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上野オークラ劇場(外伝)
この作品は、以前に長編で書いた「淫魔屋敷・外伝」の続編にあたるものです。
〜登場人物〜
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元・服部半蔵
(隠居忍者&中年純男)
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くノ一の卵
(流浪の虚無僧&女装子)
二人は殺めた馬之介を土葬にて弔った後、東海道への道を歩もうと上野にいた。
「ずいぶん歩いたのぅ」
「えぇ、もう日も暮れました」
「ふ〜確かこのあたりじゃったと記憶しているのだが…」
「あっ、綺麗なお堂が見えてまいりましたわ」
「おぉ〜ここじゃ!ここじゃ〜」
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光り輝く
辯天堂
「神々しく光を放っておるの〜」
「後ろにそびえる高い建物は…?」
「時代背景が江戸じゃから無視せぇ」
「はい…」
「此処では忍びの我らも普通の旅人にならねばならぬぞ」
「不忍(しのばず)だけに…」
「うむ、では旅の祈願に参るぞ」
二人は旅の疲れも忘れ、大黒天の祀られるお堂へ参拝した。
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お堂を照らす
「割と参拝者もいらっしゃいますね」
「都は人も多いからの〜」
「人酔いなどされていませんでしょうか?」
「うむ、参拝も済んだことだし少しどこかで休むとするかの」
「あっ、それでは映写館などはいかがでしょう?」
「映写とな…?」
「はい、色々な物語を大きな白い布に映してご覧いただく余興にございます」
「ほほぉ〜それは面白そうじゃ!案内せぇ」
「それでは、こちらへ…」
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「ここか?」
「はい」
「男女の恋物語が上映されているのか?」
「そのようで…」
「赤い入り口と青い入り口があるが?」
「お好きな方へどうぞ」
「じゃ、まずは赤い方から入ろうかの〜」
(入館しチケットを購入する)
「これは一階と二階どちらもいけるのか?」
「はい、二千銭でどちらも行けるようです」
「お得じゃのう!では、まず一階から入るとしよう…」
(映写室の扉を開けると…)
「むむっ!上映中だと言うのに人集りが出来ておるぞ?!」
「皆、物語も見ずに何をされているのでしょうか…」
(おもむろに人集りに近づく両人)
「…おおっ?!これはなんという…!」
「いやっ…な、なんて猥褻な…」
十数人に囲まれた男女が、裸で立ち後背位をしていた。
「な、なんということ…」
「こんなに大勢の人前で…」
「こ、これは休憩どころではないわ!」
「ゆっくり休めませんね…」
「こんな所ではムラム…ウトウトできぬわ!」
「芭蕉様、二階へ参りましょう」
二人は変態露出カップルに後ろ髪を引かれながらも一階を後にし、二階の映写室へ入った
「うむ、ここなら落ち着いて……ん?」
「なにか、ここも怪しい雰囲気が漂っていますね…」
暗い場内を見渡すと、そこかしこでナニかしている数人のグループが目につく。
「おい、アレ…」
「女が男の股ぐらで顔を上下してますね」
「あっち…」
「女の股間を男が弄ってますね」
「そっち…」
「一人の女に男が三人がかりで色んなことしてますね」
「ん?女…いや、よく見てみよ」
「あっ、どうやら彼女達は私と同じ陰間(かげま・女装の呼び名)のようですね…」
「ということは……莉々!籠で顔を隠せ!」
「えっ?は、はい!…」
しかし、時すでに遅し。芭蕉と連れ添って椅子に座っている莉々は、数人の男に狙われ周りを囲まれてしまった。
「いやっ?!ば、芭蕉さま!どうすれば…」
「ぐぬぬ…仕方ない、かくなる上は…」
「ま、まさかアノ秘術を!」
「喰らえ!穴流忍法・放屁の術〜!」
(ぷぅ~)
「うっ!クサッー!」
たじろぐ数人の男達。
「今じゃ、逃げるぞ!」
「……は、はい〜」
駆け足で一階に戻る二人。
「ふぅ〜危ないところじゃったの…」
「私も少し喰らってしまいました。あ〜、鼻がもげそう…」
「はははっ!では、煙管の煙で臭いを誤魔化すがよい」
芭蕉は煙管に葉を詰め煙を燻らせた。
そこに一人の陰間が近づいてくる。
「ちょいと、そこの御仁。アタシにも一服させておくれよ…」
粋な感じであらわれたその陰間は、芭蕉と年齢も近そうな出で立ちだった。
「あら、アンタも陰間かい?」
「えぇ…まぁ」
「アンタ達、中には入ったのかい?」
「うむ、一階では男女が見せつけ行為をしており、二階では陰間が男をたぶらかしておったわい」
「たぶらかす…ふふっ。アタシも痴漢させてたぶらかしてる口かもねぇ〜」
「なるほど、一つ聞いて良いか?」
「なにさ?」
「二階では陰間が猛威を振るっておるのに、一階では大人しく見てるだけなのはなぜなんじゃ?」
「ん〜…、棲み分けっていうのかね」
「棲み分け?」
「まぁ、要するに陰間に許されているのは二階だけなんだよ。一階は通常でというか…」
「あれで通常?」
「流行り言葉を使うならジェンダーレスって言うのかい?世の中は性差別を無くそうとか言うけどさ、こういう場所でも明確な境界線は存在するってことなんだよ」
「いやそれなら、女と同じように…」
「馬鹿言っちゃいけないよ。純女の裸を見ようって囲んでた男が何人いた?触れもしないのに見るだけであんなに集まって…」
「あぁ…なるほど」
「結局、男なんざ女を前にしたら陰間になんて見向きもしないのさ…」
「そう…分かる気がします。私も男だから…」
「悲しい話だね、あんなもん見てるだけじゃつまらないのに…アタシならスグに触らせてやるってのにね〜」
「じゃ、ワシにちょいと触らせておくれ〜」
「こらっ!助平俳人」
「ふふ…アンタらお似合いだね。そうだ、隣の青い場所には行ったのかい?」
「いや、まだ…」
「そっちはね、こっちとは違って本当のジェンダーレスよ!性の境界線なんてない乱痴気地獄なんだから…」
「乱痴気…地獄…」
「芭蕉様も狙われるってこと?」
「止めておこう、ワシは生涯タチ一筋ゆえ」
「挿れるのはお好きでも、挿れられるのは怖いので御座いますね〜」
「こっ、怖くなどないわい!」
「まぁ、無理なさらず…笑」
「ここはもう充分じゃ!次じゃ次!」
「では、浅草寺に参りますか」
かくして二人の初央倉(オークラ)劇場訪問は終わった。
続く。。