【その3】男と女の世界、男はなぜ私に執着するか、キュウリのにおいの女
朝9時、駐車場に音がした
そのまま、階段を上がる足音
私の部屋の前で止まった
早いおこしで
この時間は外出できるのかな?
社長さん、自由だからね
ノックされる前に鍵を開けた
凄い形相で睨んでいる
そうだ。私は昨夜見たのだ
店の前で
お客を見送っていたときに
社長さんが目の前にいたから
見せてあげただけ
お客に抱き着いてキスをするところを
お客は天にも昇る心地だ
誰でも知っている
私がお客とそんなことをしないこと
有名な話だ
相手がよかった店の上客だ
私のためなら金に糸目はつけないと言っていた
内心「噓ばかり」
私でないだろう
私が背負ったこの看板
この界隈でも老舗の看板
誰にわたるかほしい人はたくさんいたはず
この店から独立した女もいる
誰もヤリ手だ
ママが再起不能と聞いて色めきだした
用事もない癖に「おおママ」の
ご機嫌伺いに行った話も聞いた
選ばれたのは私
何度も口説かれて決めた
「店はやめるように!」
ほらね。
来ると思った、本日の第一声だ
「私、囲い者でもない、まして愛人でもない!」
一度言いたかった
ので、言ってみた
店を買うお金を出してもらったわけでもない
店に飲みに来るわけでもない
接待で使ってもらうわけでもない
毎晩この界隈にいない日はないほどでも
きたためしはない
誰も一緒にいるところを見た人はいない
自分はこの界隈の店の上客でも
私のこの店には来ない
そんな男に言われたくない
「評判になっている。
俺が金を出したと」
「出してもらっていないものね。
そんな気もなかったくせに」
ついでだから言い返した
「2年待つ、それで店はやめるように」
「俺と店、どちらをとるかだ」
これが私を追い込んでいくことになった
それから、毎晩
いやみたらしく店から見える駐車場に車を止めておく
が、本人はよその店で飲んでいる
いいじゃないか
あんたに言わせれば
女なんかいりどりみどりだろうが
あんたに誘われて断る女はいないものね
自信満々だ。
ありがとうございました
今夜はここまでです
楽しい夢を見てお休みください
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