ブランドのポジショニング① 「戦略ごっこ」の「DJライン」を実際に見てみる

カテゴリ内の自社ブランドの「ポジショニング」(立ち位置)をどう見るか?よくあるのは4象限を作ってそこにカテゴリ内のブランドを当てはめるタイプのものです(化粧品だったらタテ「低価格」×「高価格」/ヨコ「かわいい」「クール」みたいなイメージ)。その他だと、単純に属性ごとにシェアを切っていくもの等でしょうか。

ここでは、別の見方「DJ(ダブルジョパディ)ライン」というものを紹介します。店販で売っている消費財などが当てはまるパターンが多いかと思います。

「ダブルジョパディ(二重苦)」というワードがありまして、これは「浸透率が高いほど、購買頻度も高い傾向にある」という現象のことです。学術的なエビデンスも多く、たしかに実際の購買パネルを見てもそのような傾向にあります。(式にすると「購買頻度」×「1-(浸透率)」はどのブランドでもある程度似たような数字になる、というものになります)。

※浸透率とは「ある一定期間中に、当該ブランドを1回以上買ったことがある人の割合」のことです。

「戦略ごっこ」(芹澤連:日経BP社)によると、DJラインは「市場を俯瞰する」「自社を取り巻く競争環境を把握する」「有望なサブカテゴリーを見つける」などに利用できるとのことです。

具体的な作り方は下記になります。購買パネルのデータからX軸に「浸透率」Y軸に「1人あたり購入頻度」を置き、カテゴリ内の各ブランドをプロットします。意外と簡単ですね。

簡単なイメージ図を載せておきます。

DJラインの特徴は下記の通り。

①大半のブランドは1つのライン上に集まる
上の図の太線の部分になります。これが先ほど記載した「浸透率が高いほど購入頻度も高まる」状態です。

②別のラインができることもある
上の図の点線部分のように、場合によってはサブカテゴリができる場合もあります。例として「トクホ等の機能が高いもの」「アレルギー対応食品」「販路が特殊なブランド」「地域限定品」「プライベートブランド」など。

③大きなブランドはDJラインより上に、小さなブランドはDJラインより下に位置することが多い

④ニッチブランド、気分転換に買われるブランドはDJラインの外側にくることがある。

では、実際にこのようなDJラインが本当に存在するか、実際の購買パネルデータから浸透率、購入頻度を出してプロットをしてみました。今回は2カテゴリを見てみます。

【1】お茶カテゴリ
購買パネル上ではいくつかに分かれていますが、「緑茶」「ウーロン茶」「麦茶」あたりを一つにして見てみます。実際の数値は消しており、かつ下記のように色付けをしました。なお、容量などのskuは500mlのものに限定しています。

青:トクホや機能性表示食品
黄:プライベートブランド
緑:それ以外

お茶カテゴリのDJライン


緑色のブランドは大枠ではどの商品も一定のラインに沿っているように見えます。また、ラインから外れているものとして、「トクホ」(青)「プライベートブランド」(黄色)があります。こういった群は「カテゴリ全体でみると浸透率は低い」が「1人あたりの購入頻度は高い」という位置づけです。便益や価格、販路が一般よりは少ないが購入頻度が高いものたちですね。

その他、気になった点としては下記などでしょうか。
「浸透率」×「購買頻度」が一番高いものは「伊藤園 ミネラル麦茶」
②「おーいお茶 濃茶」はDJラインやサブカテラインの両方から外れている。

①は「健康ミネラル麦茶」だけでなく、「麦茶」というカテゴリ全体が浸透率が高い傾向にあります。余裕があればセグメント別に分解してみてみたいですが、おそらく「カフェインが入っておらず子供等にも飲ませられる」からなのではないでしょうか。(単純にいえば「より幅広いセグメント、もしくは購入機会で買われている」ということだと思われます)ただし、購買パネルの期間が半期でしたので、季節によっては数字が変化するかもしれません。②については少し特殊な位置にあるように思えます。他トクホよりは浸透率が高く、一般のお茶よりは購入頻度が高くなっています。「おーいお茶 濃茶」という商品は機能性表示食品で、価格が他の機能性より安かったはずなので、このあたりが関係している可能性があります。


【2】アイスカテゴリ
細かいブランドは省略していますが、コンビニ等でよく見かけるブランドをプロットしてみました。

アイスカテゴリのDJライン

どのブランドもおよそ一つのライン上に載っている気はしますが、下記あたりが言えることでしょうか。

シェアTOPの「明治スーパーカップ」はDJラインより上目に来ている(浸透率も購買頻度も相対的に高い)
「ハーゲンダッツ」はDJラインより下目に来ている。(浸透率に比べて購買頻度が低い)

①は「大きなブランドはDJラインより上に位置することがある(スーパーカップ)」②は「気分転換に買われるブランドはDJラインから外れることがある(ハーゲンダッツ)」という特徴と当てはまるかと思います。一方「ロッテ モナ王」と「井村屋 あずきバー」については相対的に購買頻度が高くなっています。もしかすると配荷の問題かな?とも思いますがこの辺りはちょっとよく分かりません。もし仮説があげられる方がいたら教えていただければ幸いです。

また、お茶と異なりプライベートブランドは入れていませんが、最近はコンビ二各社でも独自性のある商品を出しているため、プライベートブランドも入れるとまた違った見方になるかもしれません(具体的にはお茶のようなサブのラインが現れる可能性があります)

機会があれば他のブランドでのDJラインや、NBDモデルというモデル式も紹介してみたいと思います。では。

参考資料:「戦略ごっこ」芹澤連 日経BP社









いいなと思ったら応援しよう!