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2024年フリーゲーム紹介まとめ10選

 今年はどういう一年をお過ごしでしたか?普段、Xにてフリゲの紹介ツイートを行っている電子の妖精プリム( @FairyPrim )です。

 今回は2024年に紹介した100個近くのフリゲの中から個人的に印象深かった10作を振り返っていきつつ、140字で語りきれなかった諸々も話していこうと思います。


〈 誰でもないもののカノン 〉

 まずは「VIPRPG紅白2023」の出展作、「誰でもないもののカノン」です

 居住地に居場所がなく家を飛び出してしまった魔法拳士のレイチェルと、一族の生業である死霊術で生計を立ててきた死霊術師バイソン。いわゆる世間の「はみ出しもの」2人が主人公の物語で、登場人物一人一人の考え方や細かい感情の機微などが非常によく表現された読み応えのある読むゲです。
 中盤から後半にかけて登場する敵役の死霊術師ネクロも世間のはみ出しものの一人です。同じような経歴をたどりながらもほんの少しの違いで道を違えてしまい戦うことになってしまっただけで、どちらも「誰でもないもの」になろうとしているだけ。正義と正義のぶつかり合い。燃えますよね。

 戦闘のシーンも秀逸で、文字と少しばかりの演出のみで一気に読者を魅せてくる。読んでいるとき、時間の流れはゆっくり進むけれどテンポはすごく良いので気疲れしない。そんな読むゲの良いところが濃縮されたような作品です。

 2025年1月現在「VIPRPG紅白2023」は閉鎖されているためDLはできませんが、有志の方が動画をUPされてるようなので気になる方は覗いてみてはいかがでしょうか。


〈 ひのせせらぎ 〉

 続いて同じく「VIPRPG紅白2023」からの読むゲ、「ひのせせらぎ」です。

 「誰でもないもののカノン」が「一見狂気に見える正気」だとすればこの作品は逆。「一見正気に見える狂気」です。

 終始鬼のお姉さんの妖しさを醸し出した作品で、親切だけど何かしらの「裏」がある雰囲気が作品全体を包みこんでいます。物語が進むに連れ徐々にその妖しさの謎が解き明かされていきますが、あくまで表面的な解決なだけで彼女の真意は闇のまま。そんな考察しがいある霧がかった雰囲気がこの作品の一番の魅力です。
 主人公の少年含め全員が理知的で賢く動いていますが、一方で感情やその場の雰囲気に流され本人自身も意図しないような行動や言動が露出してしまう、ものすごく人間らしい一面を持っているのも本作品の大きな特徴です。全員が「賢く」動いていった結果、物語はどういうふうに終着していくのか。それはみてのお楽しみ。

こちらはitch.ioの方でも作品公開されているので現時点でもプレイできます。よければどうぞ。


〈 アクアリウムは踊らない 〉

 今絶賛話題の水族館を舞台にしたホラーADV「アクアリウムは踊らない」です。

 ジャンルはフリゲ文化の一角である「ADV寄りホラー」。怖さを描くためでなく、物語を色彩豊かに表現するためにホラー要素をトッピングしているタイプのADVです。水族館は元々薄暗く幻想的なイメージがあるのでフリーホラーとの相性良さそうだと思ってましたが、その質感を見事に表現できていたのはすごい!水族館の中に入って色んな生物を鑑賞しながら散歩しているような気分に浸れる作品でした。個人的にクラゲ大好きなのでかなりクラゲにフィーチャーされていたのもポイントが高い!かわいいね🌊

 プレイ時間もちょうど良く謎解きにも諸々ヒントなど用意されているので、フリーホラーゲームをこれから始めるような人にもぴったりの質のいい作品だと感じました。フリゲプレイ人口増えてくれると嬉しいね。


〈 Fate ~The Ancient Relation 〉

 「VIPRPG GW祭2024」から一作。北欧神話モチーフの正統派王道RPGです。

 本作品の魅力はなんといっても「王道」たるところでしょう。故郷を破壊された主人公が世界を平和にするために各地で出会った仲間たちと一緒に魔王討伐への旅に赴く。そういった現代では忘れかけているような”熱”が存分に表現されていて、ゲームを触り始めた頃の新鮮な面白みというものを思い出させてくれるようなRPGでした。
 ストーリーだけでなくゲーム部分も正統派なハクスラRPGで、徐々に上がっていくステータスやダメージがなんとも言えない幸福感がある作品でした。

 王道と聞くとどうしても「ありきたり」というイメージが付くものですが、王道と言われているのは元作品が面白くそれに続くような作品が多かったからこそ。真正面から王道と向き合ったからこそ味わえるカタルシスをぜひご賞味あれ。DLは下記URLから。


〈 機械仕掛けの嘘と夢 〉

 

