感性で食べる事の大切さ
最近は少しずつではありますが、「減塩」の有害性を発信する医療関係者が増えてきました。
有害性と言うと語弊がありますね。「意味が無い」と言った方がいいでしょうか。
つまり減塩したからと言って血圧が劇的に下がり脳卒中や心筋梗塞が減ることは無いという調査結果が、結構大規模な調査や論文で発表されているという話しです。
興味がある方は、「減塩 体に悪い」などで検索してみて下さい。すぐに情報が出てくると思います。
しかしそうであるなら、なぜ減塩は意味が無いですよと医者も医療関係者も言わないのかというと、一番の原因は「不勉強」で情報がアップデートされていないからですが、これはマスコミや食品メーカーにも責任があります。
「減塩」というのは、食品メーカーにとって手堅く売れる一つのジャンルとして出来上がっていますので、売り上げを減らすような情報はなるべく隠したいという動機が存在します。
一方マスコミにとって大手食品メーカーは大事なスポンサーですから、減塩が無意味だといった内容の番組や記事を放送する事には勇気がいります。
結果的に一度出来上がってしまった「減塩信仰」は今日も明日も続いていく事になるわけです。
どうしてこんな事を書いたかというと、普段お年寄り向けの施設で食事を作っていますと、減塩を気にするお年寄りがとても多いからです。
お年寄りの情報源はほぼ100%がテレビや新聞などのオールドメディアですから、減塩に関してのネガティブな情報は一切入ってきません。それどころか、不勉強な医者から「血圧が高いので塩分を控えて下さい」などと言われることもあるでしょうから、素直に医者の言うことを信じて日々減塩に励むことになるわけです。
ところで誰でも経験した事があると思いますが、同じ味噌汁を飲んでも塩辛く感じる日もあれば水くさく感じる日もあります。
「塩味」の感じ方というのは体調によって大きく左右されます。不思議なもので、甘味や酸味など他の味に対する感度は塩味に比べて体調でそれほど大きく左右されません。
これは人間の体にとって塩はとても大切なので、多すぎても少なすぎても体から何かしらシグナルが送られるように出来ているからではないでしょうか。
私はたまに自分の体調を計る為に塩を直接舐めたりすることがありますが、同じ塩が甘く感じられる事もあればとても苦く感じる事もあります。
甘く感じられる時は、多分体に塩が足りていない時だと思いますし、苦く感じられる時は摂りすぎになっているので控えた方が良い状態なのかもしれません。
結局誰でも「自分の体の声」に耳を澄ませていれば間違うことはないのだと思いますが、医者やマスコミに洗脳された状態では減塩信仰から抜け出すことは出来ず、「感性」よりも「頭」で食べてしまうので、美味しくないと思いながらも今日も減塩味噌汁を飲む事となるわけです。
最後に、老人ホームでの私の経験談をひとつだけ。
Fさんという80代後半の男性で、要介護でも要支援でもない自立の方でした。
この方、普段の食事は減塩指定となっていたのですが、ご本人はあまり減塩してほしくなさそうでした。
あるとき、いつも付ける漬物に赤カブの漬物を使った事がありました。
この赤カブがFさんにはとても美味しかったらしく、わざわざ厨房の方までご自分で歩いてこられて、私に手招きをされました。
何でしょうかとFさんに近づいて行ったのですが、すごく遠慮がちに「悪いけど、この赤カブのお代わりが欲しいんやけど…。塩加減がむちゃくちゃええわ。介護士さんには内緒やで(関西弁)」と小声で話されました。
減塩指定なので、介護士さんに見つかったら怒られると思われたのでしょうね。
私としてもそんな風にお願いされたら断るわけにはいきません。上手に見つからないようにお代わりをお出ししたことは、勿論ここだけの話しです。
※元記事は「食べごろclub」