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試着室で思い出すのは




試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。


なんて本質を突いたキャッチコピーなのだと
ライトに照らされたこの言葉を目にした夜の新宿ルミネ前で
衝撃が走ったのを思い出す。



衣替え。
毎シーズン毎シーズン、ばかのひとつ覚えのように、
服がないとぼやきながら服を買う。

昔のように、プチプラファストファッションばかり
その時の流行や何となくの気持ちで買うのはやめた。
20代半ばになって、少し質の良い物を身に纏う楽しさを知った。


どこか、焦りがあるのだと思う。
安かろう悪かろうな服も似合ってしまう若い自分は
無知でもしょうがない、失敗しても平気な自分であり
自分の背負う責任が大きくなっていくほどに
そんな自分はいなくなる気がすることと
重なっているような気がしてる。

丁寧に作られた、質と値段の良い生地は
そんな中途半端な今のわたしに
大丈夫、できる。焦るな。大丈夫。
と暗示ができる最高の魔法なのだろうと思う。





試着室で思い出す人が、いないわけじゃない。

あの人にどう思われるのか、
きれいだと言ってもらえるのか、
そんなことでいっぱいになることもある。

試着室の鏡に映る自分は
その人の目に映るフィルターのかかった自分となり
本当の自分の好きなものや似合うものがわからなくなることもある。



それでも、だれに見せるどんな服でも
自分に魔法をかけてくれるのであれば
それで良いかもしれない。




試着室で思い出すのは、
自分自身の明日でありたい。

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