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婚活って、本屋かもしれないと思った話

5年前、私は結婚した。
私は今も、婚活市場にいる。



「結婚を前提に付き合ってください」

出会って数週間、3回目のデートでそんなことを言い出した、当時23歳の夫に対して、彼が私より年下だったこともあり「どうせ長くは続かないだろうな」と思っていた。しかし夫は自身のその言葉に違わず、出会って半年と経たずに同棲するため私の両親のもとへ挨拶に来て、その更に半年後に入籍した。出会ってわずか1年足らずのことだった。


この話だけ聞くと、私の婚活はひどくトントン拍子のようだけれど、全くそんなことはなく、夫と出会う前に、私は2年間の苦しい婚活時代を経験している。


マッチングアプリで毎週のようにアポを入れた。ランチとディナーと、1日に2人の男性と会うこともザラだった。定期的に婚活パーティーにも通った。告白してくれる人もいた。悩んだ末お断りした人もいたし、お付き合いした人もいた。身体だけの関係になった人もいた。でも、私が結婚したのは、その誰より関係が短い夫だった。




私は本が好きだ。初めてその世界にのめり込んだのは、小学生の頃読んだ星新一のショートショートだったように思う。高校生の頃には、自分ではとても選ばないような本が溢れる図書室の本を全て読み尽くしたくて、放課後毎日図書室に通った。今だから言うが、授業中も授業そっちのけで、教科書で隠しながら本を読んでいた。テストでいい点数さえ取れば、先生も黙認してくれていた。


社会人になって自由なお金と時間を手にしてからは、古本屋巡りにハマった。今まで漠然と「本がたくさんあるお店」と捉えていた書店が、店舗ごとにジャンルや著者の偏りがあること、店主の思想が反映されていることを知った。

私が全く知らないジャンルの本が溢れる店内を歩く時、それだけで思考が回るような感覚があった。それを目的として探し訪れたのではなく、何気なく立ち寄った書店で手に取った一冊が今でも私の大切な一冊で、私が暗く下を向く時、自宅の本棚が引っ張り出すだけで、当時の感覚と新たな視点をくれる。


あの日外に出なければ、あの日あの路地を曲がらなければ、あの日あのタイトルに手を伸ばさなければ、今も私はこの本ともこの感情とも出会っていない。

夫との出会いも、本屋だった。




人と出会うことって、何気なく入った本屋さんを練り歩くことのように思う。少し話はそれるが、私の敬愛する京極夏彦先生が、こんなことを言っていた。

「読まない本を持つのは時間や空間のムダだという論がありますが、とんでもない話です。

本は、買うだけでいい。

読もうが読むまいが、いいと思った本を手元に置いておくだけで人生は豊かになります。題名を読んで中身を想像すれば感情は動く。「いつか読もう」と思えば、目も頭も大切にして、長生きしようと努力するかもしれないじゃないですか。」

婦人公論でのインタビュー記事より


本は、その世界にいつでもアクセスできる鍵で、時には実在しない人物に出会える世界で、その感情に触れられる媒体で、他者を通して自分と向き合う椅子でもある。だから、買うだけでもいい。


自分以外のものに触れる、考えるに触れる、言葉に触れる、視線に触れる、婚活って本屋さんみたい。

婚活だって、本当は出会うだけでいいのかも。


もし、婚活していなければ目を合わすことすらないような何の接点もない他人と、お互いを知るための会話をする。全く違う考えに触れる。時に理解しようとしたり、時に納得できなくて憤ったりする。でもその感情が、いつか「これ、知ってる」「前に感じたことがある」なんて経験値になったり、前までは全く共感も思慮も出来なかった感情への抵抗をなくす鍵になったりもする。


何気なく出会って、何気なく言葉を交わして、そんな記憶に栞を挟んで、ふとした瞬間、思い出したりする。




私は今、婚活コンサルタントとして、noteで記事を書いたり、婚活相談はもちろん、恋愛相談や恋愛サポートをしている。その基盤にあるのは、あの苦しい2年間の経験で、あの頃自分が感じた感情や掛けてもらった言葉、行動に対しての相手の反応、そんなものを拾い集めて、過去を読み返すような毎日を送っている。

もっと言えば、未来の私が、こんな仕事をしているなんて、あの頃の私には想像もつかなかった。人生、何があるか分からない。何に出会うかも分からない。


だから、なるべく暢気に、それでいて丁寧に、時に堂々と、小さな出会いに栞を挟んで生きたい。


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真夏
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