ダークスレイヤーの帰還は現状で言うと本格ファンタジー足りえない

ダークスレイヤーの帰還の作者について、気になる発言があった。

オタクは広い世界観を持てという意見にも賛成ですが、五島が30歳以上のオタクたちにおすすめしたいのが手塚治虫大先生の名作「火の鳥」「ブッダ」です 仏教的無常観を一番簡単に学べる超名作だと思っています

という発言に対して

これはなかなかに正しくて、例えば西洋文化圏の思想をまんま取り込んだなんちゃってファンタジーを作ってしまわない為にも大事な事です。

と引用リポストをしていたのだ。

しかし、それなりにダークスレイヤーの帰還を読み込んできた私からすれば、「ダークスレイヤーの帰還」には、あまりにも明白な矛盾と浅はかさが散見される。

まず、作者自身が「西洋文化圏の思想をまんま取り込んだなんちゃってファンタジーを作ってしまわない事が重要」と声高に主張しているが、その作品自体がまさに西洋文化の安直な模倣に他ならない。

タイトルの「ダークスレイヤー」からして問題だ。

この単語はフロムソフトウェアのゲーム「キングスフィールド」に登場する有名な武器の名前そのものだ。

作者が同社のゲームを熱心にプレイしているという事実もある以上、これは偶然では済まされない。

オリジナリティを謳いながら、他作品の要素をそのまま拝借するとは創作者としての自覚に欠けていると言わざるを得ない。

また作品内で描かれる「永劫回帰獄の四方を統べる四人の王にして騎士」は、「死、疫病、天災、飢餓、戦争、勝利を得んとする心」を司るとされている。

しかし、この設定はヨハネの黙示録の四騎士を中途半端にアレンジしただけのものだ。

原典では「支配(勝利)」「戦争」「飢餓」「疫病」の四つで統一されているのに対し、作者は「死」と「天災」を無理やり加えて六つに増やしている。

数の不一致やカテゴリーの混乱は、設定を深く理解せずに表面的に取り入れた結果であり、読者に不快感と混乱を与えるだけだ。

また、作品には夢魔といった西洋の神話生物も登場する。

これもまた西洋文化圏の思想をそのまま取り込んでいる証左である。

自分の主張と作品内容がここまで食い違っていては、読者からの信頼を失うのも無理はない。

極めつけは、作者が読者からの指摘に対して具体的な説明を避け、曖昧な返答でお茶を濁している点だ。

矛盾を指摘されても、「後々明かされる」だの「考察してほしい」だのといった言葉で逃げている。

しかし、作品内で伏線やヒントを示していない以上、それは単なる後付けに過ぎない。読者に負担を強いる前に、自らの作品の整合性を見直すべきだ。

結局、作者は「西洋文化をまんま取り込んだなんちゃってファンタジー」を作らないと言いつつ、自らその陥穽に嵌っている。

しかも、その自覚がないままオリジナリティを主張しているのだから始末に負えない。

作品の質を高めたいのであれば、まずは自身の主張と行動の矛盾を認識し、他作品や文化からの借用を慎重に行うべきだ。

読者は鋭い。

表面的な設定や浅はかなアレンジでは満足しない。

深みのある世界観や一貫したテーマ、そして作者自身の誠実さが求められているのだ。

このままでは、「ダークスレイヤーの帰還」はただの寄せ集めの凡庸なファンタジーとして忘れ去られてしまうだろう。




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