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赤べこパッケージについつい惹かれてペヤングやきそば「福島の味 いかにんじん味」~郷土料理いかにんじんは総菜なのか保存食か~
我が家にはだいたいペヤングソースやきそばが常備されている。
夫が好きだからで、だいたいは深夜に帰宅する夫の夜食になるのだが、スタンダードなソースやきそばよりも、どちらかと言うと次々繰り出される新商品の数々が所定の場所に積み上がっている。
ペヤング新商品を買いたくなる気持ちはわかる。「ちょっと食べてみたい」と思わせる辺りの切り口が、まるか食品さんは実に巧みだからだ。加えて買い逃したら二度と出会えないかもとの一期一会感も触発され、次々発売される新商品を買わずにはいられないファンの方々も多いことだろう。そして何より、所謂普通のペヤングは美味しい(前クールのドラマ「新宿野戦病院」にも度々登場し、食べたくなって困った)。スタンダードな飽きさせない定番あってこそのちょっとした冒険。うまいなあと思う。
そんなペヤングの新商品と言おうか限定品、いつもはひと口味見させてもらって満足するのだが、ある日これが私専用とテーブルの上に置かれていた。
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「ペヤングやきそば 福島の味 いかにんじん味」。
正直、正面のいかにんじんよりも先に狛犬よろしく左右に配置された赤べこに目が行く。よく見ると映画「フラガール」にも描かれたスパリゾートハワイアンズ的なハイビスカスとフラガールも。そうか、福島ってそういうイメージでもあるよねと思ったりもするが、赤べこ。
私は赤べこが好きなのだ。赤べこ見たさに柳津まで行ってしまったくらい。
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もちろん家にもいる。
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そんな訳で赤べこだけ見てパケ買いしてもちっともおかしくはないのだが、ふとその勢いを立ち止まらせる「いかにんじん味」。
いかにんじん…。これはけっこう難題かも知れない。
いかにんじんは確かに代表的な福島の郷土料理のひとつではあるが、福島の方にとって美味しいいかにんじんと、他県民の私が食べて美味しいいかにんじんは少々異なるように思われるからである。
いかにんじんの作り方をネットや書籍で調べると、千切りにしたするめと生のにんじんに、ざらめ(または砂糖・みりん)・醤油・酒を合わせた漬け汁を熱してかけ、味が染みるまで数時間~ひと晩程度置く、となっている。
より「現地っぽい」レシピを以下にいくつか。
つまり総菜と言うより漬物、保存食の一種で、「にんじんはパリパリした食感になるよう太めに切る」「にんじんがパリパリして美味しい」と書かれていることが比較的多い。確かにこれまで福島の飲食店や土産物で食べたいかにんじんは圧倒的ににんじんが生で、いかにんじん=総菜とみなしていた私は「にんじんがもっと柔らかくて味がしみていた方が美味しいのに」といつも思っていた。
しかし、昨年郡山の駅ビル2階「もりっしゅ」さんで食べたいかにんじんは違った。
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同店のいかにんじんは、するめとにんじんを淡く味付けされただし汁で煮てある。おそらくするめの他に昆布出汁も使われていると思う。優しい味がするめにもにんじんにも柔らかく染み、食べやすくて大変美味しい。総菜としてとてもよくできている。これなら真似して家でもつくってみたいと思った。
が、これが福島(特に会津)におけるスタンダードないかにんじんかと言うと、おそらくそうではないだろう。旅行者向けに親しみやすく、洗練された味に改変されているが、本来のいかにんじんは保存食。長い冬の間に食べるもの故に、冷えた状態で食べて味がわかりやすく、長期保存のためにも濃い味が好まれたはずだ。
福島の人にとって果たしてどちらが美味しい「いかにんじん」なのだろう?「もりっしゅ」さんのいかにんじんは「これはこれで美味しいけど、これは煮物で『いかにんじん』とは違うよね」と言われたりするのかも知れない。
そんな「いかにんじん」。
はてさて、まるか食品さんはその特徴をどう切り取ったのだろう。
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先に食べた夫の感想は「いかの味とにんじんの味がちゃんとするけど、ごま油の味が印象的で塩焼きそばっぽかった」とのこと。
さてさて、実食。
ついいつもの癖でせんキャベツを大量投入してしまったが(私はカップ焼きそばにせんキャベツや茹でもやしを加えてかさ増し&味を薄めて食べるのが好き)、入れる前に撮ればよかった。具が見づらくてすみません。
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なるほど。
思っていたより普通に美味しい。もっと尖った味を想像していたが、食べやすく親しみやすい味。赤べこみたいだ。
見た目は醤油っぽい色だが、匂いも味も醤油というよりごま油、或いはラード。確かに夫の感想が近く、いかの風味がそれなりにあるので「美味しいシーフード塩やきそば」という感じだ。その他ペヤング新商品群と比べて味が濃すぎないのも良い。これならリピートもありだなあ。せんキャベツとよく合います。私は好き。
食べてみて感じたのは、材料にキャロットエキスもかやくのにんじんも使われてはいるが、にんじんの苦手な人が感じる「にんじん臭さ」は極力排除されていること。それ故に食べやすいのだが、その「土っぽいにんじん臭さ」がいかにんじんの魅力と言われたりもするので、会津の方が食べるともしかしたら「良いところが台無し」かも知れない。
とは言え、私はこうした商品を機に郷土料理に関心が向いたり、食文化を知るきっかけになるなら大歓迎だと思っている。
郷土料理も時代や暮らしに合わせて変化して行くものだ。いかにんじんの位置付けもこの先変わって行くのかも知れないし、変わらないかも知れない。いずれにせよ触れる機会がないよりはずっと良い。
ペヤングの新商品はロット売り切り・再販なしが多いため、今年6月に発売されたいかにんじんペヤングはもう買えないかも知れない。
また赤べこパッケージが販売されたらいいな。そうなれば私はまたパケ買いします。