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閑話休題「物でもお金でもなかった人生…」

先日、数年前から仕事でお世話になっている方と雑談していましたら、たまたま私の経歴の話になりました。

私には人に自慢出来るような学歴も職歴もありませんし、あまり積極的にこちらからそうした話しをすることもないのですが、聞かれたら隠すこともありませんので普通に話します。

それで聞かれるままに私が学校を出てから今日までどんな風に過ごしてきたか、かいつまんで話したのですが、聞き終わった時にその方が言った一言が「何かに頼ろうとか組織に属したいとか考えなかったんですか?」という言葉でした。

そう言われてみれば、私は生まれてこの方サラリーマンになりたいと考えた事は一度もありませんでした。

調理師の仕事を覚える過程で数年間は会社というものに属して働いてはいましたが、普通のサラリーマンの様に会社に対する忠誠心や帰属意識の様な物は抱いたことがありません。

これは私に限らず調理師の修行をしたことがある方なら皆そうだと思います。

修行中誰かに「お仕事は?」と聞かれたら「洋食のコックです。」と答えたかもしれませんが、「株式会社○○○の○○店で働いています。」とは答えません。

調理師に限らず専門技術職として働いている方はそうした感覚があるのではないでしょうか。

私の場合、結果的に多くの時間を自営業者やフリーランスとして過ごしてきました。

その中で、実は大きな会社から魅力的なオファーをいただく事もありました。

それも複数回。

その時には、ここで一気に攻めに出れば自分の小さな事業もそれなりの規模の会社になって発展させる事が出来るだろうなとも思いました。

勿論私も考えました。さて、どうしたものかと。

出した結論は、「お金よりも自分で裁量出来る自由な時間と、好きな仕事が出来る環境を選ぼう。」でした。

それで全部を後悔せずにここまで来たかと言えば、全くそんな事はありません。

特にお金の面では随分バカな事ばかりしてきました。結果的に借金で首が回らなくなったりもしましたから、お金にもっと執着していれば今とは全く違う暮らしになっていたかもしれません。

実は一度だけそうしたオファーを断らずに受けたことがありまして、その時にはかなり儲かりましたし、それなりに充実もしていました。このまま会社組織にして行く方向で考える必要があるかなと思った矢先に、その仕事が私の努力が及ばない外的な要因でゼロになってしまうという事がありました。

結局、私には「青年実業家」ともてはやされる人生は用意されていなかったという事なのかもしれません。

アラ還となった今、その当時の事を時々思い出すのですが、定年のない人生を送る私にとって、まだまだ道半ばだと思える今がとても幸せにも感じます。

だって、もしかしたら来年の今頃、とてつもない大きなオファーが舞い込んでくるかもしれないのですから。

今度そんな話しが舞い込んできたら、一体どんな選択をするのか。

そんなバカな事も、60歳を前にして時々考えるのですが、もしかしたらそれがフリーランスの一番の幸せなのかもしれないですね。

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中嶋洋二郎
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