【エッセイ】皇居ランをしてみよう
ドァMチャンネルをご覧の皆さん、こんにちは宮澤です。読むエッセイを間違えたと思った人が多数だと思うが、至って普通の日常のエッセイなのでぜひ読んでほしい。ちなみに私は冒頭で引用したカラオケに行くと画面に出てくるチャンネルを最後まで見たことはない。
私はランニングが好きである。ランニングとはそう、長〜い距離を走ることである。学生時代に冬になるとなぜか体育の授業でやることになるあれである。学生の時は特に好きでも嫌いでもなく、タイムもクラス内で中の上くらいだった。それも運動部で部活をやってない友達や文化部に比べて普段から走っているからという理由でタイムが少し速い程度だった。大学時代は走るのからは遠ざかっていたのだが、社会人になり、学校の先生になってから子どもたちと休み時間に鬼ごっこなどをして遊んでいたのもあり体力は少しずつ付いていた。ランニングをするきっかけとなったのは地域の駅伝大会に職場の人達と出場したことである。大会に出るからにはちゃんと走りたいという真面目さから、仕事終わりに不定期だがランニングをするようになった。さらにはランニングは毎日できないので平日、仕事に行く時と仕事から帰る時の駅から自宅の間は絶対にダッシュをするというマイルールを作り、とにかく走っていた。その時期はやたら早朝からダッシュをしている若者がいると近所でも話題になっていただろう。ちなみに私の自宅から駅までは坂になっており、行きは下り坂、帰りは上り坂である。それが結構な急坂で、ただでさえ走る人なんていないのだがそれを全力でダッシュしている。もし私がその光景を見る側で目が合うなんてことがあったら、全力で目を逸らすだろう。
走っているうちにだんだんと中学・高校時代の部活動でひたすら運動をしていた時期を思い出し、楽しくなってきた私は、あえて仕事に行く時の荷物を重くし、より負荷をかけてダッシュをするというジャンプの漫画の修行編とかで出てきそうなトレーニングをし始めていた。そして、荷物を持たずにランニングをする際に「か、体が軽いっ、こ、これが修行の成果っ」というようなことを考えていた。完全に頭がおかしい。まあ、きついことも楽しめるのはいいことだよね、、ということにしておこう。
そんなドMライフを送っていた時(どんなの時?)友達から皇居ランに誘われた。皇居ラン、文字通り東京駅の近くにある皇居の周りを走ることである。景色もよく、走るのも気持ちいいためランナー達がたくさんいることは知っていた。友達は走ったことがあるらしく皇居周りの走りやすさと、景色の良さなどを話してくれた。ランニングをしに皇居に行くなんてそれはもう趣味はランニングですとランニング用に買いましたと言わんばかりのApple Watchをちらつかせながら言えるなと思い、すぐに乗り気になった。早朝ダッシュの奇行男から趣味ランニングの爽やか青年になる時が来たようだ。
ちなみにその誘ってくれた友達も早朝ダッシュ奇行男の私と同じような性質を持っていると思っている。(一緒にすんな)(違ってたらごめん)
皇居ラン当日である。朝7時ごろに皇居付近に着いた。1月のため気温は低く辺りの空気は冷たかった。ただ、私は初めての皇居でのランニングに心を踊らせていた。既に走っている人も多く、その中には人生の余暇をランニングに捧げて来たことが伺える歴戦のランナー達の姿もあった。そんなランナーの聖地でこれからランニングをできるのだ。
皇居の周りはランステーションというランナー専用の施設が存在する。ランステーションにはシャワーも存在し走り終わった後に汗を流すことができる。また、ランニングシューズやランニングウェアの貸し出しもしており、手ぶらでランニングを楽しむこともできるようだ。
ランステーションで着替えと準備体操、水分補給を済ませて早速、ランニングコースへと向かう。皇居周りは周回コースとなっていて、一周が約5キロである。その日の私と友達はそのコースを4周、つまり20kmを走る予定であった。いや、初めての皇居ランで走る距離ではなくない!?と思ったそこのあなた。そうなんです。私も最初はそう思いました。20kmなんて今まで走ったことないんですけど、今までの宮澤から20kmを走り切った男、そう、「MIYAZAWA」になりたいという気持ちがあったんです。だから走るんです。(言い回し腹立つ)
