間宮兄弟
大学生の頃、僕は国際交流サークルに所属していて、毎年夏に海外数ヶ国から高校生を招き、日本の高校生と10日間の国際交流キャンプを企画運営していた。
ある夏、そのキャンプに弟が参加者としてやってきた。もちろん僕が誘ったからだが、弟を誘うことも、弟がその誘いにすんなり応じることもサークルのメンバーの目には奇異に映ったらしく「すごく兄弟仲いいんだね(普通は誘わないし来ないよね)」と言われて「僕らにとっては普通だけどな」と思ったことを覚えている。
そのキャンプで好きな女の子ができた弟は、当然のように僕に相談し、僕はそんなに恋愛経験もないくせに「まずは遊園地に誘ってだな」とか「プレゼントは本がいいんじゃないかな」と兄貴ぶってアドバイスしていた。確か佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」を勧めたっけ。そして弟は結局一回デートしただけで終わったっけ。アドバイス役に立ってないじゃん。
そうやって好きな人ができたらお互いに相談し合うのも常だったが、それも友達に話したら「普通しないよね、いい年して」みたいなことを言われた。
江國香織の「間宮兄弟」はそんな弟との関係を蘇らせてくれつつ、肯定してくれる話だ。
30歳を超えてもお互いがお互いを必要としあい、いつも一緒にいて、ジグゾーパズルをしたり、レンタルビデオで映画を観たり、本を読んだりしている。恋をしたら密かに心配したり応援したり、失恋したら気にしあったり。
今では僕は弟と遠く離れて暮らしていて、連絡もほとんど取り合ってない。時々、兄弟っていつまで兄弟なんだろうな、とふと寂しくなったりするけど、それこそ「間宮兄弟を見てごらんよ」で、この世界のどこかでカーペンターズをかけながらジグゾーパズルをしている間宮兄弟がいると想像するだけで、ずっと兄弟でいられるかもな、という希望を抱かせてくれる物語だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?