不良生徒の母に誘惑された新米教師
わたしの古い友人の話。40年近く前のことだという。
彼の職業は中学校の教員で、まだ新人だったころ、担当するクラスにとんでもない不良がいたという。
中学生だというのにタバコは吸う、他校の生徒とケンカはする、挙句の果てには気の弱い同級生から金品はまきあげる。
父兄からも文句が続出し、彼も何度か本人を呼んで注意をした。
しかし彼も、まだまだ20代の若造。不良生徒は舐めてかかって、彼の言うことなど聞き入れてはくれない。
そんな生徒が、とうとう学校にもこなくなった。
彼は、どうにかしなければと思う反面、厄介者が片づいたようで安堵もした。
しかし現在とは違い、当時不登校といえば大事だ。教頭から教師としての資質を問うような発言がくり返された。
生徒の母親は有名な服飾デザイナーで、父親は早くに他界していた。
母一人、子一人ながら裕福な生活を送っている。
彼は親からも注意してもらいたくて、学校へくるよう何度も母親にうながした。
だが母親は、忙しい、時間がないの一点張り。そして、何一つ不自由をさせていないウチの子どもが不良になんかなるわけがない、といいはる。
しかたがないので、彼は自分から生徒の家におもむいた。
豪奢な屋敷に到着した彼は、呼び鈴を押した。姿を見せたのは母親本人だった。
「あの、わたくし……」
彼は自分の名前と息子の担任であることを告げる。
「何の御用かしら?」
冷たい態度で母親はいう。
「じつは、息子さんのことで」
怪訝な表情を浮かべながらも、母親は彼を家に上がらせた。
住まいは、親子二人が暮らすのに十分すぎる広さを持ち、高価な調度品や電化機器が整然と並んでいた。
彼は応接間に通された。
本革のソファーは腰が埋まるほどやわらかく、手ざわりもなめらかだ。
母親は彼の向かいに座り、最初は笑みを浮かべて対応した。
「で、宅の息子が何を?」
「いえ、じつは」
彼は、不良生徒の全部を洗いざらい話した。そして、ここ数日は登校してこないことも告げた。
すると母親の表情はにわかに曇り、まゆを吊りあげて言い放つ。
「そんなわけありません。だって、きょうもきちんと制服を着て、カバンを持って家を出ましたから」
「しかしですね、現実、授業には顔を見せないんですよ」
「それが、もし本当なら、学校に問題があるんじゃないですか」
「え?」
「あなた、おいくつ?」
「わたしですか、23です」
「お若いわね。大学は?」
「N大です」
「私立の二流ですわね。学歴もない新米教師が担任だなんて……」
彼はいきどおりをおぼえた。しかし母親は、脚を組んで平然と彼を見おろす。
「とにかく、本当のことは息子から聞きます。もし、あなたのいうことが本当なら、わたしが立ち直らせてみせます」
「そうしていただけると、ありがたいです」
彼は、そう言い捨てて席を立った。
母親はソファーから立ちあがろうともせず、彼を見送ろうともしなかった。
「先公よぉ、母親に何いったんだよ」
次の日、彼は校舎裏に呼び出され、例の不良にすごまれた。
「何をしても、それはオレの勝手だろ。母親は関係ないだろ」
「いや、しかし、未成年のあいだは」
「ごちゃごちゃう、るせえんだよ!」
いきなり、不良の拳が彼の顔面をとらえる。鼻から血が滴り落ち、彼は思わず前のめりになる。
その瞬間を、偶然通りかかった体育教師が見つけた。
「何してるんだ!」
腕におぼえのある体育教師は不良を取り押さえ、そのまま教員室へ連れて行った。
教師に暴力を振るったということで、唯一の保護者である母親が呼び出された。
最初、母親は高慢な態度をとっていたが、生活指導や教頭、そしてほかの教師連中が息子のこれまでをつぶさに伝え、不良生徒も認めると、母親の態度が一変したらしい。
「本当に、なんてお詫びをすればいいのか」
保健室で治療を受け、ベッドで寝ていた彼に母親はいった。
