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魔女っ娘ハルカ⑲(小説)

〜その後の宇江城岳〜

私の腕の中で横たわる彼は、私を見つめながらゆっくりと消えていった。

「なんで……どうして……」

私は龍神を罰当たり覚悟で睨みつけた。

『殺してなどはない、記憶を無くして、身体に戻したまでだ…』

「そんな…記憶をなくすって、それじゃ私の事も…」

ハルカは膝をついてうなだれた。

『これまでの行い、彼の協力を得て…と、申したな…』

「はい…」

『それで良しと考えているのか?』

「……いえ」

『何故、宝玉を奪われた?何故、何年も時を用した?何故、一人でここへ来なかった?』

「それは………私が弱いからです」

ハルカは悔しさのあまり、唇を噛み締めた。

『貴様は余に仕える一族の後裔であろう、なんとも情けなし…』

「誠に申し訳御座いません…」

龍神はうなだれるハルカを一瞥する。

『これより、貴様の魂を元の身体へと戻す。次の新月の晩、ガマ(洞窟)に訪れよ…』

「戻す…?私は戻れるのですか?!」

『必ず来い、貴様を鍛える…』

そう告げると、龍神は宝玉を手に空へと駆け昇っていった。



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(島内病院・入院患者棟)

看護師が各部屋を見回り、点滴の確認をしている。
「ここは良し、っと。入江さんは……えっ…」

いつもは寝たきりの患者がベットから起き上がり、窓の外を見ている光景を目にする看護師。

「ウソ…入江さん…?目覚めたの?…先生!」

看護師は私の姿を見て驚き、主治医を呼びに行った。

「久しぶりだな…この身体…」

私は自分の魂と同化した身体に懐かしさを感じ、両腕で自分を抱きしめた。

「ヒロ…貴方は今どうしてるの…?」

私は病棟の窓から見える満月を見ながら、いなくなってしまった彼に想いを馳せた。

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それからの数日は大変だった。

父は絶叫し、母は気を失い、近所の人はおろか島中の人々が私の見舞いに訪れた。

二十年以上前に倒れ、植物人間状態から復活した「奇跡の人」を一目見ようと院内は大混乱に陥った。

院長先生や看護師さんが、無理をさせないようにと必死に守ってくれたが、「沖縄タイムス」の記者の取材によって、私のことは沖縄中の人々が知るところとなった。
ちょっと全国放送のニュースにもなったみたい。

おばぁと神の力のおかげで、二十年前の見た目から変わりなく、体調の回復も早いので、数日で退院の運びとなり、我が家に帰った。

母は沢山の沖縄料理でお祝いしてくれ、父は涙を流して喜んでくれた。

私は、あの儀式の後の事を両親に包み隠さずに話した。
そして、この先のことも…

「ということなんだよね…」

「そうか…まぁ、海人がそうしたいのならそうすればいいさ〜」

「私らも、もう歳だしね…あんたは今まで戻ってこれずに辛い思いをしてたんだから、好きにすればいいさ〜」

「龍神様が少し怖いけどね…」

「なんくるないさ〜、あの神さんはあんたを悪い目にはあわせないはずよ〜」

「きっと、その好きな人にもまた会えると思うけどね〜…海人、あんたの信じるように生きなさい。」

「おとぅ…おかぁ…ありがとう……」

私は両親に抱きつき、家族水入らずの幸せを噛み締めた。


翌日から仕事を探さなければと思い、近所を散策する。

観光客が利用する海岸のイーフビーチに向かう道沿いに、コンビニが立っていた。

あなたとコンビニ
ファミリーマ◯ト♪


店頭に【バイト募集】のチラシが…

「ヒロとコンビニ行ったな〜…なんか、思いだしちゃう……よし、ここで働かせてもらおう。」

店内に入り、バイトの旨を伝える。
店長出てくる。
私が「奇跡の人」と分かる。
客寄せ要員として即採用。
やったね!

「これで、少しでも入院してた時の費用を稼いで足しにしてもらおう…」

私は、この日から週三のフルタイムで出勤し始めた。

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そして、新月の夜…

私は、龍神様との約束通り、日が落ちてからガマへと向かった。
島では一躍人気者となってしまったので、いつもの「海人」ではなく、「ハルカ」に変身して家を出た。
正味、この方が私らしくいられるから良い。

