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イケアの「プラントボール」がおいしすぎて「植物由来肉」への見方が変わった

イケアで出会った食のカルチャーショック


うちから数駅先にイケア(IKEA)があります。たくさん家具があって見ているだけで楽しいのですが、最近、イケアのレストランで出会った「植物由来肉」は目からウロコの体験でした。

これまでイケアに対して郊外にあるやたらデカい家具屋、というくらいの認識しか持っていなかった私なんですが、何度か通ううちに、けっこう「サステナビリティ」をアピールしていることに気が付きました。

たとえば、顧客から買い取ったリユースの家具を売るコーナーがあったり、洗って繰り返し使えてサランラップの代わりになるシリコン製のフードカバーを売っていたり、といった具合に、商品やビジネスの随所に工夫が見られます。

何より驚かされたのは、店内にあるフードコート「スウェ―デンレストラン」のメニューでした。

イケアによく行く人にとっては珍しくもないことと思いますが、「プラントベースカレー」や、「プラントベースラザニア」、「プラントボール12個」といった"肉抜き"のメニューが当たり前のように大きくプッシュされています。


「スウェーデンレストラン」のメニュー表示

ためしに「プラントボール」(HUVUDROLL/フヴドロル)12個のプレート(890円)を食べてみました。スウェーデンの定番家庭料理である「ミートボール」を植物由来の肉に置き換えたものですね。つけ合わせにマッシュポテトとグリーンピース、そしてベリーのソースというのが何とも北欧チックです。

これが……うまい!

本物のミートボールに似たような弾力があるプリプリとした食感があり、しかも肉特有の微かな臭みがなくて、パクパク食べられる感じ。人によって感想は別れるかもしれませんが、個人的には本物の肉と同レベルか、その日の気分とか体調次第ではこっちの方がうまい、と感じることもあるかも、と思いました。


「プラントボール」のプレート。右側はベリーのソース。意外と「プラントボール」とよく合う。

この「プラントボール」は、肉の代わりにエンドウ豆から抽出したたんぱく質を中心に野菜、果物、菜種油、米粉などすべて植物由来の材料を使ってつくられているそうです。

植物由来肉といえば現在、日本のスーパーでも「大豆ミート」を売っている店が増えてきました。筆者も何度か食べたことがあるのですが、本物の肉とはほど遠い食感と味で、正直、美味しいとは思えませんでした。これじゃ普及は遠いかな、と思っていたんですが、イケアの「プラントボール」レベルの商品がスーパーで買えるようになれば、もっと爆発的に普及する気がします。

ちなみに、イケアの「プラントボール」はお持ち帰り用やネット通販用の冷凍食品としても販売されていて(500gで999円)、すでに家庭でも楽しめるようになっています。

「一部の人向け」じゃなく「主力メニュー」扱いの理由

イケアがすごいと思ったのは、これらのメニューをヴィーガンやベジタリアンの人だけに向けたものとしてメニューの隅っこに載せるのではなくて、ミートボールやサーモンといったメインメニューと同じ序列でドーン!と大きく載せていることです。つまり、一般の人に向けた主力商品として当たり前のように売っているんですね。

いったいなぜなのか。イケアのホームページには、こんな説明がありました。

〈私たちが選択するタンパク質食品は、健康と気候の両方に影響を与えます。イケアはよりサステナブルな食品を開発し、お客さまにより多くの選択肢を提供するために、プラントベースのタンパク質への移行に取り組んでいます〉(イケアのホームページ内「プラントベース食品のメリット」より)

つまり、これらのメニューは気候変動問題の解決や顧客の健康維持のための「サステナブルな食品」という位置づけで売られている、ということです。

特に気候変動問題については、家畜の生産時に大量の炭素を排出することから、人類が肉を食べる量をできるだけ減らしていくことが重要な解決策の一つと言われています。このため、欧米を中心にヴィーガンやベジタリアンでなくとも肉食の量を減らす「フレキシタリアン」「リデュースタリアン」などと言われる行動パターンが提唱され、じわじわ広がりつつあります(もちろん同じ理由でヴィーガンやベジタリアンになる人もいます)。

スウェーデン発のグローバル企業であるイケアがプラントメニューを”推し”ているのは、こういった流れが背景にあると言えるでしょう。

そしてイケアのホームページによれば、レストランで提供されるメニューの50%をプラントベースにする、というのが2025年までの目標なのだとか。なかなか野心的です。日本の外食大手チェーンでここまでプラントベース食に積極的な企業ってまだ存在しないのでは。

「大量消費」生む一方で、大企業の強みも

ここで一歩引いて別の側面を見ると、イケアこそが今日の気候変動を生んだ一因である「大量生産、大量消費」や「グローバリズム」を前提としたビジネスモデルの代表格の一つであり、それは今も変わらないということは忘れてはいけません。本来は、先進国のそうした生活スタイルそのものを変えていかないと気候変動問題は解決しないでしょう。しかし一方で、これくらいの規模を持つ企業だからこそあの「プラントボール」を開発してすごい速度で普及させることができるわけで……何事も単純に善悪は決められないなあ、と思います。

何はともあれ、食事を通してサステナビリティへの意識が高い北欧の雰囲気を気軽に垣間見られるのはありがたいことですし、何より「プラントボール」のあのおいしさは小難しい理屈を吹き飛ばすパワーを持っています。今後もイケアには注目していきたいと思います。


イケアの店内には、随所にサステナビリティ関連商品のアピールが

〈参考資料〉
IKEAのホームページより「プラントベース食品のメリット」
https://www.ikea.com/jp/ja/this-is-ikea/sustainable-everyday/sustainable-eating/plant-based-goodness-pub378a44c0

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