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閑話休題「年末年始の老人ホーム」

サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームに入居されているお年寄りにとって、その施設がご自分の家になります。

ですので年末年始も基本的にはその施設で過ごす方が多いのですが、中には息子さんや娘さんの家に行かれて数日を過ごす方もいらっしゃいますし、その逆で施設の方に家族さんが来て泊まって行かれることもあります。

一方で、正月に限らず家族さんの訪問が全くない方も当然いらっしゃって、そのコントラストがハッキリ出てしまうのがお盆や年末年始の時期になります。

毎年思うのですが、傍目には寂しそうに見える「ぼっち」でのお正月も、施設内には一緒に入居している老人ホームの友達がいますし、施設の職員さん達も正月など関係なくお世話をしに出勤していますのでそれなりに賑やかにお正月は過ぎていきます。

ただやはりそんな場合でも女性の方が元気といいますか、男性に比べるとわいわいと楽しそうにしていらっしゃいます。

いつも思うのですが、男は本当にダメですね。勿論例外もいらっしゃいますが、多くは一人で食事をし、一人で部屋に戻って行かれます。

以前私が関わった施設での話しですが、そこはカウンター越しに入居者の方とお話し出来るこぢんまりした施設でした。

時々話し好きな方が近づいてきてその日の料理について何かと感想なりを聞かせてくれる事があったのですが、ほぼ女性でした。

それがあるとき、いつも全く口をきかない男性が明らかに私の方をめがけて近づいてきました。

私はチラチラとその男性の方を見ながら手元で和え物かなにかを作っていたのですが、とうとう私の目の前まで来られたので私も顔を上げてその男性の方を見たと思ったら、突然ニュッとペットボトルのジュースが私の顔の前に差し出されました。

そして一言「開けてくれ」と…。

私も何となくその方の寡黙な雰囲気に飲まれて黙ってボトルを受け取り開けて差し上げたのですが、ニコリともせずにそのまま回れ右をして部屋に戻って行かれました。

それから何度かそういう事があったのですが、とうとう「開けてくれ」以外の言葉を聞くことはありませんでした。

この話し、ほんの数年前の話しなのですが、その小さな施設の入居者の方はほとんどの方が「ぼっち」でお正月を迎えていたことを覚えています。

先の「開けてくれ」のおじいさんもわざわざ自室から出てきて箱根駅伝を食堂のテレビで見ていましたね。

他の方も数人が食堂に集まって箱根駅伝を見ていましたが、この施設ではこうした光景は珍しい光景でした。

やはりお正月だから、何となく周りに人がいる場所で過ごしたいのかなと、ふと思ったことを覚えています。

*JEUGIAカルチャーセンター堺タカシマヤ教室
「介護の為の簡単な料理術」はこちら
https://culture.jeugia.co.jp/lesson_detail_65-57188.html

*アゼリアカルチャーカレッジ
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中嶋洋二郎
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