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「オーストラリアで学んだ介護の現実!日本との違いを解説」

僕は26歳から28歳までワーホリビザを使用しオーストラリアに2年住んでいました。
日本で介護士をしていたので、オーストラリアの介護に興味もちローカルの介護の学校に通い資格を取得しました。
今回、オーストラリアで介護の資格を取得した経験から、オーストラリアと日本の介護システムや制度の違いについてまとめました。両国の介護保険制度や年金制度の違いにも触れながら、どのような特徴があるのか見ていきます。

1. オーストラリアと日本の介護システムの違い

オーストラリアと日本では、介護のアプローチやシステムにいくつか大きな違いがあります。

オーストラリアの介護システム
オーストラリアでは、高齢者の介護は主に政府によって提供されるAged Care Systemに基づいて運営されています。介護サービスは、地域で提供されるホームケアと、施設に入居して行われるレジデンシャルケアに分かれています。ホームケアでは、訪問介護を通じて高齢者が自宅で生活を続けられるよう支援し、必要な場合は施設に入所する形です。

日本の介護システム
一方、日本では、2000年に施行された介護保険制度が中心です。65歳以上の高齢者が対象で、介護が必要な場合、要介護認定を受けた後に、ケアプランに基づいてサービスを利用します。日本では、家族介護が強く求められる傾向があり、自宅介護が主流です。ただし、近年は介護施設の需要が増え、グループホームや特別養護老人ホームなどの施設も重要な役割を果たしています。

2. 介護保険制度の違い
オーストラリアの介護保険制度
オーストラリアでは、介護保険制度はありません。代わりに、政府が高齢者介護をサポートするための助成金を提供しています。年齢やニーズに応じて、政府が介護費用の大部分を負担し、利用者は所得に応じて自己負担金を支払います。サービスの申請には、My Aged Careというポータルを通じて行うことが一般的です。

My Aged Careは、オーストラリア政府が提供する高齢者介護サービスのための情報ポータルおよび申請システムです。このシステムは、オーストラリア国内の高齢者やその家族が、必要な介護サービスを利用できるようにサポートするために設けられています。My Aged Careでは、高齢者の介護に関する情報の提供、介護サービスの申請、サービスの管理が一元化されており、主に以下のような機能と役割を果たします。

My Aged Careの主な役割

1. 介護サービスへのアクセス提供

My Aged Careは、高齢者が受けられる介護サービスを一元的に提供する窓口です。介護が必要な高齢者やその家族が、どのようなサポートが受けられるのか、またそのサービスがどこで提供されているのかを検索することができます。提供されるサービスは大きく分けて以下のようなものがあります。

- 在宅介護(Home Care):
自宅で生活しながら受けられる訪問介護や、リハビリ、家事援助、食事の支援など。

- 施設介護(Residential Care):
レジデンシャルケア施設に入居して提供される介護。長期滞在から短期のリハビリまで含まれます。

- レスパイトケア:
家族が介護の合間に休息を取るための短期間の介護サービス。

2. 介護サービスの申請と評価
My Aged Careを通じて、介護サービスの申請を行うことが可能です。まず、利用者の介護ニーズに応じたアセスメント(評価)が行われ、どのレベルの支援が必要かが判断されます。評価の種類としては以下のものがあります。

- Regional Assessment Service(RAS):
在宅介護の軽度の支援が必要な人を対象にした評価。

- Aged Care Assessment Team(ACAT):

施設介護やより専門的なケアが必要な人を対象にした評価。これは、より包括的なケアプランを作成するためのものです。
評価が終わると、どのサービスが適しているかが決定され、サービスの提供が始まります。

3. 介護サービスの費用管理と助成
My Aged Careでは、介護サービスにかかる費用の見積もりや支払い方法に関する情報も提供されています。オーストラリア政府は、高齢者介護に対して助成金を提供しており、利用者の経済状況に応じて自己負担金が決まります。低所得者の場合は、政府が大部分の費用を負担するため、自己負担額が少額になります。

4. 情報提供とサポート
My Aged Careは、利用者やその家族が必要とする介護に関する情報を提供するための窓口でもあります。オンラインプラットフォームや電話を通じて、介護サービスの選択や利用の流れに関する質問や不明点に対応しています。高齢者の介護ニーズに合わせて、利用できるサービスの詳細や申請プロセス、費用に関する情報が容易に入手可能です。

My Aged Careの特徴とメリット

- 一元化されたシステム:
介護サービスの申請から管理、評価までが一つのシステムで行えるため、利用者にとって分かりやすく、手続きも簡便です。
 
- 包括的なサポート:
高齢者の生活や健康状態に応じた個別のサポートが提供され、必要なサービスを適切に受けられるように設計されています。

- 政府の助成:
多くの介護サービスが政府によって補助されており、自己負担額が軽減されるため、経済的な負担を抑えることができます。

日本の介護保険制度
日本では、介護保険制度が高齢者介護の基盤となっています。40歳以上の国民が保険料を納め、65歳以上になった時にサービスを利用できる仕組みです。要介護認定を受けた後、訪問介護やデイサービス、施設入所など、個々のニーズに合わせたサービスを受けられます。

