているということです。よって、他人と向かい合わせでの位置関係のほうが、同じ距離があってもより窮屈に感じてしまうことでしょう。

https://www.ntt.com/business/dx/smart/workstyle-contents/cm74
パーソナル・スペースの概念図

男女ともに、体の前方は左右や後方より約2倍大きな空間を描いた

つまり、人が自分の空間だと感じている空間は円形ではなく、左右より前方に広い空間であることがわかる。また、女性より男性のほうがより広い空間を必要としていることが示された。

http://blog.livedoor.jp/humon007/archives/564303.html
男女のパーソナル・スペースイメージ

つまり、前方に対して大きな空間があり、より男性の方が範囲が広いと言う事だ。

■パーソナルスペースの考察


では、なぜこの様な傾向があるのか。
論文をいくつか見たが愚鈍なる私には到底理解が出来なかったので、自分で考えて補完してみる。

〇パーソナルスペースの距離

まず、パーソナルエリアについてなぜ45~120cmがおよそ不快にならない範囲になるのだろうか。
ここで人が攻撃できる範囲を考えてみる。

まず、棒立ちで腕を振り回した際、どの程度の範囲になるだろうか。


日本人の標準寸法

上記の図は日本人の成人男女の標準的な身体寸法です。

身長は男性で約169cm、女性で約157cmです。平成30年のデーターでは男性171.5cm、女性158.3cmと更に大きくなっています。

https://www.tokio-one.jp/column/layout-size/

ざっくりと棒立ちで手を振り回された時、76~84.5cm程度の範囲になるという事だろう。

さらに、一歩踏み出して殴りつける場合どうなるだろうか。

(注)1日1万歩の根拠
海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されている6)。歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、体重60kgの者が、時速4km(分速70m)、歩幅70cm、で10分歩く(700m、1000歩)場合を計算すると、消費エネルギーは30kcalとなる。つまり1日当たり300kcalのエネルギー消費は、1万歩に相当する。

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html

身長によって差異はあるものの、平均して70cm前後が日本人の成人の歩幅として表現されている。

ここで一歩殴りかかる時、どこまでが手が届く範囲になるだろうか。
平均的なデータが得られなかった為、自身のデータから割り出してみる。

体の中心から指先まで:90cm
小さく踏み出した一歩:70cm
一歩踏み出した場合の指先までの距離:110cm

これと割合が同一だとした場合、日本人の平均的な腕の距離から算出すると、

90:110=76~84.5:X
X=92.9~103.2cm

となる。つまりこの92.9~103.2cmが「強めの攻撃」が出来る範囲だとする。

加えて、個体差や弱めの攻撃、攻撃された際の反応時間も考慮すると、パーソナルエリアについて45~120cmであるのは「攻撃された場合の反応できる範囲」と言えるかもしれない

〇パーソナルスペースの形

前方に広い空間を保有しているパーソナルスペースだが、これは視覚的に立体視できる範囲がより広くなっているのでは無いだろうか。

人間の視野は左右の眼を合わせると180度以上あります。 片眼の視野は鼻側に約60度、耳側に約100度、上方向に約60度、下方向に約70度と言われています。その中で、標識の文字を読むなど、モノのカタチや色などがキチンと認識できる範囲を中心視と言い、わずか1~2度ほど。中心視のまわりの必要なものを識別できる範囲、有効視野は左右に35度ほど。その外側である周辺視野では、カタチや色などをハッキリと認識することはできません。また、有効視野は速度が上がったり、トラックなどの大きなモノに注意を惹きつけられると、狭くなってしまうことがわかっています。

https://global.honda/jp/safetyinfo/think_safety/vol14/vision/


人間の有効視野

つまり、識別できる視野を中心として有効視野の範囲と同様にパーソナルスペースが広がっている、という仮定である。

〇パーソナルスペースの男女差

パーソナルスペースの男女差において、男性の方がエリアが広い。これはその攻撃性と体格にあるのでは無いだろうか。

狩猟をしていた時代において、当然狩猟を主に行っていた男性の方が攻撃を受ける可能性が高い。又、動物以外にも攻撃を受ける可能性があるのは同じ男性である。

よって、体格として女性より大きい男性に攻撃を受ける可能性がある為、よりパーソナルスペースの範囲が広くなったのでは無いだろうか

逆に女性は攻撃を受ける可能性が低い為、狭くなったのでは無いだろうか。

■ピジョナルスペース


ここまでの考察から考えると、鳩の場合どうなるだろうか。

まず、スペースの範囲はどうなるだろう。

調べると鳩の平均的な体格は体長30cm程度、肩幅約12cm位である。ざっくりそこから攻撃できる範囲を考えると、10~25cmくらいになるだろうか。

続いて、鳩の視覚野を調べてみる。

鳩の視覚野

眼球を動かさずに見ることのできる範囲を「視野」と言いますが、鳥類の視野は一般的に広いものになっています。頭部の横側に眼球がついているハトは、片眼の視野で169度。両眼になるとカバーできる視野は316度にもなります。さらにヤマシギという鳥は、両眼で359度もの視野を持つとのこと。ちなみに人間は両眼で200度程度です。

反面、両眼で同時に対象物を見て立体的にその姿を捉えることのできる範囲は、ヒトの120度に対し、ハトで22度、ヤマシギでは4.5度と非常に狭くなっています。ハトが歩行するとき、首が固定されたまま体が動きますが、これは眼球の位置を安定させて、対象物に焦点を合わせながら移動するためと考えられています。

https://gigazine.net/news/20111029_birds_eye/

人間と比較するとかなり狭い範囲が立体視できる範囲と言えるだろう。
よって人間より細長くなると想定してみる。

子育てについて調べると、「卵は主にメスが温め、1週間前後より雌雄交互に温める」との事であったので、狩りの頻度の性差は殆ど無いと仮定し、同様にスペースに大きな性差もないとする

以上よりピジョナルスペースはどうなるだろうか。

ピジョナルスペースイメージ

こんな感じだろうか。
確かに正面で並んだ鳩は見たことが無い。

私が見たあの鳩達もこのスペースを保っていたのだろう。

■終わりに


パーソナルスペースを調べて無理やりピジョナルスペースを考えてみた。

このスペースについて動物毎の傾向が分かれば、よりあの野良猫と仲良くなれるかもしれないし、気になるあの子ともっと仲良くなれるかもしれない。

と思ったが、ぼっちの私には等間隔にすらなれなかった。
マイペース。

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