教えて吉田先生!これからの健康経営を考える! 2.良い労働環境とは何ですか?
第1回「なぜ今、健康経営か?」はいかがでしたでしょうか?
20回ほどのシリーズを予定しております「教えて吉田先生!これからの健康経営を考える」。第2回は「良い労働環境とは何ですか?」です。
インタビューは2020年4月6日に都内にて行われました。
社会参加の在り方としての「良い労働環境」とは
――― 良い労働環境とは、どのようなことでしょうか?
前回の話の続きから始めましょう。「働く」を「社会参加して生み出す価値を交換する営み」と捉えると、良い社会参加のあり方として、社会的な分業効率や参加者のやりがいなどの観点が必要かと思います。すると、賃金という捉え方は、一つの側面に過ぎなくなってくるのかもしれません。
そのあたりは産業医や精神科臨床医としての体感的にも、昔からは大きく変わってきていて、バランスの良い時間配分で効率良く働く、休む時はしっかり休養を取り、さらに自分の望むキャリアアップを目指す、働く場所や時間など物理的な自由も確保する、など社会参加の在り方として自由度が増していると感じます。
また、ちょうどこの6月からハラスメント対策関連法案が施行されますが、近い将来においては「自他問わず、誰のネガティブ感情にも左右されない働き方」が良い労働環境としてクローズアップされてくると思います。
――― キャリア形成の観点での良い労働環境とはどのようなことでしょうか?
キャリアについて、社会参加を念頭に置いて考えると、たとえば20代での社会参加のあり方と60代での社会参加のあり方は違います。年齢を重ねるにつれライフスタイルや家族構成が変わってくる中で、スキルはもちろんですが、仕事に対する姿勢や優先順位が変わっていきます。今後はそのことを念頭に置きながら、キャリアを考えていくことになると思います。
テレワークの広がりは労働環境への意識を変えるか
――― 前回クラウドワーカーの話がありましたが、ワークスタイルという観点での良い労働環境とはどのようなことでしょうか?
テレワークやクラウドワーカー・ギグワーカーといった働き方が一般化し、労働環境や労働条件に占める居住地や通勤距離などの物理的な縛りが緩むと、働く個人にとってはいかに快適に幸せに、かつ、効率よく社会へ価値提供できるか、を重視する時代になると感じます。労働環境が個人の生活を規定し、その条件下で幸福を最大化する時代から、個人が大切にしたいことや思い描く幸福を、労働という社会参加の中で模索していく時代になるのではないでしょうか。
ハラスメントのない職場環境は可能か
――― 近年、セクハラやパワハラなどのハラスメント関連のニュースが後を絶ちません。ハラスメントという観点での良い労働環境とはどのようなことでしょうか?
幸福に健やかに社会参加するという意味で、ハラスメントのない労働環境を目指したいですね。ライフスタイルやライフステージに応じた公正な社会参加で、かつ、ハラスメントのない環境が望ましいでしょう。
しかし、実際の職場には、色々な考え方や性格傾向を持った人間がいますし、軋轢や縄張り争い、支配感情や嫉妬心、過度な承認欲求などの悪い感情を抱く人もいて、そこからハラスメントが起きてしまうのが現実です。会社としては、それをどう克服するかが課題となります。
現在、新型コロナウイルス感染症により急速に広がっているテレワークがより進めば、少なくとも対人接触は減るのでハラスメントも減るのかもしれません。またAIを活用した人事評価が可能となり、昇進や業務の割り振りにネガティブ感情の入り込む余地が少なくなればハラスメントも減るのでしょうが、人間側がそれに慣れるまでには、時間がかかりそうですね。
バランスからインテグレーションへ
――― これからのワークライフバランスについて教えてください。
ワークライフバランスに関しては、働き方改革が叫ばれるずっと以前から課題と認識されてきましたが、2008年に経済同友会が「ワークライフインテグレーション(仕事と生活の融合)」に関する提言を公表しており、ワークとライフを切り分けて時間配分を考えるというニュアンスではなく、より高い次元で統合して社会生活と私的生活の双方を充実させよう、という考え方がますます強まるものと思われます。
ここで、歴史上初の株式会社であるオランダ東インド会社の名前を思い出していただきたいのですが、そもそも会社とは、意志と能力のある創業メンバーが、ある目標を持って出資者を募り、一緒にその目的を達成しようとする人々がその旗印に集まって始まった、という歴史があります。現代でも、出資者や労働者が企業の創業理念に共感することが大前提で、企業側からすれば、掲げた理念を実現するために、どのようなワークスタイルが各労働者にとって幸せなものであるか、業務をどのように分担し目標に近づいて行くか、は重要課題です。
イギリスの産業革命から300年、日本の場合は明治維新から150年。近代以降、一般の人びとが、それまでの農業や家内制手工業から「外へ働きに出る」際は、工場や現場の近くに住み込んだり、郊外の自宅から都市部のオフィスへ通勤したりと、いずれも居住や通勤の面では一定の縛りを生じるモデルでした。つまりこの2-3世紀は「物理的な労働集約モデル」がずっと続いてきて、経済合理性もあったのですが、ここ30年の情報通信技術の発展に伴い大きなシフトチェンジが起こっていますね。新型コロナウイルス感染症の影響で、その流れは加速するでしょう。
誰しも、完全な孤立状態やまったくの独力で生きていくことは困難です。社会参加し、社会生活を営むのが人間の本質であり、近代以降はいずれかの組織に所属し、労働の対価として賃金を得ることが多くの人の生活基盤となってきました。しかし、先ほど述べた「物理的な労働集約モデル」から、より自由度の高いワークスタイルが可能となりつつある現在、ワークとライフを対立的に捉えてオンオフ的にバランスを取るというよりも、どうインテグレーションを実現していくかが重要になると思います。必ずしも仕事と私生活はトレードオフの関係にはないと思いますし、好きな場所で、適度な時間、心地よい関係性の中で働く、などバランスを重視する時代になっていくのではないかと思います。
(聞き手:株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介)
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<編集後記>
ここまで読んで下さりありがとうございました。株式会社フェアワーク代表取締役社長の吉田 健一です。
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