暗い洞窟の入口から入り、懐中電灯で照らしながらガマ内を歩く。

『…来たか…』

龍神の声がガマの空洞全体に響いてくる。

「はい…」

龍神は大きな身体を丸めて、ハルカを待ち構えていた。

『貴様を今夜から誠の神使に仕上げてゆくぞ、覚悟はよいか…』

「毎日ですか…?」

『そうだ、毎夜だ…』

「いや、毎日はちょっと難しいんですけど…バイト始めてしまったので。」

『貴様…バイトと修業と秤にかけおるつもりか!不届き者めが!』

「いや、そう言いましても…これ以上、両親に負担をかけられませんし、ずっとニートみたいな生活してたので社会復帰もしないといけませんし…」

『愚か者め……じゃあ、いつならよいのだ…』

「とりあえず、火木土はバイト入ってるので、そこ以外で…」

『なら、来れる日は全部来い…』

「あ、日曜は休みたいんですけど…」

『なんと…ふざけおって…』

「月水金は、ちゃんとやりますから!」

『まったく、今の若い者は…なら、それで良い。そのかわりそれだけ長引くぞ!ほれ、さっさとコレに着替ろ!』

龍神はハルカに青い服を渡した。

「これは…トップ画のスポーツブラとブルマ…?」

『そうだ、デサントのトレーニングウェアだ。動きやすい格好でないと修業にならぬからな。』

「龍神様はこうゆうのがお好きなのですか…なかなかの変態…」

『…今、なんと申した…』

「いえ、それで修業というのは…」

『ふふ…余のシゴキは厳しいぞ。ついてこれるかの〜』

「はい、頑張りマッスル!」

龍神様の修業は主に戦闘に関するものだった。
例えるなら、界王様の下で鍛えられた悟空のような、もしくは新しいとこで言うと鱗滝のところで修業した炭治郎のような…
そうイメージしていただけると、書く手間が省けるのでありがたい。

こうして、長い長いバイト生活と修業の日々が始まった。

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・それから五年後…・

「龍神様ったら…なによ、こんな昼から呼び出して…」


ヤジャガマ

その日は、なぜか日中に呼び出され龍神様の御教示を受けていた。

『…であるからして、この世には神などおらず、全ての魂は一つの意志から生まれ給うたものである。わかったか?』

「先生、質問です!では、龍神先生や他の神様は一体何者なのでしょうか?」

『神という物は、人が勝手に創り上げたイメージである。ゆえに、我々のような不可思議な現象、事象は主に宇宙由来の意志や魂の引き起こす、言わば人を超越した存在の……』

「あ〜、わかんない…」

『だから、つまり人間の認識出来る三次元よりも高次元の存在の意志から受ける、アセンションを誘発する意志の…』

「もっとわかんない…」

『…もういい!…まったく生徒がバカだと教える方は苦労するわい』

「なら先生!他に質問があるんですが〜」

『なんじゃ…』

「どうして先生は、あの時に私の彼氏の記憶を無くしてしまわれたんですか?」

『はぁ?それは、お前が修業に打ち込めるようにじゃよ…』

「別に記憶まで消さなくても良いような気がしますけどね〜」

『お前ら、あのままだったら遠距離でも度々会いに行ったりして、修業に専念しなかったであろうが』

「そんなことないですよ〜ちゃんと真面目にやってました!」

『それはどうだか〜…ホント言うと、宝玉持って余を呼び出した時も、ドラゴンボールのシェンロンみたいに願い事叶えて貰えるみたいに思っていたんじゃろ〜w』

「そ…そんなことは…」

『私と彼氏がずっと幸せに暮らせますように〜とか…誰がそんなもん叶えるか!アホくさ!』

「…え、もしかして龍神様、私の彼に嫉妬してます?w」

『ばっ…、馬鹿か貴様!なぜに、この偉大なる龍王があんなチンケな男に嫉妬するのだ?』

「…龍神様、私の事好きなんでしょ?w」

『あぁ〜ー?!この小童が!お前のことは好きというか、余にとって大切な神使であるからして…どこの馬の骨とも分からぬような奴は遠ざけておきたいというか…とにかく、まだお前達は半人前だということじゃ!』

