【連載小説】バックミラーの残影 完
これまでのあらすじ
佐山橙太が定年退職して、十数年になるが、高校出の彼は宿願を果たすべく芸術大学の通信課程を受講している。その間、妻の澄子が入院し、退院した時には、歩行困難となっており、作家志望の息子と一緒に在宅介護をすることになった。さらに妻は、認知機能が衰えており、橙太は、妻から悪口を言われながら耐える日が続いていた。
思い起こせば、橙太は、山形県庄内の貧しい家庭に生まれ、大学受験は合格したのに家計の事情で地元の郵便局に就職したのだ。その後、憤懣やるかたない気持ちで、