評価が高い音楽をコスパよく大量に聴きたい人のための音楽の発掘方法
私のアイデンティティを確立する上で欠かせないのが、音楽の存在です。
楽器は一切弾けないので聴く専門になります。
今でも音楽の話題になると、「そのバンドって、レディへとナインインチネイルズが出会ったようなサウンドしてるよね」みたいな知識マウントを取ってしまうような、痛い一面を見せてしまうくらいです。
音楽の話をするとき、友達との「最近、音楽何聴いてる?」や、はじめましての方との「好きな音楽はなんですか?」のような会話は、老若男女にとって共通の話題として上がるんじゃないかと思います。
各々いろんなきっかけで好きな音楽に出会うかと思います。
好きな音楽に出会ったきっかけは、経験上、下に書いてるような理由なんかが多い印象です。あくまで一例です。
・親の音楽好きがきっかけで、いつの間にか自分も好んで聞いていた
・好きな子や友達から紹介されて、気づいたらそのグループのファンになっていた
・Mステをたまたま観てたら、予想以上にかっこいいバンドが出てて、ライブに通うまでになった
・ドラマの主題歌を歌ってたグループが予想以上に良くてハマってしまった
・Apple MusicやSpotifyのおすすめから好きになった
私自身、こうしたきっかけで好きになった音楽はもちろん多くあります。
しかし、今聴いている音楽は、大量に調べたことがきっかけで好きになったものが多いです。全盛期には、約3年でアルバム1,000枚以上の音楽を聴きました。
時代は大きく変わったので、アルバムをたくさん持っている人がかっこよかったり、マイナーな音楽を多く知っているといった価値観はないように思います。
ですがいつの時代でも、音楽通の人は知的でかっこよく見えるものです。
何より自分がそうだったように、最新の海外で流行っている音楽や、日本の音楽が海外でどう評価されているのかを知りたい、みたいな事は一度は考えたことはあるのではないでしょうか。
また、好きな音楽を聴いたときに、私の場合、そのアーティストがどういう事がきっかけでこうした音楽を作ることになったのか、といったバックボーンが知りたくなってしまいます。
この記事では、次のような人には少しお役に立てるようなものとなっております。
1、海外で評価が高い音楽をいち早く知りたい人、聴きたい人
2、海外で評価が高い日本の音楽を知りたい人(位置付けを知りたい人)
3、好きなアーティストがどういう音楽から影響を受けて自分の音楽制作をしているのかを知りたい人
それでは、音楽の沼にハマった過去から書いていきます。
きっかけと始まり
自分が音楽に大きくのめり込んだきっかけは、当時のバイト先の先輩の一言でした。
その先輩はメタラーで音楽の趣味が合う人でしたが、ある日気になったので、今までどれくらい音楽聴いてきたかを聞いてみました。
すると当たり前のようにこう答えたのです。
「アルバム1,000枚くらいは聴いたよ」
私自身、元々は邦ロック(BUMP OF CHICKENなど)や流行りの洋楽ロックが好きで、人よりは音楽は聞いてる方だと思ってました。
ですが、それは完全な井の中の蛙状態であったことが分かったのです。
同じこと自分も言えたらかっこいいだろうなあ、となんとなく思ってしまったのです。
これが音楽沼にハマった原点です。
ですが、どうすれば1,000枚のアルバムを聴けるのかわかりませんでした。
当時はSpotifyのようなサブスクリプションサービスもなく、また受験生だったこともあり(バイトは受験費を稼ぐため)時間が限られてました。
同時に、同じようなジャンルじゃなく、幅広く音楽を聴きたい欲が出てきてました。受験生にとっては明らかにマイナスです。
時間的コスパがよく、かつ大量にいい音楽を聴きたいと考えていた自分が、最終的に辿り着いたやり方は、
「海外のレビューサイトを使って大量に調べた作品を聴く」
というやり方でした。
※英語のサイトを使うことで、一応受験対策にもなるし、という安直な理由もあります。
主に使った海外のレビューサイトは以下の2つです。
・Rate Your Music
・Pitchfork
他にも、レビューサイトの評価をまとめた「Metacritic」や音楽データベースサイトの「Allmusic」、海外版の「Wikipedia」や、記事限定で「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴代アルバムランキング」のようなサイトも見ましたが、結局よく使ったサイトは上記の二つです。
両者の共通点は以下になるかと思います(他にもあるかもしれません)。
1.アルバムの評価の点数が設けられている(評価基準がある)
2.データベース化されている(調べやすい)
3.ランキングや高評価で括っているので、わかりやすい(見つけやすい)
最大の特徴は評価(レビュー)があり、見つけやすいようにデータ化されているというところです。
レビューサイトは、いいコンテンツをコスパよく調べていくということに非常に長けており、これ以上ないほど活躍してくれます。
当時の私は、Amazonレビューの信者でした(受験生の時はいわゆる”参考書オタク”でした)。賛否両論ありますが、使い方を間違えなければAmazonレビューのような評価サイトは非常に有用です。
