「対立を超えた対話」へ。幼稚園で働く皆さんと組織のあり方に向き合う研修
歴史と伝統ある幼稚園にて、代表、園長先生および先生方と共に組織のあり方と向き合う研修の最終回。
全体研修は初めて、というところから第1回がスタート。
そこから自己内省を丁寧に進めてきて、いよいよ「対立を超えた対話」へ。組織のメンバーで話し合いたいテーマを出していく。
組織内で日々起こっている「意見や価値観が食い違う」リアルなテーマが次々とあがってきた。中には「価値観の相違」という次元を超え、業務規則や労務という「権利」に関わる経営陣と現場の分断もある。
入口はたとえ小さなことであっても、いずれも共通に長年繰り返されてきたパターンと「あたりまえ」という前提が根底に見えてくる。
幼児教育の何をゴール(終わり)とするのか。あるいはゴールはないのか。
子どもたちのためにどこまでやるのか
子どもたちのために、よりよくしていこうとすると「終わり」がない。やるべきタスクを明確にして、少しでも早く終わらせるためにがんばったにも関わらず、時間が空いたからといって、次々と際限なくタスクが追加されていく。
いつまで経っても先生たちの休息やスペースが確保されず、達成感も得られない。その結果、先生たちのウェルビーイングは満たされず、疲弊することで生産性が下がり、些細なことで対立が起き始め、関係性の質に影響を与えていた。
この構造の奥には、「子どもたちによりよい教育をするためには、教師が休んだり楽をしてはいけない。余力がある限り、やることを自ら見つけて、よりよいベストを目指し続けるべき。」という前提がある。
これは、子育て中の母親に似ている。
母親が子どものことを傍に置いて、自分のために時間を使うことにどこか罪悪感を感じる。「母親たるもの、自分のこと(命)は後回しにして、子どものことを優先するべき」という呪縛ともなりうる前提が集合意識の根底にある。
しかし、その結果、母親の心身のスペースがなくなり、イライラを毛穴から出しながら、子どもや家族と接することになり、そんな自分をまた責める。「子どものために」やっていたはずが、結果的に「子どものためにならない状態」を招いてしまう。
どちらが大事?という問いの罠
「先生たちのウェルビーイング」と「子どものためのよりよい教育」、どちらが大事か?
特に、育ってきた時代環境が異なる世代間に起こりがちなこの対立軸。この議論に決着をつけるのではなく、これを生み出している「前提」を組織みんなで自覚し、望ましい未来へ向かうために書き換える必要がある。
この2つは、別々のものではなく、連動し、相関している。先生たちの命も子どもたちの命も、全く対等に大切なのだ。
話し合いたいテーマとして選ばれたのは、夏休みの働き方について。それぞれの立場から嘆きの声が挙げられる中で浮かび上がってきたのは、今はもう現場にいない理事長の存在。
現在の就業規則や有休に対する意識や概念を生み出し、今もなお現場に多大な影響を与えているロールを自覚し、ランクが高い存在の「させる力」から、今ここにいる一人ひとりの「する力」へとシフトさせていく。
今ここに意識を向ける
これから私たちは、どこへ向かっていきたいのか?
「先生たちのウェルビーイング」と「よりよい教育」が共に満たされ、相乗効果が生まれる世界には、何があるのか。みんなが向かっていきたい世界の解像度を上げていく。
先生たち一人ひとりの〈休息〉がしっかりと確保され、日々〈楽しみ〉ながら取り組め、〈自由〉と〈自発性〉が発揮されている組織。それによって、〈安全の保障〉が土台となり、全ての子達が〈思いやり〉に溢れ、〈成長〉を実感でき、保護者や社会との〈信頼〉が確立されている世界。
これらのニーズが相関的に満たされていくための仕組みづくり、規則づくり、組織づくりをしていこう! 全員の気持ちが1つになり、先生たちの表情が晴れやかに生き生きと輝いている。
これから新しい未来を創っていく拠り所となる「共通の願い」。
これまで、「ある」のに「ない」こととしてかき消されてきた一人ひとりの「命の声」に光を当てて、対立を超えた対話によって、学び、共に未来を創造していくプロセス。この学びと創造のプロセスを安心安全からわかちあえる土壌こそが、まさに「学習する組織」の第一歩。
第1回を終えてから、すでに朝会や夕会などの日常において、ダイアログカードを使って対話が行われているらしい。先生方は「学習する組織」の概念も知らないし意識は全くないが、着実に実践し、体現し始めていることが何よりもすごい。
個が本来のパワーに目覚め、その力の集結によって自己組織化的にぐんぐんと進化していく組織へ。
ここから始まる未来には希望しかない。
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