【おうちで漬物】#38 神奈川県産の高菜を熊本(阿蘇)の漬け方で
冬になると神奈川県内の直売所には県産の高菜が並ぶ。スーパーでは見たことがなく、近年直売所通いを始めるまで神奈川で高菜が生産されていること自体を知らなかった。主に加工用として業者に卸されているのだろう。
県産で新鮮な高菜が、しかもお安く買えるので見つけるとついうきうきして買ってしまうが、その後でどう漬けようか迷う。
昨年は和歌山の漬け方で、南国らしく塩分高めの11%で漬けたため、保存性は抜群だったがそのまま食べるには塩が濃すぎた。使う前に塩抜きするにせよ、生食は殆どせずに炒めたり煮たりして使った。そもそもめはりずしをつくりたくて和歌山の漬け方を採った訳で、美味しかったが生でも食べられる濃さにすればよかったかな、というのが昨年の感想。
昨年の記事でも所感として「次は塩分5%程度で試したい」と書いていたが、同じ青菜のせいさいも4~6%で漬けるのが目安。それぐらいが相応だろう。
今年買った高菜は昨年のものより葉が厚くて美味しそう。同じ売り場に葉の薄いタイプもあったので、薄い方は漬物よりもそのままサラダで食べたり軽く炒めて食べたりするのに向くのかも知れない。午前中に買ったものを午後いっぱい干して、よく洗って下漬けに入った。
重量は干す前の時点で807g。この葉は厚くて水分があまり出なそうなので、干す前の重量を目安にやや多めに塩を入れた方が良いと判断したのだが、
6%(48g)の塩を全体に振って2カップの水を差し水として注ぎ、重めの重石をかけたがまる1日、2日と経ってもいまいち水が出ない。このため3日目に全体がひたひたになる程度の4%の塩水を加えたところ、ようやくその翌日に全体が水に浸り、内蓋を超える水位となった。浸るのがやや遅かったため、5日目ぐらいに本漬けに移るつもりだったがもう1~2日様子を見よう。
さて、本漬けをどうしようかと改めて各地の漬け方を見比べ、今回は熊本阿蘇地方の漬け方に倣うことにした。つまり、4~6%程度の塩分で漬けつつ、唐辛子も一緒に入れてピリリとさせる。
洗った高菜を塩と唐辛子で漬けるやり方は福岡も同様で(福岡の場合本漬けの際ウコンを入れたりもするようだ)、まあ菜っ葉の漬け方は各地の気候や地理条件の差により手順や塩分に多少の違いはあれど、大差はない。今回特に阿蘇を選んだのは、昨年の和歌山同様、熊本に親しみをもっているからである。
熊本はサッカー観戦をしていた十数年前によく通い、現地に親しい友人もでき、熊本の美味しいものも彼らから随分教わった。熊本の人々はその日照豊かな気候のように明るくて強く、かつしなやかで、東北育ち(それも日本海側)の私や夫から見て眩しいくらいで好もしかった。一度顔見知りになると先方から見つけて声をかけてくださる方が多く、ひとりで行っても心細い思いをせずに済んだ。
熊本の食べ物も私たちの舌にとても合い、その頃は銀座熊本館にも随分通って食材を買い、熊本の味を習得しようと努めた。特に高菜飯と辛子蓮根は気に入って、高菜飯は今でもよくつくるし辛子蓮根も何度か自作している。とある居酒屋で食べた揚げたての辛子蓮根が美味しくて、忘れられなかったのだ。太めに切ったピーマンと茄子を麦味噌で甘く炒めた「ひこずり」も簡単で美味しいのでよくつくる。東北ではあまり見ない麦味噌の美味しさを知ったのもその頃の経験のおかげである。
北と南で大きく離れているから違いも大きいかと思いきや、ふと方言に似ているところがあったりもして面白かった。例えば蛙を秋田では「びっき」と呼ぶが、熊本では「びきたん」と呼ぶ。かわいい。熊本と言えば米焼酎、日本酒も美味しい米どころ。そんなところからも類似性があるのかも知れない。
そんなことを思い出しつつ、遅まきながら唐辛子を加えた。本当は下漬けの最初に塩と一緒に入れるのだが、まあ大丈夫。
この後もう1~2日漬けて一旦水を捨て、改めて6%程度の塩で本漬けを行う予定。この段階でも食べられるので、今回は生食も楽しみたい。