むすこたち
次男がバイトに帰りに立ち寄ってくれ、おまけに夜は宿泊するという。
たちまち私は嬉しくて、体調不良も吹っ飛ばしていそいそ台所へ立つ。
次男がずっと横にいてくれて、とても優しい態度で接してくれた。玉ねぎの薄切りまで手伝ってくれた。
思わず幼少期の彼が重なって、つい昔の話をして聞かせてしまう。
そんなことよく覚えていたね!僕も今まで忘れてたよ! と、母が話す自身のエピソードだか、私のつまらぬ記憶力にだか。彼は声をあげてあははと笑う。
あゝ、我が子よ。
しみじみこの二番目の息子を愛おしく尊く思う。
今回病気のことがあってから、彼らの父親は扶養の義務だけを果たし、気持ちはひとつもこちらへ寄せることをしなかった。
歩み寄ろうにも、その門は固く閉ざされ、呼び鈴は取り外され、金輪際の関わりは御免被る。とはっきり突きつけられて、私は崩れるほどに悲しかった。
しかし、私にはこんなに立派な男の子が2人もいるのだ。
うってつけのように、ちょうど社会人として歩き始めて何年か経つ彼らなのだ。
私がいなくなっても物理的に困ることはない一人前の息子達。
精神的には辛くなることもあるだろうけれど、それでもそんなことは乗り越えていける年齢なのだ。私が思い残すことなど何もない現在だ。
なんて喜ばしいことだろう。
体調不良で買い物にも行けない冷蔵庫に十分な食材はなく、シンプルチャーハンと野菜炒め、そして次男の手土産 ヒカキンのカップヌードルを3人で囲む夕餉である。幸せに感謝する。
こうして家族3人で食卓を囲むと、パリ時代が蘇る。
大好きな子供達が、かけがえのない家族に変わって、今私はとても満ち足りている。