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本屋迷宮

「苦しもうか 救われようか」
これから沈んでいくならば、どんな世界にしようかと考えながら本屋をさまよう。

それまで読んでいた本には大きな感動を得た。
共に救われていくような主人公たちの成長。
広がる景色を想像し、本物が見たいという衝動に駆られる。

未だ余韻に浸りながら、次を探して本屋を歩く。
私の心は、余韻を延長したがっている。

けれど私は、同じジャンルが続くことが好きじゃない。
長編は好きだけど、ジャンルや作者を連続することは向いていない。
結果、いつだって、その瞬間の気持ちを裏切った選択をする。

息苦しいほどの苦しみに沈もうか。
淡々と、草原を歩くような話にしようか。
浮きもせず沈みもせず、本の中を静かに散歩する時間もいい。
だけど、歴史人物をじっくりと読むほどの時間はない。

「苦しもうか 救われようか」
選びながら、さまよいながら、こぼれる心境。

本屋の迷宮は、深くなる。

本を手にして、また戻して。繰り返し、自分の要求を探る行動。

「恋愛小説・・・」ふいに浮かぶ4つの漢字。
そういえば、私は今までに恋愛小説を読んだことがあっただろうか。
『アンの青春』が、それなのか、そうではないのか、、思い当たるのはそれくらい。

一度、思うと一気にそれを求め始める。
けれど、無知すぎて探せない。すでに彷徨って1時間。
迷宮疲労もそこそこだ。


「とりあえず今日は、、」と、手にしたものは猫のお話。
結構わがままな猫らしい。息苦しさも、救いも、恋愛も無さそう。

だけどここが、私の迷宮の行く末のようだ。


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