私たちは皇居前で写真を撮り、ランニングをスタートさせた。流石に20kmは走っててどうなるのかが未知なのでゆっくり話しながら走れるペースで行こうという共通認識の元、ドM達は走り出した。(勝手に仲間作るな)私は初めての皇居ランだったため、走りながら景色がいいところでは写真を撮って進んでいった。さっきまで薄暗かった辺りも、明るくなり始め、天気も好調だ。風もなく走りやすい。絶好のランニング日和である。話しながら走っているとあっという間に一周が終わった。これなら4周くらい全然いける!なんなら一生走り続けられる!20kmを知らない私はそんな呑気なことを考えてニヤニヤしながら走っていた。(お巡りさんこの人です)ただ、ここでペースを上げてしまっては後半が怖いという気持ちは持っていたためかろうじてゆっくりなペースは守っていた。その際に私より一回りも二回りも年上なランナーが素晴らしく洗練されたフォームで私たちを抜かしていき、負けてられないっ抜かしたいっという気持ちに駆られたがグッと堪えて一歩、また一歩と進んでいった。そして3周目をクリアして、4周目に差し掛かったところで異変に気づく。足が痛い。3周目までは流暢に話しながら走っていたのだが4周目から確実に体の様子がおかしい。足は重い。また、数キロ走る程度だと感じなかったのだがランニングシューズのサイズも少し小さかったようで右足の親指の爪が痛い。足を進めるごとに私の口数は確実に減って行き、あんなに流暢に話していたのに4周目に差し掛かった頃には「いける、いけるよ〜」「おっけい、おっけい、メンタル」「大丈夫」など自己暗示に必死になっていた。そんな中隣を見ると「逆に調子出て来たわ」と、快調に走る友達の姿があった。友達は2周目あたりで少し足が痛いと言いながら走っていたのだが3周目の後半から4周目に差し掛かったところで絶好調になっていた。もはや怪奇現象である。ドM度合いで負けてられないっと思った私は(どこで張り合ってんねん)自己暗示をかけながら友達についていった。友達も「いけるよ」「大丈夫、大丈夫」などの言葉をかけてくれ、私の自己暗示を援護した。そしてボロボロになりながらも残り500m、400mと確実にゴールに近づいていった。
そしてついに、私たちは20kmを走り切った。私たちは自然と握手を交わし、やり切った喜びを分かち合った。その達成感は足の痛みや疲労を忘れさせるには十分だった。さっきまでの自分とは全く違う新しい自分に出会えたような気がした。(大袈裟)本当にそのような気持ちになるので長い距離を走ったことがない人は是非やってみてほしい。ただ、同時に20kmなんて人間の走る距離じゃないという気持ちも湧いてきた。それの倍以上の距離を走るマラソンという競技を考えた人は頭がおかしいとしか言いようがない。(個人の感想です。良い意味でですよ?良い意味で)ただ、20kmを走ることでその長い距離を走るという競技に魅了されてしまった自分もいた。これを経験すると42.195kmを走り切った感覚はどれほどの達成感なのか確かめたいという気持ちも出てきていた。まあ、それは当分先の話にはなりそうだが、ハーフマラソンの大会には出てみたいと思っている。
ランステーションに戻りシャワーや着替えを済ませたあと、皇居を後にし私たちは勝利の昼ご飯を食べることにした。特に何を食べるかはきめていなかったが、美味しそうだったラーメン屋に入り、塩ラーメンの大盛りとチャーシュー丼という部活終わりの高校生わんぱくメニューを食べた。(今年27歳)カラカラの体にラーメンが染み渡った。ラーメンも食べ終わり、痛々しくも心地よい疲れを全身に感じながら帰路に着いた。そして駅から自宅までの道のりで思ったのだ。
この道を坂にしたの誰ですか?もうダッシュしないので、許してください。