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初めての投稿

夏目漱石という人は「I Love You 」を「月が綺麗ですね」と翻訳したのは有名な話だが、私はそこに至るまでの経緯が重要なのだと思う。時は明治、未だ手を繋ぐ文化がない時、月明かりが綺麗な中秋の夜に男が前を歩き彼女が後ろを歩く時代。きっと会話などない。これがいつもの帰り道だろう。かんこんかんこんと下駄の音だけが夜に響く。目の前を見ると、ちょうど二人分座れる大きな石がある。男が座ると彼女も座る。二人が腰かける。彼女の方を何気なしに見る男。きっと月明かりが照らし今宵の彼女はより一層美しく見える。つい見とれ頬をあからめる男。彼女が男の視線に気が付き男を見る。目が合った。男はすかさず目線を逸らし月の方を見て慌ててこう言ったに違いない「月が綺麗ですね」と。私にはこんな描写が見えた。もしこれに似たことを想像しながら翻訳したのなら女心ならぬ男心を見事に表した名翻訳だと思う。

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