「いえ、わかってもらえれば」
「この前も失礼なことを申し上げまして。ただ……」
「ただ?」
「なにぶん、このことは学校内で収めていただきたいと」
つまり、彼女はゴシップになることを恐れたのだ。
女性が社会で活躍することの少なかった時代、息子が不良だということが世間にひろまれば、マスコミで格好の標的になる。
彼女は、これまで築いてきた名誉や地位を失いたくなかったのだろう。
「なんでもしますから。お願いします」
頭を下げる母親。
彼は、うんざりしながらも承諾するしかなかった。
それでも生徒は登校してこなかった。
彼はふたたび母親を訪ねる。
前のときと打って変わって、彼女はしおらしい態度で接してきた。
「ホント、どうしていいか、もう、わからないんです」
「お困りなのはわかりますが、もうすこし気をかけてあげれば」
「でも、仕事がありますし」
そのとき、彼女の彼を見る目が、キラリと光ったような気がした。
「先生がわたしの代わりに、なんてどうかしら?」
「え? おっしゃってる意味が」
「だから、わたしが帰ってくるまでのあいだ、息子の面倒を見てもらえないかと」
「いや、いくら担任とはいえ、個人的には……」
「主人をなくし、女手一人で頑張ってきて。あの子はわたしの前ではおとなしく、素直なんです。だから、育て方に誤りはないと思っていました。でも、その考えが間違ってたんですよね」
「わかってもらえれば」
「先生、わたしも生まれ変わります」
「それは、なにより」
「その前に」
彼女は席を立ち、彼のとなりに腰かけた。
「わたし、さびしいんです。他人の前では虚勢を張っていますけど、さびしくてしかたないんです。先生、慰めていただけません?」
「え! え!」
「殿方が恋しいんです。それさえ満足できれば、本当の母親に、本当の女になれます」
そういって、彼女は彼の股間に手を伸ばしてくる。そして、いきなり彼の唇をふさぐ。
若かった彼は、それだけで理性のタガをはずしてしまった。
白昼、明るい部屋の中で母親は裸身をさらす。
誘惑の仕草や眼差しは、妖しくて艶めかしい。
彼は彼女の魅力に負け、甘美な行為を交わしてしまったのだった。
次の日から、彼は生徒の家に通うようになった。
もちろん、生徒に学校へ来るようにうながし、生活態度を改めさせ、遅れた勉強をともうというのが表立った理由だ。
だが、本当のところ、母親のとの行為がやめられなかったのだ。
15の少年の母親は38歳。
肌艶がきらめき、肉体の曲線は艶美で扇情的だ。
そして、口や手を駆使し、ねっとりとむさぼる愛撫をあたえてくれる。
彼もいきり立った一物で彼女を貫き、肉筒内の締めつけや蠕動する膣襞のぬめりを甘受する。
豊満な乳房を揺らし、上になって舞い躍る彼女を見つめる。
伝わる快感と興奮に恍惚となり、避妊することもなく胎内に迸りを放つ。
ときには、ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて舐ってくる口技に翻弄され、口腔に精を吐くこともあった。
罪悪感をおぼえながらも、彼は足しげく母親のもとに通う。すると、生徒は勉強のおもしろさを知ってか、成績もあがりはじめた。
月日は流れ、2月になった。彼は、当初予想されていたレベル以上の高校に合格した。
「これも先生のおかげです」
生徒は殊勝にいった。
彼は、それを機会に母親との関係を絶つ決意をした。
「そうね、高校にあがってまで、中学の先生がくるのも変だしね」
彼女は意外とあっさり、別れを受け入れてくれたという。
その後、母親は服飾学校を設立し、現在はかつて不良息子が校長となっているらしい。
彼は学校の名を、わたしに教えてはくれなかったが。
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