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エコプロ2023見学記:生分解性プラ、潮流発電、CSS…技術は「花盛り」なんだけど


12月7日、東京ビッグサイトで行われていた「SDGs Week EXPO2023 エコプロ2023」を訪問してきました。SDGs関連の商品や技術について、企業・大学・行政機関といったさまざまな団体がブースで展示を見せてくれる、というやつです。

とんでもない数のブースが出ていたので逐一説明すると長くなるのでやめます。そこで、私の心に爪痕を残したベスト3を発表します。

ベスト3 土に還るマルチ

生分解性プラスチックでつくられたマルチ

こちらは日本バイオプラスチック協会の展示にあった、生分解性プラスチックでつくられたマルチです。

「?」と思われた方もいるかもしれませんが、まあ、いわゆる黒いビニールシートです。私は趣味で市民農園を借りて「プチ農業」をやっているので、畑の表面を覆って雑草を抑制したり土の温度・湿度を保ったりする「マルチ」はとても身近な存在です。

いっぽうで、でかくて捨てる時大変だし、風で飛ばされてしまったら回収困難だし、そもそも畑という「エコ」っぽいことをやっていながら大量のプラスチック製品を使うことになるので、まあ困ったものだなあ、と思っていました。

ところが、このマルチは生分解性プラスチックでつくられているので、数年で完全に土に還るということなんですね。これは良い技術と思いました。すでに実用化されて農家さんには売られているそうです。

ここ以外にも、中古化学繊維をアップサイクルした商品や、捨てるときに簡単にはがせてゴミの分別がしやすくなったラベルなど、プラスチックのリサイクルや資源循環については多数の企業・団体が出展していて今、熱い分野であることがわかりました。

ベスト2 潮流発電

潮流発電機の模型

九州電力の子会社の九電みらいエナジーが展示していたのは、海底に設置さされた巨大な潮力発電機「なるミライ」の模型。本物は日本でただ1基、長崎県五島列島の水深40メートルの海底に設置されており、現在、実証実験が行われているそうです。

潮力発電という名前くらいは知ってはいたものの、具体的なイメージが湧かずにいた私ですが、なるほど、こんな形をしているんですね。機械自体はすでに商用の潮力発電を行っている英国のものを転用しているそうです。

海の再エネといえば洋上風力、というのが最近のイメージですが、潮流は規則的で風よりも日時や気象による変動が少なく、安定した発電が可能というメリットがあるそうです。野生の鳥が巻き込まれる「バードストライク」の心配もないですし(フィッシュ&ホエールストライクはあるのか?)、潮力発電機の足元は魚にとって住みやすい漁礁になるので、漁業とのコラボなどの可能性もあるんだとか。

洋上風力も増やしていきつつ、潮力発電も併用していくことでより安定した電力供給につながる可能性がある、とのことで、これは納得、と思いました。

ベスト1 苫小牧のCCS実証実験

苫小牧のccs大規模実証実験の説明

今回とても勉強になったのが、エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が北海道の苫小牧で行っているCCS(Carbon dioxide Capture and Storage/二酸化炭素回収・貯留)の大規模実証実験についての展示です。

CCSといえば、最近の「脱炭素」の文脈で必ずといっていいほど登場するキーワードです。発電や製鉄の時に発生する温室効果ガスであるCO2を大気中に出さず、地中深くに閉じ込めてしまおう、という「奥の手」的な技術ですね。

これも、言葉だけでなかなか絵が浮かばなかったんですが、今回の説明でだいぶイメージできるようになりました。

CCSでは工場などで発生したCO2を圧縮して、液体と気体の性質を持ち合わせる「超臨界」の状態にします。そのガスを、海底1000メートル以深でガスを閉じ込めやすい砂岩質の「貯留層」にパイプを通して注入。そうすると、それより上にある泥岩質の「遮蔽層」はCO2を通さずに閉じ込めるため、半永久的にCO2を閉じ込めることができる、ということなんですね。

CO2閉じ込めのイメージ

苫小牧では2016年から19年の間にすでに30万トンのCO2の注入を終えていて、今はそれが漏れ出さないかとか、周囲の環境に悪影響を与えないかとかをモニタリングしている段階とのことです。

CCSが脱炭素にどれだけ貢献できるのかについては賛否のあるところだと思います。何しろ日本のCO2排出量が2020年度で11億トン。けっこう大規模な施設に見えるこの苫小牧の閉じ込め量が30万トンだとすると、いったいどれくらいの施設を建設すれば排出削減の有効打となれるのか……地層内に閉じ込められる量もやがて限界が来てしまうのでないか……といった疑問がよぎりました。少なくとも、CCSがあるから今まで通りCO2を排出しすぎても大丈夫、ということにはならないことは確かでしょう。

とはいえ、まだまだ勉強中の私としては、まずは関係者の方の説明を聞いたりして基本的な知識を得られるというだけでも大変ありがたい体験でした。ここで生じた疑問については、今後また学んでいきたいと思います。

まとめ:それでも達成できない1.5度目標

ということで、全体的に色々な技術を見ることができて、また、そこに従事する人たちも親切に説明してくれる方々ばかりで、とても素晴らしい会でした。

しかし、今回見た人々の努力が素晴らしいものであるだけになおさら、これだけの新技術や新商品が開発されつつあっても、今の各国による脱炭素の計画をすべて足し合わせても、現状の速度では地球の温度上昇を1.5度以内に抑えるのは困難とみられていることは、あらためてショッキングな事実として突き刺さりました。

個々の企業や団体の努力は素晴らしいものとして応援しつつも、もっと根本のところの仕組みを大胆に変えないと、「地球沸騰化」は止められない。それには個々の企業の努力だけではだめで、政治による強力なリーダーシップだとか、個々の一般人の意識・行動変わるとか、よっぽどのことをしないと不可能なんだと思います。その解決策をどするのかということも忘れてはいけないと思いました。

〈参考:エコプロ2023公式サイト〉




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