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魔女っ娘ハルカ⑪(小説)

〜帰りの車中〜

「……にしても、お酒弱いね!」
ハルカが俺にダメ出しをしてくる。

「ん〜若い頃はもう少し飲めたんだけどな」
水を飲み、アルコールを散らす俺。
(飲酒運転ではないぞよ)

「それでは、私と張り合えないわね〜」

「張り合うって…飲みにでも行くつもり?」

「うん。ちょいと気晴らしに行こうよ」

「え…どこに?」

「行ってみたいところがあるの!多分、ご飯も食べれるから夕飯がてらどう?」

「う〜ん…ハルカが行きたいならいいけど…」

「よし、決定!じゃあ、行けそうな日があれば行こうね〜」

「は〜い…」

俺達は家に帰り、疲れた身体を風呂で癒して眠りについた。

「ヒロ…今日は助けてくれてありがとう。」
そっと、ヒロの頬に口づけするハルカ。

「ん〜…ムニャムニャ…グゴ〜グゴ〜…」

「ふふ…凄いイビキ。疲れたね、おやすみ」

ハルカも石板を物置にしまい眠りについた。
………………………………………………………………………………

〜翌々日〜

「じゃあ、行こうか。」

「うん!緊張する…」

「色っぽい服着てるね…」

「ちょっとおめかしw」

「今日は電車だからね、ずっと俺にくっついてなよ。」

「恥ずかしいけど…そうする。」

俺達は電車に乗り新宿へかった。

ハルカと出会う前までは全くと言っていいほど霊感など持ち合わせていなかった俺だが、最近では道を歩いていても「あれ?」と、思うことがよくある。

例えば、路肩にただ座っているだけの人も注意深く見てみると明らかに顔色が悪く少し透けて見える。
公園などでも、そういった透けてる人をよく見かける。

こないだなど、ビルの上にボッーと立っている人がいたので、「危ないな〜」と思いながら俺が見ているといきなり飛び降りてきた。
「ヤバい!」と辺りを警戒すると、途中で消えていなくなった。

きっと、見える人って自分の意志とは関係なく、こういった事を日常的に目にしなくてはならないんだろうなと感じた。
俺も霊感あったらな〜とか、気軽に言うもんじゃない。
精神的に不安定になる可能性もある。
見なくても良いものは、見る必要ないんだ。

河童や天狗を見た俺が言うのもなんだけど。

「こっちかな…」
俺の腕にギュッとしがみつきながら、店を探すハルカ。

「本当にこっちなの?新宿二丁目まで来ちゃったけど…」
俺はゲイさんの街で有名な二丁目を初めて歩きながら、オロオロしていた。

「あっ…ここだ」

「えっ…ここ?」

ハルカが指をさした先には、ちぃかわのコスプレをした半裸の厳つい男が二人で客引きをしていた。

「お〜……」

俺はその横をスーっと通り抜け、ビル二階の入口まで急ぎ足で向かった。

「本当にココ?」

「うん、ドア開けて」

(ガチャ…)

