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夜にさく花


花は、
夜のほうが、美しい気がする。
なぜなら、花は、とにかく、暗闇に紛れてきえてしまっても、意識してみるときに強烈な印象を、わたしにあたえる。見られるのを、拒むように。

昼間にみる花は、確かに陽をうけて、高らかに、逞しく咲いているのだけれど、夜に咲く花は、なんだかうしろめたい秘密を抱えているような、淫靡な雰囲気すら漂うのだ。
そんな夜の花を見るとき、きまって、『夜に聴く歌』の事をおもいだす。
 『夜に聴く歌』、は、カズオイシグロの“わたしを離さないで”のある場面に出てくる架空の歌手の歌。ジュディー・ブリッジ・ウォーター。確か、こんな名前で、けだるく甘い声で、ささやくように、たっぷりとふくらんだ哀愁を抱えて歌う。
 映画で、この歌が流れるシーンがわたしはとても好きで、いつかサントラを手に入れたいなと思っていた。
 
 
 

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