距離感を詰めてくる~国際詐欺?顛末 (6)
私からアダムへの返信では、アダムに対して、金地金の輸入についての日本での申告・納税のことを説明し、計画策定と実行のための事前調査費用をディスカウントしてやると提案し、あわせてビデオチャットを要求した。
8時間後、アダムはまた長いEメールを送ってきた。冒頭の文に "my friend" とある。
国際ロマンス詐欺でもそうだが、急速に近づこうとするのもレッドフラッグだ。今回のEメールでは、"my friend" が4回、"my great friend" が1回使われていた。うち2回は、その後に私のフルネームが続いている。いわば、「我が友、〇〇△△」と呼びかけるもので、そこではもはや Mr. すら使われていない。
既にこの noteでの投稿も6回目になるが、今回のアダムからのEメールは、最初のコンタクトからまだ45時間しか経っていない時点でのものだ。会ったこともない、話したこともない相手から友達呼ばわりされるのは気持ちが悪い。これも、自己開示の返報性を利用したアプローチで、相手を友達として扱うことで、自分も友達のように接してもらえるようになることを狙ってのものだ。
概して日本人は、英語でMr. や Ms. などの敬称を略してファーストネームで呼び合うと、過度に親近感を覚える傾向がある。英語で外国人とコンタクトしているという非日常も手伝って、ちょっとした興奮状態になってしまう人も多い。特に、英語がそれほど上手ではない人の場合、自分の英語が通じたことの嬉しさや、相手が自分の英語を理解しようとしてくれていることへの感謝もあって、相手が言葉の上で距離感を詰めてきた場合に、自分も相手に対して距離感を詰めていこうとしてしまうことが多い。ここでは、返報性の原理と、小さな吊り橋効果(覚醒の誤帰属)のようなものが混在している。
ファーストネームで呼ばれ、"my great friend" などと持ち上げてくるのは、国際ロマンス詐欺で詐欺師が "my honey" などの甘い言葉を使うのとパラレルといえる。接近の性急さと同時に、接近のしかたや使う言葉もレッドフラッグだ。
幸い、私は外国に住んでいて英語でのコミュニケーションは非日常ではない。ゆえに、血圧も心拍数も上がらない。覚醒の誤帰属にいう「覚醒」がないので、帰属を云々する必要がない。私にとっては、ここでは自分が返報性に陥らないようにだけ注意しておけばいい。
最初のコンタクトから45時間しか経っていない相手に "my great friend" と言われても、ありがたくも何ともない。私は今後も、アダムに対しては敬称として Ing. (技師)を使い続けることにした。普段のコンサル業でも、同様に "Dr." や "Mr." を使っているので、それを貫くことで、自らの返報性を遮断するということだ。
アダムからの返信の内容は、次の記事で記す。
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