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悶々モンドセレクションと 「からあげグランプリ 」


 世の中には、よく見かけるし、なんとなくは分かる。でも詳しくは知らない。そんなことがよくあります。詳しく知らなくても別に困らないので調べもしないのですが、調べてみると面白い。モンドセレクションはその代表的存在です。

    テレビなどのメディアではモンドセレクションを「食のオリンピック」や「食のノーベル賞」と紹介しているようです。なんだかとてもすごい賞らしいのですが、テレビなどマスメディアでは絶対にモンドセレクションについて詳しくは説明しません。いや、できません。

 モンドセレクションとは…

 モンドセレクションは、1961年にベルギー王国経済省とECが共同で創設した民間団体の名称です。

    本部はベルギーのブリュッセルにあり、世界各国の市販商品の品質向上を目的とした評価機関です。評価するのはスピリッツ、ビール、飲料水・ソフトドリンク、食品、ダイエット・健康製品、化粧品、栄養機能表示、インターナショナルワインコンテストの8ジャンルで、毎年1500点以上がエントリーします。

    エントリー料金は1製品ごとに1,150ユーロ(2022年現在、2024年1月2日現在の為替レートで約179000円)です。

コンクールではありません 

 モンドセレクションはコンクールではありません。企業がエントリーした製品をモンドセレクションが評価するだけです。詳しい評価基準は公開されていませんが「味覚」「衛生」「パッケージに記載されている成分と実際の成分に相違ないか」「原材料に危険な物が含まれていないか」等の項目であると言われています。

   そして最も重要なのは「絶対評価」であるということです。つまり、エントリーした製品同士の優劣ではなく、評価項目ごとに決められた基準をどの程度満たしているかで評価しているのです。

▼最高金賞…100点満点の90点 以上
▼金賞…80点以上
▼銀賞…70点以上
▼銅賞…60点以上
ということです。金賞、銀賞、銅賞は一位、二位、三位ではありません。

   受賞率は平均81%。企業は自社の製品に自信があるからこそエントリーするわけですから受賞率が高くなるのは当然ですが、エントリーした製品の約半数は金賞か最高金賞を受賞しています。また、毎年2500点以上もエントリーするのですから同一ジャンルでの受賞も多くなります。

    例えば日本の三社のビールが同時に最高金賞を受賞することもあり得ます。当たり前ですが、最高金賞を受賞した製品は、原材料、製造方法等に何も変更がなければ翌年もエントリーすれば最高金賞を受賞します。「32年連続最高金賞受賞」も納得ですね。

    なお、受賞製品は、受賞したメダルを使ったマークを広告やパッケージに使用することができます。使用期限は5年ですが、最高金賞を3年連続で受賞すると「国際最高品質賞」が与えられ、マークを永久使用することができます。

 筆者が疑問に思うのは、モンドセレクションの審査員は氏名はもちろん、どこ国の人が何人で審査しているのかは公表されていません。

    噂では審査員に日本人は一人もいないと言われているのですが、それが本当なら、漬物、沖縄の郷土料理である豆腐よう(豆腐の発酵食品)、みそ汁、魚の干物など、過去に金賞を受賞した日本独自の食品の「味覚」の評価は正当にされたのでしょうか? 妄想が妄想を呼ぶ悶々モンドセレクションなのでした。

エントリーの半分は日本から

 エントリージャンルの中でエントリー数が一番多いのは食品ですが、近年はダイエット・健康製品のエントリーも増えています。世界的にダイエット・健康製品が流行しているからではなく、日本のダイエット・健康製品がたくさんエントリーするからです。日本からのエントリーは、毎年全エントリーの約50%を占めるそうです。

 少し古いデーターですが、2017年にエントリーした商品は2965製品、その中で最高金賞は420製品、金賞は1368製品でした。なんと半数以上が最高金賞又は金賞を受賞しています。銅賞以上にまで広げて見てみると、2691製品がなんらかの賞を受賞しています。

お金で買える?

    誤解しないでいただきたいのですが、モンドセレクションの賞はお金で買えるようなものではありません。受賞商品が多いのは、それだけ品質が優れた商品が多いということです。企業は、商品に自信があるからエントリーするのですから、当たり前ですよね。

    そういった意味では、コンクールではなく、絶対評価にしたことがモンドセレクションの真価だと言えるでしょう。


黄門見えても

日本人気質

   日本からのエントリーが多いのは、モンドセレクション金賞受賞という肩書きがあれば売れるからです。多くの日本人はモンドセレクションが何なのかは知らないのに、金賞受賞にひれ伏すのです。水戸黄門の印籠状態ですね。

   しかし、ここ数年、モンドセレクションのメダル写真がついた商品を目にすることが少なくなった印象です。いったいどうしたのかと心配していると、おもしろそうな物が目につきました。

ピンボケでごめんなさい

からあげグランプリ

 からあげグランプリは、日本唐揚協会が開催している人気投票です。ノミネート料金は15000円。投票はネットのみ。具体的には カラアゲニスト(日本唐揚協会のHPで唐揚げ検定試験に合格すると「カラアゲニスト」に認定されます)は一人5ポイント、Facebookから投票すると3ポイント、X(旧Twitter)で投票は2ポイント、メール投票は1ポイントです。エントリーしたスーパーさんの中には自社HPで投票を呼び掛けているところもあるので、おそらく自社社員に投票させているでしょう。

 第15回はエントリー129社で金賞・最高金賞が45社、特別賞22社でした。なお、金賞が多数あるのは、公表されていませんが金賞確定投票数が設けられているようです。※仮に金賞確定投票数が1000票と設定されていると、1000票を超えれば全て金賞で、その中で最多得票が最高金賞という仕組み。

 これは社員(従業員)数で決まるのでは?

これ、どうですか? 買う動機になりますか? 筆者は買っちゃいました…。 いや、記事を書くためですよ。

日本〇〇協会 

 日本唐揚協会は元々は個人が設立し、後に一般社団法人に名称変更しています。この手法はビジネスモデルとして一般的で、他にも日本カレーパン協会や日本餃子協会、日本ラーメン協会、全日本チキン南蛮協会など、たくさんの協会があります。

 これからこの分野に乗り出そうと画策中の方に筆者からアドバイスします。たいていの料理はすでに「協会」があります。これから乗り込むのなら、よりニッチなところを対象にした方がいいでしょう。

 例えば、パイナップル入り酢豚やリンゴ入りポテトサラダ等を対象にした「フルーツ料理協会」、ポテトチップス協会(フライドポテト協会はあります)、缶コーヒー協会、郷土料理協会などでしょうか。対象をニッチにすればするほど裾野が狭くなるのでご注意下さい。 

New world  gold award

    ニッチでありながら裾野が広いやり方が無いわけではありません。例えば一企業が、自社製品だけを品評する関連団体を設立し、○○(企業名)gold awardを創設するのも有りです。○○(企業名)gold awardで3年連続最高金賞受賞!   ネ○レぐらいの企業ならできないことはないと思います。やらないとは思いますが。

    「鳥取県うまいもんセレクション」もいいかもしれません。エントリーは鳥取県内の製品だけで、投票は全国から受け付ける。もちろん組織票有り。我ながら名案です。金賞受賞に国民がひれ伏すかどうか微妙ですが、鳥取県ならやりかねないと思います。

 勝手にご飯映画祭③は、樹木希林さん最後の主演映画「あん」を妄想します。
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