幸福否定の研究ー5 "幸福否定”に興味を持つことになった経緯 3

*この記事は、2012年~2013年にかけてウェブスペース En-Sophに連載された記事の転載です。

【幸福否定の研究とは?】
勉強するために机に向かおうとすると、掃除などの他の事をしたくなったり、娯楽に耽りたくなる。自分の進歩に関係する事は、実行することが難しく、“時間潰し”は何時間でも苦もなくできてしまう。
自らを“幸福にしよう”、"進歩、成長させよう”と思う反面、“幸福”や“進歩”から遠ざける行動をとってしまう、人間の心のしくみに関する研究の紹介。

~不思議な患者さんたち~

前回までは、”まさかこういう展開になるとは…”という一般的ではない例を書きましたが、今回はもう少しわかりやすい、症状の交代について書きたいと思います。

施術をしていると、患者さんが治して欲しいという症状が軽減すると、別の症状が出てくる事があります。最も経験するのは、喘息とアトピーを両方患っている患者さんにみられる“シーソー現象”という現象です。

アトピー性皮膚炎と喘息の両方の疾患を持っている患者には、“シーソー現象”と呼ばれる、症状の交代現象が見られることが多い。つまり、どちらか一方の症状が好転すると、もう一方は悪化するのである。
このふたつの症状はいずれも外から変化が見えやすいため、このような現象が観察されやすいわけであるが、本質的には、他の心因性疾患でもそれと変わるところはない。腰痛や頭痛や腹痛のような自覚症状であれ、多食や家庭内暴力や出社拒否のような行動異常であれ、過敏性大腸症候群やアレルギー性鼻炎や胃潰瘍のような心身症であれ、それが多少なりとも治まれば、今度は別の病気が出るようになるのである。
心身医学では〝症状の交代〟として知られているこのような現象からすると、心因性疾患では、短期的に見る限り、一定の大きさの症状を作り続ける意志というか必要性がそこに存在することがわかる。 (引用:心の研究室WEBサイト "好転の否定という現象”)

アトピーが軽減すると、喘息が酷くなり、喘息が軽減するとアトピーが酷くなるというのは私も何度か経験しました(注1)

その他、一般的にわかりやすいのは出社拒否、登校拒否などです。この場合は腹痛であろうが、頭痛であろうが、だるさであろうが症状は何でも良いが、何かが消えると何かが現れるという特徴があるのと、勤務時間(や学校の時間)を過ぎて、夜になると症状が軽くなるか、消えてしまうことが多いという特徴があります。

また一見筋骨格系の症状に見えるものでも、"腰痛は軽くなったが、今度は首が痛い”などの症状交代も頻繁に経験します(注2)

上記の例のような症状は、医師でも簡単に見抜けるので、"精神的なものでしょう” "ストレスでしょう”、またはもう少し踏み込んで"自分で病気をつくっている”などと言われる事もあるようです。

ただし、"幸福否定”という発想がない事と、原因をストレスに求めてしまう
ところに大きな違いがあります。

(続く)

注1: ある患者さんは、喘息が軽減してきた頃から、施術をしたあとに喉がかゆくなるアレルギー反応が出るようになりました。同時期に、喘息が出ていた時間帯にアトピーのかゆみも出るようになりました。

・必ず"施術数時間後”に起こる

・改善がはじまってから、かゆみが出るようなる。(最初の数回の施術では出ない)

・クレームを言いながらも、施術を受けに来たり、キャンセルをしたりを繰り返す(全体的には改善している)

などから、恐らく幸福否定に基づく、改善する事への否定の症状だと考えています。また、徐々に肌が綺麗になりだしてから、施術の日になると患者さんが熱を出して来れなくなってしまったという経験もあります。

注2: 筋骨格系の施術後に他の場所が痛くなる場合には、身体的な好転反応のケースと心因性の好転の否定のケースがあります。好転反応は、施術により身体のバランスが変わるので一時的に他の場所が痛みますが、放っておけば痛みは消え、スムーズに改善していきます。
好転の否定の場合は、腰であろうが首であろうが"仕事中のみ”痛くなる、などの状況や時間帯に応じて症状が出たり消えたりします。
一番わかりやすい例は、大事な試合の前になると、必ず"どこかが”痛くなるスポーツ選手のような例でしょう。

文:ファミリー矯正院 心理療法室/ 渡辺 俊介

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