「では、どうすれば龍神様に一人前と認めていただけるのでしょうか?是非、教えて下さい。」

『…最後の試練を成し遂げれば、ここでの修業は終いにしても良い。』

「その、最後の試練とは?」

龍神は、暫し考える…

『余を降伏させることじゃ』

「えっ…長くなる?」

『なんじゃ…長くなるって?』

「いや、この作者…バトルシーンが苦手みたいなので…なんか、考えるだけで時間がかかるらしく…」

『そんな作者都合で、余の見せ場を短縮しようとしているのか!この、罰当たりが!』

「まぁまぁ…んじゃ、龍神様。文字数もだんだん多くなってきましたので、いっちょやってみっか!」

『なんか…軽いな。まぁ、やるのであれば手加減はせぬぞ…かかってこい!』


【バトルシーン】

龍神の覇気を前に、構えるハルカ。

龍神は首をもたげ、ハルカに襲いかかった。

「くっ……!」
既のところでかわすハルカ。

『グハハハッ!遅いぞ小童!』
龍神は狭い洞窟内を縦横無尽に動き回る。

「狙いを定めて…一瞬の隙を…」
ハルカは龍神の素早い動きを追い、一撃必殺の機会を伺う。

『馬鹿め…余に隙などないわ!』
龍神は電光石火の攻撃で、ハルカを突き飛ばす。

「あ゛っ!…つぅ〜…くそ…」
岩場に突き飛ばされるハルカ。

『修業の成果も見られぬような奴は、誠に情けないのう…いっそ、あの男のように記憶すら消して、一から修業をやり直すか』
龍神はハルカに対して呆れた表情で嘯く。

「…また一から?冗談じゃない…ふざけるな」
ハルカの顔つきが変わる。

『冗談なものか、あの男の事も忘れて修業に専念できるわい』
龍神は口を開けて波動を溜め始める。

「やめろ…やめろ…絶対にそれはさせない…」ワナワナとハルカは震え出す。

『ふっ…もう遅いわ、喰らえ!』
龍神は光の矢を放射した。

「絶対にイヤだーーーーーー!!!!!」
ハルカが強烈な叫び声をあげると、ハルカの身体は大きな光に包まれた。


スーパーハルカちゃん

そのハルカを包む大きな光が、龍神の矢を跳ね返した。

『なんと…覚醒しおったか!』
龍神はハルカのあまりの変わりように驚く。

「ここから、また五年も修業なんてしたら…私は…私は…」
拳に力を溜めるハルカ。

『…なんじゃ、この妖気は?!』
ハルカの妖力に慄く龍神。

「私は…40のオバサンみたいなオジさんなっちゃうじゃないのよーーーーー!!!!」
閃光一線、龍神の顔面目掛けて殴りかかる。

『ふっ、その程度の拳……なに?避けられん』
身体が固まりハルカの攻撃をまともに喰らう龍神。

「ヒロに会わせろーー!!!」
龍神の顔面から首、腹も背中もボコボコに殴りつけるハルカ。

『グゲェー〜!…グゴ…ブフッ!』
サンドバッグのように光の拳で殴りまくられる龍神。

「もう、神様だって容赦しない…恋の邪魔をする不届き者にはこうしてやる!!」
ハルカは両手を頭上に高く上げ、光の波動を生み出す。

『馬鹿な…お前ごときが、なぜそれを…』
龍神はハルカの頭上の光を驚愕の表情で見つめる。

「覚悟なさい…喰らえ!ハルカ玉!!!」
なんとも安っぽい名前の妖術をハルカは龍神に放り投げた。

『グワーー!……やられた〜参った、降参』
光の玉を食らった龍神はハルカに降伏した。

【バトルシーン終わり】
いや、こんな感じなら書かなきゃよかった…

………………………………………………………………………………

茶番劇も終わり、龍神とハルカは3時のアフタヌーンティーを飲みながら、今後について話しをしていた。

『まぁ、正直かなり手加減したがまずまずの合格点じゃったの』

「手加減…?ありがとうございます」

『これで、余も安心してこの国を離れられるわ』

「え?日本から御出になられるのですか?」

『余は元々、大陸から渡って来たのじゃよ、今の中国が唐の時代にな』

「唐の時代…」

『あの頃に日本から空海などが修業に訪れての…なかなか面白い奴じゃったから航海の安全を確保する為についてきたのじゃ』

「空海…弘法大師様ですね」

『それからは、中国と日本の民達の行き来が盛んになっての…なるべく遭難などせぬように見張っておったんじゃ』

「海上保安龍だったんですね。」

『じゃが、あれから時はたち…昨今なにやら台湾あたりに不穏な気配が渦巻いておっての…』

「有事の気配ですか…」

『中国という国は国土も広く優秀な人材も沢山おる、資源も豊富じゃ。しかし、それを上手く活用し統率出来る人材がおらぬ事が最大の弱点なんじゃな』

「なるほど…」

『人間には良い所もあり、愚かな所もある。神も仏も然りじゃ。しかし、決して道に外れる行いはしてはならぬのじゃよ』

「そうですね…」

『馬鹿なお前にもわかったようじゃの。では、この国の加護はお主に任せるとしよう』

「いや、いきなり荷が重いです。」

『余に勝っておきながら何を戯言を…とりあえず、修業は終いにして良いから、明日から頼んだぞよ』

「えー〜?!待って待って!私は何をすればよいのですか?」

『そんなもん自分で考えろ。さらばじゃ!』

そう言うと、龍神は光の速さで洞窟から出て行った。

「どうしよう…まぁ、いいか。この島出てヒロに会いに行こう!」

とりあえず、もう修業しなくていいと喜んだハルカはバイト先に辞める意向を伝え、翌日、空港から東京を目指した。

続く。。
次回、最終話






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