【読書感想9】小松とうさちゃん(絲山秋子)
〜あらすじ〜
さえない52歳の非常勤講師・小松の恋と、彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン・宇佐美の奮闘。小さな奇跡の物語。
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私もおっさんなせいか、とても感情移入して読めた。
小松のおっさんは非常勤講師で一授業三万円でなんとか生活している。飲み屋でできた友達、宇佐美は仕事をこなし、ネットゲームとその交流を拠り所としている。2人とも楽しくは生きていない印象。
そんななか、小松に恋人ができそうになり、生活に色合いが生まれ、、。
宇佐美が、朴訥な小松に女性へのプレゼントや手紙のアドバイスをするシーンが心に沁みた。お仕舞いに小松の厄介な場面にたちあう宇佐美の格好良さよ。おっさんになってからの友情って得難いんだよ〜、涙でそうになるわ。
そして、文学作家さんなのに改行が多く、読みやすい。
文章も味わい深かった。小松の恋バナが始まる時の、宇佐美からの印象。『表情は変わらないが、語尾に音符がついている気がした』など。小松がLED蛍光灯でなく、水銀灯の良さをかたるシーン。『つくときに弦を叩くような柔らかい音がする。寿命が近づくと端が紫のような、腐りかけた感じに染まる。その時になってこいつも生きていたのかと思う。(中略)物にも寿命があったほうがいいように、僕は思うんだけどなあ』など。
浅学な自分なので他ににた作家さんがいるかもしれないが、吉本ばななさんぽいなと感じた。
また、小松の恋人のトラブルにはハラハラするし、物語の展開もリアリティあって楽しめた。
好きな作家さんができて、嬉しい😊。