Rate Your MusicとPitchforkはレビューサイトという点では同じですが、仕様は全然異なります。この二つのサイトについても解説していきます。
①Rate Your Music
Rate Your Musicは以下の三つの点が特徴的です。
1.個人ではなく、多人数のレビューサイトである(5段階評価、Amazonレビューに近い)
2.ランキングやアーティストのサイトが非常に見やすく、没頭しやすい(Wikipedia)
3.匿名性が強いため、世間とネットの評価が異なり、質が高い音楽に出会いやすい
Rate Your Musicは、WikipediaにAmazonレビューが加わったようなサイトです。
多人数かつ、匿名での評価になるので偏りが少なく、非常に信憑性が高いです。そのため後述しますが、本当に評価されている音楽が分かりやすく知ること事ができます。
また、ランキングや年代別・ジャンル別で括っている点で、データベースとしての機能が充実しているところも大きな特徴です。
年代で言えば、2022年のような単発なところから、2010年代、またはオール年代と幅広くソートできます。
またジャンルで言えば、例えばロックの中でも、ロック→オルタナティブ・ロック→インディ・ロック→ブリトポップのように、細かく絞る事ができます。
The Beatlesを例にしてみます。
https://rateyourmusic.com/artist/the-beatles
The Beatlesは言うまでもなく伝説的なバンドですが、大衆だけではなくネット上でも評価が高いバンドとして有名です。
上記URLから入ると、初期から後期まで評価がずらりと並んでいるかと思います。
評価が高いアルバムをひとまず聴いてみたり、またはThe Beatlesの主なジャンルのランキングを見て、上位の未聴のアルバム(例えばThe Rolling StonesやThe Velvet Underground)を聴きます。そこから今度はまた、ソロ作品や派生したジャンルを掘り下げて、といった具合で無限ループで音楽を知る事ができます。
また評価サイトあるあるですが、流行ってる音楽でも評価が低くつけられてることもよく見かけます。
当時驚いたのは、自分が好んで聞いていたThe Offspringの評価が思った以上に低かったことです。
世間とネットの評価は大きく違うということも知ることができます。
Rate Your Musicをまとめると以下になります。
・ランキングやアーティストページから、大量かつ、簡単に調べる事ができる
・アーティストページからジャンルや別プロジェクトを横断して、没頭して音楽を掘り下げる事ができる
・世間とネット上の評価は大きな隔離があることを知ることができる(聴く音楽を絞ることができる)
②Pitchfork
今やPitchforkは、毎年フェスを実施したり、独自の記事を記載するなど、レビューサイトの域を越え、総合的な音楽メディアサイトとなっております。一部では、「最も影響力のある音楽メディア」と言われているほどです。
そんなPitchforkの原点はレビューサイトです。ここでは、レビューサイトととしてのPitchforkにフォーカスして取り上げます。
Pitchforkの特徴は、以下の三点が挙げられます。
1.ライターによる評価であり、やや偏りがあるものの取り扱いのジャンルの幅が非常に多く、0.0〜10.0点と0.1点刻みとなっている
2.音楽メディアとしても内容が充実しており、高評価のアルバムは話題に上がりやすい
3.評価点数が8.0点以上のBest New Music(BNP)の括りを設けており、高評価のアルバムを探しやすい
Pitchforkの最大の特徴は、ライター個人によるレビューサイトということです。
ライターによる評価サイトなら他にもありますが(Rolling Stone紙など)、Pitchforkはまだ売れていないアーティストの作品でも、質が良ければ高く評価するメディアです。
※少しインディ系のアーティストが取り上げられがちです。
例として、Arcade Fire(カナダのインディ・ロックバンド)の1stアルバムの『Funeral』(2004年)が各メディアで高評価だったのは有名ですが、Pitchforkでは9.7点の高評価を付けており、特に影響度が高かったと言われています。
他にもBon Iver(インディ・フォークバンド)もその類で有名になっております。1stアルバムの『Bon Iver』(2011年)の評価は9.5点です。
また上述したように、メディアとしての影響力が絶大なため、評価されるだけでニュースに取り上げられます。
いわゆる専門家のお墨付きということです。
最近だとFiona Apple(女性シンガーソングライター)の5thアルバム『Fetch The Bolt Cutters』(2020年)が10年振りの10点満点だった事も話題になりました。
そしてもう一つ、Pitchforkの大きな特徴としてBest New Music(BNP)という括りのページがあります。
BNPのページの最上段には以下のメッセージが記載されています。
要約すると、Pitdhforkが選んだ最新の最高の音楽、といった具合でしょう。