3. 年金制度の違い
オーストラリアの年金制度
オーストラリアでは、年金は主に2つの柱で成り立っています。公的年金(Age Pension)は政府から支給され、基本的には低所得者向けです。もう一つは、スーパーアニュエーション(Superannuation)という企業年金制度で、雇用者が給与の一部を積み立て、退職後にその資金を引き出して生活を支える形です。

スーパーアニュエーション(Superannuation)は、オーストラリアの年金制度の一環で、雇用者と労働者が将来の退職資金を積み立てるための強制的な貯蓄制度です。この制度は、将来の高齢者が退職後も経済的に自立して生活できるようにすることを目的としています。
この制度は永住権を持っていないワーホリ留学生も貰うことができました。通常であればワーホリビザの有効期限が切れた状態で、かつ日本に帰国後、日本国内から申請することによりワーホリ期間内にオーストラリア働いて積立られた年金を貰うことができます。スーパーアニュエーションを貰う時、税率が高いので手元に残る金額が少なく申請する人はあまりいません。
しかし、僕はコロナ期間中にオーストラリアにいましたので、働けない人のためにスーパーアニュエーションのお金の一部を引き出すことができました。日本国内から申請せずとももらうことができて大変助かりました。1年と3ヶ月程働いた分、合計10万円ほどもらうことができました。

スーパーアニュエーションの仕組み
1.雇用者の拠出義務

オーストラリアの法律では、雇用者は従業員の給与の一部(2024年時点で給与の11%)をスーパーアニュエーション基金に拠出する義務があります。この割合は年々少しずつ増加するように法律で定められており、最終的には12%まで引き上げられる予定です。この拠出金は給与と別途に支払われるもので、従業員の年金資金として積み立てられます。

2. スーパーアニュエーションファンドの選択

労働者は、自分の資金をどのスーパーアニュエーションファンドに預けるかを選択できます。これらのファンドは通常、株式、債券、不動産などに投資され、退職時までにその資金が運用益を得て増加することを目指します。ファンドはさまざまな種類があり、リスクの高いものから安定的なものまで、投資スタイルを選ぶことができます。

3. 退職後の引き出し
スーパーアニュエーションに積み立てた資金は、原則として55歳〜60歳以降でないと引き出せません。引き出す時期や方法は、個々の退職計画やファンドの規則によって異なります。通常、定年後に年金として定期的に受け取るか、一括で引き出すことができます。

スーパーアニュエーションの特徴
- 税制優遇措置

スーパーアニュエーションへの拠出金や、その運用益は税制上の優遇措置を受けられます。拠出金には通常15%の低税率が適用され、運用益も通常の投資収益に比べて軽減された税率で課税されます。これにより、個人が退職時にまとまった額を手にすることが可能になります。

- 個人による追加拠出

労働者は、雇用者による義務的な拠出に加えて、自分の給与から追加でスーパーアニュエーションに拠出することもできます。これを個人拠出(Salary Sacrifice)と言い、税控除のメリットを享受しながら退職資金を増やす手段として利用されます。

- リスク管理
スーパーアニュエーションファンドは株式市場や不動産市場に投資されるため、市場の変動によってファンドの価値が上下することがあります。従業員は、年齢やリスク許容度に応じて、ファンド内の投資配分を調整することが可能です。若いうちはリスクの高い資産に多く投資し、退職が近づくと安全な資産にシフトする戦略が一般的です。

スーパーアニュエーションと年金
スーパーアニュエーションは、オーストラリアの退職後の主要な収入源の一つです。ただし、低所得者層や長期間働けなかった人は、スーパーアニュエーションだけでは十分な生活資金を確保できない場合があります。そのような場合には、オーストラリア政府が提供する公的年金(Age Pension)が補助的な役割を果たします。スーパーアニュエーションと公的年金を組み合わせることで、多くのオーストラリア人は退職後の生活を支えています。

スーパーアニュエーションのポイントまとめ
- 雇用者は従業員の給与の一部を拠出する義務がある(現在11%)。
- 資金はスーパーアニュエーションファンドで運用され、株式や債券に投資される。
- 退職後、55歳〜60歳以降に引き出しが可能。
- 税制優遇措置があり、税控除を利用して資産を効率的に増やせる。
- 低所得者向けには公的年金も支給され、スーパーアニュエーションと組み合わせて生活を支える。

スーパーアニュエーションは、個人の老後資金を強制的に積み立て、より経済的に自立した退職生活を目指すシステムです。

日本の年金制度
日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の2つが中心です。すべての国民が加入する国民年金は、一律の基礎年金を提供し、企業に勤める人はさらに厚生年金に加入し、給与に応じた年金額を受け取ります。しかし、日本では年金だけで生活するのは厳しく、介護費用や老後の生活費の確保が課題となっています。

