高山駅の待合室で高山ラーメン〜「駅弁の金亀館」さんで「飛騨中華そば」
飛騨高山。
落ち着いた旧城下町の町並み一帯には宮川からの用水が流れ、その宮川の河原沿いで開かれる朝市でも、小ぢんまりと歩きやすい通りにも、眺めのどこにも澄んだ水と背負った山がある、風雅な眺めを持つ美しい街。
それになんと言っても高山と言えば飛騨牛グルメ。中でも、香ばしいえびせんに載せて供され、その場で食べられる飛騨牛にぎりは、普段の生活では極力行列を避けて通る私でも迷わず並んで食べる一品。美味しいものをちょっとだけ、の最高の贅沢である。ああまた食べたい…。
そんな高山に、今回は乗り換えのため立ち寄った。名古屋から特急ひだで下呂温泉へ向かい、その後再度ひだ号で特急ひと駅の高山駅で下車。ここから高速バスで金沢を目指す。高山滞在時間はわずか40分足らずだが、時刻はお昼。ここで昼食をとっておきたい。
高山駅は2016年に建て替えられたばかりのきれいな駅舎。ふんだんに白木が使われた構内は明るく、降り立った時に気分が華やぐ。
改札を出てすぐの待合室で駅弁を買って食べるのも良いが、駅そば好きの私はここは駅麺である。
高山駅の待合室内、駅弁とみたらしだんごの「金亀館」さんでは高山ラーメンが食べられる。駅でそば・うどんではなくラーメンが食べられる店舗は全国的にも珍しく、ご当地ラーメンともなればその価値・希少性はますます上昇。博多駅と高山駅へ行く機会があると私は出発前から「ラーメン、ラーメン」と楽しみにしている。以前は尾道駅にも美味しい尾道ラーメンを出してくれる良店があったのだが、数年前の駅改修工事の折に惜しまれつつ閉店。近年は駅の老朽化・改修工事に伴う駅そば店の閉店・撤退も増え、今ある店舗もいつなくなるかわからない。あるうちに行っておかなくては…!
高山駅でラーメンを食べるのは約五年振りだ。コロナ禍の間は店内飲食を中止していたとも聞いていたので、今回もどうかな?と思いつつ来たが、営業再開されていた。良かった!
レジで注文と会計を済ませ、のれんをくぐってカウンター席に座り、茹で上がりを待つ。その間にもみたらしだんごやお土産品を買いに来る客が引きを切らず、平日でもずいぶん繁盛しているようだ。賑わいが戻って良かった。
注文から提供まではだいたい5分弱。茹で麺を使うそば・うどんと比べて少々時間はかかるけれど、この待ち時間でラーメンが食べられるのは大変ありがたいことだ。高山ラーメンは人気で、街中の店舗だと並ぶことも珍しくない。時間のない旅では駅麺は殊に助かる。
さてさて「飛騨中華そば(900円)」、できました!
高山ラーメンの特徴は細めの縮れ麺にあっさりとした和風の醤油スープ。茹でたてぷりぷりの腰のある麺が美味しい。
麺とスープがあっさりしている分、脂の多い豚バラ肉でとろんと煮込まれたチャーシュー、惜しみなくたっぷりのせられたメンマ、刻みねぎでバランスの取れた一杯。日本らしい、どこか懐かしさを感じる「中華そば」だ。
高山の人々は年越しそばとしてこの中華そばを食べるそうで、寒い季節にはこのあっさりと澄んだスープが尚体にしみるだろうと想像できる。いつか冬の飛騨にも訪れて、きりっと澄んだ空気に触れてみたい。私の育った北国の日本海側とはまた違った寒さだろう。
ちなみに5年前に来た時の「飛騨高山ラーメン(当時650円)」はこうだった。具の種類や器も異なるが、その頃の方が醤油味の濃いスープだったように思う。「ラーメンコショー」というあらびき黒こしょうが卓上にあり、そのスープとよく合っていた。今回その胡椒は見ず、一般的なテーブルコショーだったが代わりに一味と七味の両方が置かれ、途中で一味を振るのも変化がついて良かった。あっさりしたスープには黒こしょうよりもシンプルな一味が合う。
味は少々変わっても店舗や駅の雰囲気は変わらず、また街歩きに来たいと思いながら高速バス乗り場へと向かった。
高山駅は表から見るとこんな感じ(2019年撮影)。夏には涼しげに水が打たれ、明るく開放的な雰囲気が印象的だ。今回は人が多くて正面から撮りづらかったが、それほど賑わっているのは良いこと。この後乗った高速バスもほぼ満席で、平日だったこともあり、乗客の九割ほどが既に日本に慣れた様子の外国人旅行者だった。
わずか40分弱の滞在だったが、久々に来た高山、楽しかった。また是非訪れたい好きな街のひとつである。