 「絡繰」をテーマにしたスチームパンク風短編ノベル、「機械仕掛けの嘘と夢」です。

 「スチームパンク」と聞くとどこか騒がしくガチャガチャしたイメージが湧いてきますが、本作品では夕暮れの工場のようにどこか物静かでさみしげな雰囲気が漂ってくる…そんな世界観に心惹かれました。

 少しネタバレにはなりますが、物語を進めていくに連れスチームパンクの世界観だけでなくファンタジーもごちゃまぜになって話が展開されていきます。要素が多いながらも瓦解せずにまとまっているのはちゃんと登場人物たちの個性が詳細に練られているからでしょう。空想の世界を描く以上、より人物たちの行動や感情に納得感を持たせていないと作品に付いていけなくなっちゃいますからね。

 フリゲに限らず人と人造物との関わり方を描いている作品は数多く存在しますが、どれも感情の所在やクオリアが根幹のテーマになっています。「自分が何者かであるか」とか「なぜ生きていくのか」といった問題は年代問わず共通の悩みなんでしょうね。「人」を描くために「人造物」を登場させるというのは、なんというか得も言えないエモさがあります。


〈 箱庭ドールメーカー 〉

 続いて第16回ウディコンからポンポンとまとめて振り返っていきます。まずは16回ウディコンで堂々の総合優勝!ハクスラ&キャラ育成が魅力の「箱庭ドールメーカー」です。

 この作品の特徴はなんといってもキャラ育成パートとダンジョン攻略パートが分かれていることでしょう。フィールドマップにて強いキャラの「素」を作りそれをダンジョンマップで活躍させるという二段階方式のキャラ育成を採用していて、それにより強いキャラを作った後でも育てる喜びが残り続けるので育成好きにはたまらないシステム構築でした。
 フィールドでキャラを育てる→ダンジョンでお金を稼ぐ→そのお金でまた強いキャラを育てる→……といったループが非常に楽しく中毒性の高い一作でした。今回ウディコン70作以上ありましたが半分以上の時間はこの作品のプレイに費やしていたように思います。

 同じようなすごろく×デッキ構築システムの作品としてこよる様の過去作「箱庭フロンティア」があります。そちらも面白い作品でしたが、「箱庭ドールメーカー」はまさにその正統進化!4人PTになったことで戦略的にも幅ができるし色んな育て方への意欲も掻き立てられるので「沼」度は数倍!あそこから面白さにつながる余地がこんなにあったのか!?と素直に感心しました。

 ゲームシステムに隠れがちですがストーリーも魅力的!こちらも「生物」と「ドール」の関わりをテーマにした王道展開で、クリアしてからもさらに物語が展開して2重にも3重にも楽しませてくれる作品でした。


〈 迷宮郷まよろば 〉

 色彩豊かな世界を存分に歩き回れるお散歩ゲー「迷宮郷まよろば」です。

 やはり特質すべきは全自作のグラフィックとBGMでしょう。ただ綺麗なだけでなく、物悲しさ、メルヘン、不気味さなど様々な描き口でメリハリついた景色を見せてくれるので、周るマップすべてが観光地!BGMも素敵の連続で、口ずさみたくなるような軽快な音楽から環境音のような音まで作れる音の幅が広い!総じて終始ワクワク感と感動の溜息で満たされた時間を堪能できました。

 設置アイテムや地図の存在により隅々まで散歩したくなるようなシステムづくりも素敵でした。隅々まで歩き回ると結構な時間がかかる世界ですが、不思議と疲れもなく世界をキラキラした目で歩き回れたのはそういうさりげないシステムの補助があったからだと思っています。

 さて、感動するような景色ばかりの迷宮郷まよろばですが、朽ちた電線や廃墟のようなものも数多く存在しています。かつてこのまよろばで何があったのか。「もどれるチャン」とこの世界にはどういう関係があるのか。フロートチャンはなぜ一人でほとんど人もいないようなまよろばに観光に行こうと思ったのか。そういう世界の歴史や人物像についての考察の余地が残るのも魅力の一つでしょう。

 本作品を一言でまとめると「最高のお散歩ゲー」!様々な世界を見せてくれてありがとうございます。

 嬉しいことにサウンドトラックも販売されています。心が癒やされる曲ばっかりだぞ!


