「時間の本」3選 FIKAのブックトーク#3
こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。
6月10日が時の記念日だったので、今回のテーマは「時間」です。
ミステリ、SF、ファンタジーなど時間の本は多くて迷いましたが、やはりこの3冊は外せません。
「タイム・リープ あしたはきのう」 高畑京一郎
時間を跳躍する「タイムリープ」ミステリの傑作です。
物語は主人公の女子高生・翔香が誰かとキスしているシーンで幕をあけます。読者もびっくりですが、それ以上にびっくりしているのは翔香自身でした。
なぜならキスしている相手はクラスメイトの若松和彦。クールで秀才でイケメンだけど恋人でも何でもなく、話をしたこともほとんどない。それがなんでキス?
呆然としている翔香になぜか若松は大爆笑。思わず部屋を飛び出した翔香は階段から転げ落ちてしまいます。
目が覚めるとそこは見慣れた自分の部屋、しかも朝。さっきのは夢か、と慌てて学校に行きますがどうも様子がおかしい。
今日は月曜日のはずなのに、火曜日になってる。
友達は昨日の翔香も普通に学校に来てたと言うけれど、翔香には月曜日の記憶が全くありません。
戸惑う翔香は自分の日記に不思議な文章を見つけます。
「混乱してると思うけど大丈夫。若松くんに相談しなさい。冷たそうにみえるけど頼りになるから。」
それは翔香自身の筆跡で書かれながら、全く覚えのないメッセージでした。
ここから時間と空間を超える翔香の大冒険が始まります。翔香は失われた記憶を取り戻し、タイムリープの謎を解くことができるのでしょうか?
すべての伏線とエピソードが完璧なパズルのように配置された精緻なSFミステリです。1995年に刊行されたのち絶版となり長らく「幻の名作」と呼ばれていましたが、2022年に新装版で復刊しました。今なお色褪せないタイムリープの金字塔的な作品です。
「モモ」 ミヒャエル・エンデ
「時間」がテーマの本と言えばこの作品を思い浮かべる人も多いと思います。
時間泥棒から盗まれた時間を人間に返してくれた少女モモの冒険を描いたファンタジーです。
子どもの頃大好きだった作品ですが改めて読むと、時間を盗まれた世界が今の世の中に酷似していることに愕然としました。
物語の中で灰色の男たちは人々に囁きます。仕事を丁寧にする必要はない、年老いた母やペットの世話や友人との付き合いもいらない、そんなことは時間の無駄遣いだ、と。
人々はひたすらせかせか働くようになります。無駄な時間は使わない。生産性のないことをするのはもったいない。やっつけ仕事で効率よくお金を稼いで、どんどん新しい物を買う、その繰り返し。そんな生活が楽しくなくても正しい生き方だと思いこまされて。
こうして灰色の男たちは、人々から時間だけでなく生きる喜びまでも奪っていくのです。
生産性とか効率とかタイパでしか物事を考えられない現代にそっくりだと思いませんか?
この物語にはモモがいて、人々は時間を取り戻すことができました。
令和の私たちにモモはいるのでしょうか?
今こそ多くの人に読んでほしい物語です。
「14歳のための時間論」 佐治晴夫
「時間」とは一体なんでしょう?
時間がないとか、時間がたつのが早いとか、時間に関する言葉を何気なく使っていますが、改めて考えると「時間」は謎めいた存在です。
「どうして時間は見えないの?」
「過去の時間はどこへ行くの?」
「誰にとっても時間は同じなの?」
そんな疑問にこの本はひとつひとつ答えてくれます。著者は物理学者ですが難しい数式はほとんど出てきません。時間の不思議さについて、いろんなたとえ話を交じえながら楽しくおしゃべりしている感じです。
「時間とは誰のものでもなく、あなた自身が作り出し、あなた自身のものだ」ということを感じ取ってほしいと著者は言います。
今14歳の人だけでなく、かつて14歳だった人にも読んでほしい物理学的で哲学的な時間論です。
以上、3冊の本を紹介しました。
機会があったら「タイムリープ」系小説にしぼった紹介もやってみたいです。
読んで下さってありがとうございました。