このページでは、いわゆる選ばれたアルバムやトラックがピックアップされています。
ジャンルを超えて紹介されており、海外専門家による最新の高評価作品が取り上げられています。ジャンルレスなところがポイントになるので、自分が普段聴かないような音楽を知るきっかけになることが多いです。
全て英語ですが、トレンドを知る上で、このページを見るだけでも価値はあります。
Pitchforkをまとめると以下になります。
・高評価のアルバムは専門家のお墨付きとなるため、取り上げられやすく、またトレンドを追いやすい
・さまざまなジャンルの音楽が取り上げられているため、あまり聴かないジャンルの高評価の音楽を知るきっかけになる可能性が高い
レビューサイトから得られる2つの知的喜び
上記に加え他のレビューサイトでさまざまなアーティストの評価を見続けていく中で、発見したことや知りたいことがたくさん出てきました。
良くも悪くも、海外のサイトなので、
はじめの方に、こんな人にはこのブログは役に立つ可能性がある、と書いたのでもう一度書きます。
1、海外で評価が高い音楽をいち早く知りたい人、聴きたい人
2、海外で評価が高い日本の音楽を知りたい人(位置付けを知りたい人)
3、好きなアーティストがどういう音楽から影響を受けて自分の音楽制作をしているのかを知りたい人
1と2については、既にRate Your MusicとPitchforkで達成することが可能です。1はそれぞれの記事について記載しているので2について少し書いていきます。
海外で評価の高い日本のアーティスト
結論から申し上げると、良くも悪くも海外のサイトになるので、日本のアーティストが取り上げられることは極めて少ないです。
しかし、自分が日本のアーティストの中でも実は評価が高い方がいるのでは、と思うことはあるはずです(少なくとも自分はそう思いました)。
このトピックについては、「フィッシュマンズ」を題材にしていきたいと思います。
わかりやすく評価が高い日本人アーティストに、フィッシュマンズがいます。フィッシュマンズは現代で言うドリーム・ポップのバンドです。90年代を中心に活動してました。
彼らの作品の『Long Season』(1996年)は、22年9月3日時点で、1996年のアルバムの中で1位(2位はDJ Shadowの『Endtroducing……』)、全てのチャート(overall)で35位(34位はThe Smithsの『The Queen Is Dead』)と非常に高評価となっております。
Rate Your Musicでは他にも、椎名林檎やBoris(日本のストーナーロックバンド)も高評価です。
自分はRYMがきっかけでフィッシュマンズを知ることができました。こうしたきっかけで知ることができるのも、レビューサイトではよくあります。
好きなアーティストの音楽のルーツを知る
突然ですが、今私が一番好きな日本のアーティストはKing Gnuです。
特にギターボーカルである常田大希は、カリスマ性があり、見た目もカッコよく、時代の寵児とは彼のことだと確信しています。
そんな常田大希ですが、音楽のルーツは洋楽だと言う話は有名です。
彼が好んで聴いたアーティストで取り上げられているアーティストを一部抜粋すると、
Kendrick Lamar、Radiohead、Miles Davis、Led Zeppelin
などと言われています。
こうした文章を見たときに、私がまず思うのは
「ああ、なるほどな、こういう音楽の影響を受けているんだな」
という、ある意味知的マウントに近いものです。
しかしこれは、様々な音楽を聴いたことによる自分の経験値が活きた例になります。単純にインタビューで聞き流したり、読み流したりするところかもしれないですが、自分が聴いた音楽がプロにも影響力があるのだと認識できるのは非常に大きいです。
そして、
「いろんな音楽聴いててよかった」
と素直に思うことができるのです。だから音楽を探求することはやめられないのです。
最後に
時間は有限なので、いい作品だけ聴きたいという感情は常にあります。こうした時に、レビューサイトは効果を発揮します。
レビューサイトが特に長けているのは、本当に評価されている作品はこれだ、ということをピンポイントで教えてくれるところです。
私自身、今でもレビューサイトは閲覧しますし、毎年のベストアルバムを確認します。
しかし、根底を覆すようですがレビューサイトが高評価している作品が全ていい音楽というわけでは決してありません。
高評価を受けている音楽=質が高い音楽
ということは確かになりやすい構図ですが、そうではない(少なくとも自分にとっては)ことも多々あります。逆に、
高評価を受けていない音楽=質が悪い音楽
ということも全くそうではない、つまり自分にはとてもカッコいい、と感じることはたくさんあります。
レビューサイトばかり見ていると、こうした当たり前のことを見落としてしまいます。私自身そうでした。評価の奴隷になっていたのです。
だからこそレビューサイトの全てを鵜呑みにしては絶対にいけません。
結局のところ、どんな音楽を聴こうが、それは自己満の世界だと思っています。
だからこそ、他人に強制することもないし、聴いてきた量や音楽知識で比較することなんて一切ないのです。