〈 雪山道 〉

 続いて長長編雪山リスペストのノンフィールドRPG「雪山道」です

 長長編とかきましたが、作者想定のプレイ時間だと10~20時間!プレイした体感だともっとかかっているように思います。雪山リスペクトでここまでのボリュームの作品は他に見たことありません。最初はこのプレイ時間のインパクトに目を惹かれてプレイしましたが、十分にプレイ時間に見合うような良ゲーでした。

 本作品は様々な遊び方の一面が垣間見える作品です。はじめの方ではいわゆる一般の雪道ゲーらしくリソース管理をしながら階層を進んでいきますが、途中からは死に戻りを繰り返しながらステータスを高めていくようなハクスラ要素が主流になっていき、使える技や戦法も加速度的に増えていきます。ただし戦術やリソース管理をしっかり行えば一回も倒れることもなくEDを迎えられるような高難易度RPG的な一面も持ち合わせています。
 今までは雪山ゲーというと世界観や物語は刺さるものが多いけれどプレイスタイルはそこまで他作品と違いがないという認識でした。ただ「雪山道」をプレイして、雪山ゲーにもここまでの可能性の幅があるんだということを教えてくれたようで当時とても感動しました。

 「雪山道」を語るうえでパロディの存在は欠かせないでしょう。本作品にはどこぞやでみたようなキャラクターや技が階層を経るごとにどんどん見かけるようになります。もちろん元ネタを知らなくても楽しいですが、知っていると思わずにやけてしまうような要素の連続!そういう意味では今までフリゲをいっぱいプレイしてきた人にこそオススメしたい作品だと言えるでしょう。

 ストーリーについても雪道ゲーらしく、黙々と雪道を歩きながら半生を振り返っていき段々と雪道に登る「目的」が垣間見えてくるような静かで熱情的な物語です。「ストーリーを見るために雪道を登る⇔ゲーム部分の小休憩にストーリーを見る」といった良いサイクルでプレイできたのも、雪道を登り続けられた大きな要因でしょう。

 DLはぜひこちらから。


〈 メビウスの迷宮 〉

 スレスパ要素の強いローグライト「メビウスの迷宮」です。

 一番大きいゲームシステムの特徴は、スキルを使っていくことによって溜まっていく「覚醒」の存在でしょう。このシステムによって攻守のメリハリがつきやすくなり、より戦略の幅を持たせられる良いシステムだと感じました。「肝心な場面で防御カードを一個しか引けなかった」みたいな状況でもなんとか対応できるのでより色んな戦法を試せますからね。

 スレスパ要素が強いとは書きましたが、本作品はかなりストーリー要素の強い作品になっています。いろいろな性能を持ったキャラクターが登場しますが、それらの性能がすべてキャラクターの性格や能力、過去を暗示したものになっており、それらが後に見ることになるストーリーとつながってより感情移入をさせてくれるような構成となっています。

 この作品のストーリーはメインのゲーム部分だけではよくわかりません。メインを進めることによって開放されるストーリーパートによって初めて全容が見えてきます。今まで操作してきたキャラクターがどのような経緯でメビウスの迷宮に挑むことになったのか、この探索にどういう「想い」を抱きながらダンジョン攻略をしていくのかといった部分がゲームプレイ部分をやった後にわかる仕様となっているため、今までプレイしてきた「旅路」がより感傷的に映るところが上手いと感じました。何もわからず、必死に進んできた旅路を振り返って反芻する時間はなんとも言えない趣がありますよね。

〈 ORBITALS。〉

 最後は広大な世界を遊泳しながら生活拠点を整えていく宇宙もの作りSLG「ORBITALS。」です。

 この作品を一言で表すなら「良質な作業ゲー」。何か他のものを見ながらゆっくり進めていくのにピッタリな作品です。宇宙生活を快適に過ごしていくにあたり、「次に何をすればいいか」「今何が不足しているのか」などのタスクが無限に降ってくるなかでゆっくり一つずつ処理しつつ拠点を発展させていく、いつまでも続くような楽しさで溢れたようなSTGです。

 この作品を語るうえで「応用化学」の存在は外せません。人類がどのようにして物質を作り上げてきたか、物質をどういうふうに利用してきたのかなどがゲームを通しながら感覚的に分かる内容になっていて、化学というものを理解する上での障壁を下げてくれるような、今後の生活をより豊かに迎えていくための糧になる作品でもあります。創作物から得た知識って意外と馬鹿にならないもので、自身では一生触れる機会がないようなコアな知識でも少し知るきっかけを作れたりするんですよね。私がフリゲ好きな要因の一つでもあります。

 知識ベースのお硬い話ばかりしてきましたが、この作品のノリはめちゃ軽い終始ノリツッコミ飛び交うような会話の応酬!こういうお遊びベースなノリで色んなことを知れるのがほんとに良いんですよ!スキ


おわりに

 ここまで見てくださって本当にありがとうございます!こうして今までのプレイ作品を振り返る時間はかけがえのないものです。

 飲み込まれそうになるほどの情報の嵐は年々勢いを増すばかりですが、ゲームというジャンルはずっとその嵐の一角を担い続けています。今後も色んな嵐に負けることなく良い作品が世に出続けてくれることを願うばかりです。

 2025年ももっといい年になりますように!以上、プリムでした✨

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