ニギスの話し
私は兵庫県の日本海側の田舎町出身です。高校を卒業してから大阪で働き始め、以降介護で実家に戻っていた2年ほどを除いて全てを大阪で過ごしています。大阪は都会ですので田舎にあるようなもので大阪で手に入らないものなどほとんど無いと言ってもいいくらいですが、食べ物に関してだけは別ですね。田舎でいつも食べていたものが大阪のスーパーでは見当たらないという事はよくあります。特に底引き網漁の魚が出回る時期の魚介類に関しては大阪と実家近くのスーパーではかなり違いがあります。
ひとつ例をあげますと、兵庫県の日本海側や鳥取、島根などの山陰地方では誰でも知っているし食べている「ニギス」という魚があります。
土地によって呼び方は色々あるようで、私の父はキスかアオギスと呼んでいました。どんな魚かといいますと、こんな魚です。キスと言ってもキスとは全く別の種類だそうで、要するに深海魚です。
これが大変に安い魚でして、今でもほんの2〜3百円も出せばかなりの量が買えるのではないでしょうか。そのせいもあって、子供の頃はとにかくこのニギスがしょっちゅう食卓にのぼるわけです。ほとんど煮付けでしたが、時々焼き浸しの様な料理もありました。これはわざわざ自宅で焼いて作った物ではなくて、最初から串に刺して焼いた状態のニギスを買ってきて、それを炊いた料理だったと思います。
どちらの料理も子供の頃の私はあまり好きではありませんでした。なにせ頻繁に食べさせられるので特に美味しいと思って食べた記憶がありません。
この魚、大阪のスーパーではまず見かけませんので、父の介護で実家に戻るまでの30年間多分一度も口にしたことがなかったはずです。
ところが介護の為に実家に戻った時に試しに買ってみました。美味しくないイメージがあったのでしばらくは避けていたのですが、安さに負けて買ったんです。
で、煮付けで食べたんですが、これが美味しかった。
上品な白身なんですがしっかり脂も乗っていて旨味もちゃんと感じられる。本当はすごく美味しい魚だったんだとびっくりさせられました。それから結構頻繁に買うようになりまして、煮付けだけでなく天ぷらにもしてみたところこれが大正解。
介護食として大切な要素「しっとり」と「やわらかい」の条件をしっかり満たしているこの魚を体調の悪い父も本当に喜んで食べてくれました。
そんな生活を終えて大阪に戻って随分経ちますが、この魚やはり中々手に入りません。
でもそれも悪いことではないと、今では思っています。懐かしい故郷の味として胸の奥にしまっておけるわけですから。
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