短編小説「婚活男子」
僕の名前は伸夫
上京し、長らく東京で一人暮らしをしている。
運良く就職もし、マンションをローンで買って生活をしている。
安月給なので生活費は敷き詰めなければいけない
自分でお弁当を作り、自転車で通勤し
1日の食費は300円に抑えている。
もちろん結婚もしたい
マンションを持っているというのに
何故か女性には縁がない。
歳も30を過ぎている
母さん、さぞ心配しているだろうな
趣味は漫画
部屋の1室は漫画roomにしている
僕は面食いだ
そこそこの女性には興味が湧かない
でもこの職場は女性が多い
それでも出会いがない
一時、一回り年下の女の子からバレンタインのチョコレートをもらったことがある。
僕に好意があるらしい
嬉しかったが、妹より年下だし
そんな気にはなれなかった。
僕は料理が得意だ
煮物だって何でもできる
おやつのプリンまで作ってしまう
我ながらスゴイと思う
最近はイメチェンで片耳にピアスを開けた。
が、周りは無反応だ。
密かに気にしている人がいる
有名企業出身で成績優秀で申し分ない。
それになんといっても美人!
歳も僕と同世代
ちょこちょこ顔を出しては、彼女と会話をする
僕のことは嫌いではないらしい
いや、もしかたら好きなのかもしれない。
や、やっと結婚できる
彼女、けっこう裕福な家のお嬢さんらしい
ようやく運が向いてきた
マンションのローンは30年組んでいる
二人で働けばすぐに返せそうだ
いや、その間に子供も生まれるかもしれない
忙しくなりそうだ。
僕は家事もできるし、節約術はお手の物だ
なんなら奥さんのお弁当だって作れる
人生万歳!
ところが彼女はけっこうモテるようだ。
他の男性社員とよく話をしてるのを見かける
聞き捨てならない。
僕ともたまに会話をするが、それ以上の話にはならない。
う〜ん、女性というものは本当に分からない
そして待ちに待ったバレンタインデー
彼女は僕にチョコをくれるだろうか
期待して、当日偶然を装って近くまで行く。
「あぁそうだ、今日はバレンタインデーだったわね。はいコレ」
やったー
「あ、あぁどうも」
僕は、冷静を装いチョコレートを握り締めて戻る。
改めて、手にしたチョコを見ると
ち、小さい。
GODIVAじゃない、外国のなんたらかんたらという横文字でもない
しかもどこかで見たような
どこだっけなぁ
なんとなくモヤモヤしながらの帰り道、買い物に立ち寄ったカルディコーヒーで同じものを見つけた。
値段は、に、200円。
義理チョコだったんだ。
涙が自然に溢れてきた。
夜1人で、そのチョコをかじりながら、こんなに1人で努力して頑張ってるのに、なぜモテないのだろうと思いました。
人生は不公平だ
しばらくして、さらに衝撃的なニュースが僕の耳に飛び込む
か、彼女が結婚をすると!
しかも相手はアルバイト生活をしている海の山とも山のものとも分からないヤツ。
世間知らずもいいところだ
そんな奴と結婚しても幸せになれるわけがない。
彼女ともあろう者がなんでまたそんな奴と
僕は呆れてしまった
だけど僕は選ばれなかったのだ
これは事実。
遠くから見かけた彼女は、今まで見たこともないような幸せそうな表情をしていた。
恋愛ってなんだろう
人生ってなんだろう
結婚ってなんなんだろう
僕は何か間違っていたのかな
一生懸命生きるのはそんなにいけないことなのか
どうして彼女は僕を選ばなかったのだろう
僕は今日も大好きな漫画を読み
料理を作り、明日のお弁当の準備をしている。
僕の作るカレーは絶品だ
まとめて作り、冷凍しストックしておく。
そんな自分を誇らしいと思う
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