4. 介護職の役割や文化の違い
オーストラリア
オーストラリアでは、介護職は専門職としての位置づけが強く、資格取得が求められます。ベーシックな資格であるCertificate III in Aged Careを取得すると、ホームケアや施設での介護が可能です。また、介護現場では多国籍のスタッフが働いており、文化的な背景を尊重し合う風土が特徴的です。

日本
日本では、介護職は厳しい労働環境であることが課題となっています。介護福祉士などの資格制度はあるものの、人手不足や賃金の低さが問題視されています。また、家族が介護を担うことが多く、プロフェッショナルに頼る割合はまだ少ないです。

オーストラリアで介護士として働くためには、主に以下の資格を取得することが求められます。また、賃金は資格の種類、勤務する施設、経験年数によって異なります。以下は資格と賃金に関する概要です。

1. 介護資格(Aged Care Qualifications
オーストラリアで介護職に就くための基本的な資格は以下の通りです。

a. Certificate III in Individual Support (Ageing, Home and Community)

- 内容:
基本的な介護スキルを習得する資格で、高齢者介護や在宅ケアなど、個別のサポートを提供するための訓練を受けます。オーストラリアで介護士として働くための入門資格です。
- 期間: フルタイムで6か月〜1年程度
- 取得方法: 公認の教育機関で講座を受講し、実習を含む修了条件を満たす必要があります。

b. Certificate IV in Ageing Support
- 内容:
より高度な介護技術を学ぶための資格で、リーダーシップやチームの管理能力を身につけることができます。この資格があれば、より責任のある介護職に就くことができます。
- 期間: フルタイムで1年〜1年半程度
- 取得方法: 公認の教育機関で講座を受講し、実習を含む修了条件を満たします。

c. Diploma of Nursing
- 内容:

看護師としての基本的な資格です。介護職よりも高いレベルのケアを提供するための資格であり、介護士として働きながら、この資格を取得してキャリアアップを目指す人もいます。
- 期間: フルタイムで18ヶ月〜2年
- 取得方法: 認定看護学校での講義と臨床実習を通じて資格を取得します。

オーストラリアの介護士の賃金(Wages for Care Workers)
介護士の賃金は、職種や勤務する施設の種類、働く州や都市、経験年数によって異なります。
オーストラリアは全体的に賃金が高い傾向にあるので、日本の介護士と比べるとかなり給料が高いです。
以下は一般的な賃金の目安です。
2024年9月時点の為替レートを1 AUD = 約95円として計算しています。

a. Certificate IIIを持つ介護士の賃金

時給: 約AUD $24〜$30
→ 日本円換算: 約2,280円〜2,850円
年間給与: 約AUD $45,000〜$55,000
→ 日本円換算: 年間、約427万円〜522万円


b. Certificate IVを持つ介護士の賃金

時給: 約AUD $27〜$35
→ 日本円換算: 約2,565円〜3,325円
年間給与: 約AUD $50,000〜$65,000
→ 日本円換算: 年間、約475万円〜617万円

c. Diploma of Nursingを持つ介護士(看護助手またはEnrolled Nurse)の賃金

時給: 約AUD $28〜$38
→ 日本円換算: 約2,660円〜3,610円
年間給与: 約AUD $55,000〜$75,000
→ 日本円換算: 年間、約522万円〜712万円


賃金に影響する要素
- 経験:
経験年数が増えると賃金も上昇します。特に長期的に勤めている場合、キャリアアップや役職への昇進により賃金が上がる傾向にあります。

- 勤務地:
都市部の介護施設や大手の施設では、地方の施設に比べて賃金が高い場合が多いです。州によっても賃金に違いがあります。

- 勤務時間:
フルタイムで働く場合の給与は、パートタイムやカジュアルワークの介護士よりも高い傾向があります。夜勤や週末のシフトでは、追加の手当がつくことが一般的です。

介護職の需要
オーストラリアでは、高齢化が進む中で介護士の需要が非常に高く、資格を持っていれば仕事を見つけやすい環境にあります。また、特に地方では介護職の人材不足が深刻で、州政府や地方自治体による支援やインセンティブ制度が導入されている場合もあります。


オーストラリアで介護士として働くためには、Certificate III in Individual Supportが基本的な資格として必要です。さらに、Certificate IVやDiploma of Nursingなどの上級資格を取得することで、賃金やキャリアの幅が広がります。賃金は約AUD $24〜$38の範囲内で、経験や勤務地によって変動します。


まとめ
オーストラリアと日本の介護システムには、文化や社会保障制度の違いが反映されています。オーストラリアは政府主導で高齢者ケアを充実させる一方、日本では介護保険制度を通じて家族と専門職の両方が支える形が一般的です。年金制度や介護保険制度の違いを理解し、双方の強みと課題を知ることで、今後の介護に関する選択肢や対応を考える一助となるでしょう。

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