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「心の資本」~ポジティブな心のエネルギーが経営を変革する~

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ビジネスの世界では、1950年代以降、高度経済成長を経て機械化や自動化が進み、めまぐるしい変化を辿ってきました。さらにIoT時代へと進み、社会スピードは著しく高速で変化を遂げます。
大量生産が可能になった現在、価値観や創造性などオリジナルのサービスやモノづくりが求められる時代に突入しています。それは、商品そのものに限らず、勤務時間や勤務形態など、仕事環境そのものにも個性が反映されることを示唆しています。さらに、人間同士の関わり方の多様化が起こっています。

このような時代にあって、ポジティブな心のエネルギーが競争優位性を生み出す原動力となるという新しい概念「心の資本」が重要視されています。この記事では「心の資本」の概要を要素別に解説しています。

心の資本とは

 「心の資本」とは、近年、世界的に注目されている経営学者フレッド・ルーサンスの提唱した概念です。
かつて”やる気がすべて”などの根性論が、ある意味で日本企業のこだわりや優れた技術を生み出してきた一方で、メンタルトラブルの一要因になってきました。この数年、心の持ち方が業務に影響することを、根性論ではなく、客観的なエビデンスから証明するため、科学的検証が有用といわれるようになりました。この考え方を採り入れる企業が急速に増え、さらなる研究も進んでいるという状況です。

売上や原価などの経営成績や財務状態などの利害関係者に公表する数値は、客観的で信頼できるものでなくてはなりません。ゆえに、共通の企業会計ルールに基づき、計算がなされています。同じように、心と業績との関係も、客観的で信頼に足るデータを示すことが求められています。そのためには、必要なスケール(尺度)と共通のルールが必要です。ここで重要視されているのが「心の資本」という尺度です。

心理学者や経営者をはじめ、多方面で企業業績と従業員の心の関係を紐解く研究がなされてきました。そして、「心の資本」が高い企業は、業績にも好影響をもたらしていることが、わかってきました。
「心の資本」は、次の4つの要素から構成されます。

H・ホープ
E・セルフエフィカシー
R・レジリエンス 
O・オプティズム 

「心の資本」を構成する4つの概念を「HERO」と」呼称し、4つをあわせた総合的な測定が有用であるとされています。そして、特筆すべきは「測定可能であること、業績向上と関連があること、強化可能であること」です。

バレーボールやサッカーなど、チームスポーツに例えてイメージしても良いでしょう。スカウトマンが良い人材を集めたとします。選手それぞれにボールコントロール技術やメンタル・フィジカルの面で、強みと弱みがあります。各選手が自律性を持ち向上に励んでいたとしても、それだけがチームとしての勝利に結びつくとは限りません。最終的には指揮官が、選手特性を活かした的確なポジションに配置することが結果につながっていきます。

ビジネスにおいても、組織全体としての結果を出していくため、従業員の「心の資本」を最適化していくことが求められます。まずは「心の資本」の中身を知ると良いでしょう。具体的に、心の資本を4要素に分けて、それぞれの概要を紹介します。

ホープとは

「希望」ホープ(Hope)とは、試行錯誤を繰り返すことができる、目標に向かって集中することができるなど成功へ向かう希望の測定尺度を意味します。自ら可能性を見いだし、それを達成するためのプロセスを見いだす想像能力といえるでしょう。

この尺度が高い従業員は、何事にも見通しがあるという前提で業務にあたれるので健全だと言えます。リーダーにとっては、より質の高い指示を出しても折れないであろうという頼れる存在です。このような関係は他の部門にも良い影響を与え、結果として企業全体としての明るい展望につながります

セルフエフィカシーとは

「自信」セルフエフィカシー(self-Efficacy)とは、自分が仕事の完遂に向かい、パフォーマンスを発揮することができるという自己効力感の測定尺度を意味します。努力が必要ではあるけれど、自分にはできるはずだという自信をもって行動する能力、自己を肯定する感覚といえるでしょう。

この尺度が高い従業員は、選り好みせずにチャレンジする姿勢を保持し、高いパフォーマンスを発揮するでしょう。仮にその課題が難しくても、自分はこれを成し遂げるはずだというポジティブなバイアスを持っています。リーダーにとっては、リーダー自身が弱気になっている時に励みとなる存在です。自己効力感の高い従業員がいることで、自己効力感の低い従業員やリーダーにも自信を与え、能動的な組織になることが期待されます。

レジリエンスとは

「耐難」レジリエンス(Resilience)とは、逆境や憂鬱な状況を持ちこたえ、立ち直る力の測定尺度を意味します。トラブルに対する収拾力・課題に対する模索力・失策に対する回復力など、心が持ち堪える能力だといえるでしょう。

この尺度が高い従業員は、どのような状況下でも自分のやるべきことを完遂できる可能性が高いでしょう。リーダーにとっては、苦しい状況だからこそ任せることができる存在です。自然災害や感染症への対策などの変化が著しい昨今、業種関わらず、企業にとって厳しい展開が何度も訪れていると想定されます。レジリエンス力が高い従業員を増やすことは、企業が生き残るための条件となるでしょう。

オプティミズムとは

「楽観」オプティミズム(Optimism)とは、続けていれば、良い結果が出るであろうと楽観的に考える心理的傾向の測定尺度です。ここでいう楽観とは“なんとかなる“というより“なんとかできる“という主体的な思考です。

この尺度が高い従業員は、仕事をする上で先を見据え、道筋を明るく捉える能力を発揮するでしょう。リーダーにとっては、危機状況に陥っても現場の雰囲気を保ってくれる心強い存在です。大量の注文を受けた時、納期に間に合うかどうか不安になる従業員よりも、この計画を実行すれば可能だろうという姿勢の従業員が多ければ、企業全体としてのポテンシャルが上がり、発注量を増やし業績向上につなげることができるでしょう。

まとめ

「心の資本」を構成する4要素について紹介しました。4要素は、これからの経営には不可欠です。
変化の著しい時代における経営では、目標に向かう道筋を何度も修正する必要があります。柔軟に対応しながら成果をだすことは、これまでに例のない経営手法が求められるでしょう。「心の資本」が企業価値にどのように貢献し、未来を映しだしていくのか期待されます。

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