「あら〜いらっしゃ〜い」

「こんばんわ…」

「お一人様〜?」

「ふたり…はい、一人です!」

竹原ピストルにそっくりなママに案内され、カウンター席へ座る。

「どうぞ〜お好きな席へ〜!」

俺はまんまとゲイバーへと来てしまった。
まぁ、少し興味はあったのだが…いざ来てみると緊張する。

「お飲み物はどうします〜?」

「俺は…コーラとか…」

「(あと、イエガーをショットで頼んで)」

「あっ…コーラとイエガー?を下さい」

「は〜い♪」

俺はハルカに目配せする。
「(おい…俺、そんなに強い酒なんて飲めないぞ!)」

「(あっ、そっか)」

「(どうするんだよ!頼んじゃったぞ)」

「(じゃあ、こうしよう)」

そう言うと、ハルカは俺に寄り添いスッと体内に入ってきた。

「(おっ…お〜?!)」

「(これね、憑依っていうんだ。あとは、任せて。)」

ハルカは俺の身体を使い、食事のメニュー表を見る。

「はい、コーラとイエガーね…あらっ?なんか来た時と雰囲気変わった?」

「えっ…、あ〜…分かります〜?w」

「もしかして、女装さん?急に可愛らしい感じになったわね〜!」

「あら、ありがとうございます。なら、今度メイクしてA面で来ちゃおうかしら〜」

「(俺が…?)」

「スイマセ〜ン。あと、おでん二つ下さい」

「食欲旺盛ね!笑」

ハルカはチビチビとコークイエガーを堪能している。
俺は脳内でハルカと会話をする。

「(ハルカ、大丈夫か?)」

「(私は平気よ、これならヒロも酔わないですむでしょ)」

「(お酒好きなんだな〜w)」

「(まぁ、島では泡盛で鍛えられたからね〜久米仙って地酒。今度飲む?)」

「(そういえば、こないだ土産酒に買っていった焼酎もアルコール強かったよな〜)」

「(皆さん、喜んでらしたね)」

「(鬼さん…怖かった…)」

「(ふふ…でもね、もとは皆んな人間だったんだよ〜)」

「(人間…?)」

「(うん。皆んな色々あって鬼になったり、天狗になったり、妖怪になったりしてしまったの…)」

「(そうなんだ…)」

「(そう…例えば、大切な人とか、大事に想ってる人に何かあったり、裏切られたりして心が保てなくなって自分を変える。)」

「(自分を変える…)」

「(もとは皆んな優しくて、思いやりがあって、強くて、愛に溢れている…そんな人達。それが、絶望を味わった時に変わってしまうの…)」

「(天使が悪魔にか…)」

「(人に限らず、生き物は皆んなそう。天使と悪魔は表裏一体。皆んなそれぞれ陰と陽を持ち合わせ、場面によって使い分ける。)」

「(100%イイ人も悪い人もいないよな)」

「(誰にだって良いところあるし、後ろめたいところもある)」

「(俺にもハルカにも…)」

「(そうね。)」

「(ねぇ、映画のコンスタンティン見たことある?)」

「(あるよ〜)」

「(大天使ガブリエルが悪魔を呼び寄せ、大魔王ルシファーが主人公を救う。逆だものね、立場がw 俺、キアヌ・リーブス大好きだから面白かった!)」

「(あれは…?ペプシのCM)」

「(小栗旬の?)」

「(そうそう!あれも、人間としての情感が表現されてて凄く好き!)」

「(カッコいいよね!桃太郎w)」

「(私、キジになってお供しちゃう!)」

「(いや、木登りが上手い猿でしょ)」

「(えっ!やだっ、見てたの〜!?)」

「はい、おでんどうぞ〜!アツアツね♡」

俺達はおでんを食べながら、脳内でハルカと色々な話をした。
ハルカは映画の他に、競馬も好きという事。
ウマ娘大好きっ娘である。

家の中で二人で話すのとは少し雰囲気が変わり、アルコールが入ってほろ酔い気味のハルカは色っぽくてとても可愛かった。

「(ふ〜今日はこれくらいにしておきますか〜)」

「(ああ…また今度休みの日にでもね。)」

俺はハルカを憑依から外し、お会計をして席を立つ。

「また、いらしてね〜」
竹原ママに手を振られ二丁目の街を出る。

「あ〜気持ちいい〜」
酔って俺に抱きついてくるハルカ。

「あんな強いお酒よく飲めるよ…」
俺はハルカの頭を優しく撫でた。

「何言ってるの〜こんなもんじゃないからね〜。次は、四件位ハシゴするよ〜!」

「おいおい…ホントかよ…」
(本当だ…)

千鳥足の幽霊を連れ立って新宿の街を歩く。

この時の楽しい気持ちが、次の試練で打ち砕かれる事になるとは、俺達も思っても見なかった……

続く。。

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