「俳句の本」3選 FIKAのブックトーク#12
こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。
今回のテーマは「俳句」。
8月19日は俳句の日です。不勉強で句集には詳しくないので、俳句を題材にした小説やエッセイを3冊紹介します。
「ぼんぼん彩句」 宮部みゆき
俳句サークルで詠まれた俳句を宮部みゆきが小説化した短編集です。
元ネタの俳句自体も味わいがあるのですが、たった17文字の言葉を恐ろしいホラー掌編に、人の心を抉るようなサスペンスに、人生の哀歓を綴った物語に仕立てる宮部みゆきの技量がすごい。
全12編の中で特に印象に残った4つの作品を紹介します。
「鋏刺し庭の鶏頭刎ね尽くす」
物騒な句ですよね。ハサミで庭中の鶏頭を刎ね尽くした人の心の中に滾っていたものを静かに描き出すサスペンスです。
「異国より訪れし婿墓洗う」
「異国より」というからにはお婿さんは外国の人なのかなと思っていたら、まさかこんなSF的な設定があると誰が予想したでしょうか?
「月隠るついさっきまで人だった」
え?「ついさっきまで人だった」ということは今は何…?結局、人の心が一番怖いという話です。
「同じ飯同じ菜を食う春日和」
ある家族の数十年の歴史が「お花見」の定点観測で点描されます。何気ない日常の積み重ねこそが人生なのだと教えてくれる温かな物語です。
わずか17文字の世界から紡ぎ出される「宮部みゆきワールド」をご堪能下さい。
「南風吹く」 森谷明子
俳句甲子園って知ってますか?
創作俳句を競う高校生の大会です。与えられた題に沿った創作句を提出して地方大会に出場し、勝ち抜けば愛媛県松山市で行われる全国大会に出場することができます。
そんな俳句甲子園を目指す高校生たちの青春小説です。
高校生の航太は過疎化が進む瀬戸内の島で、将来が見えない不安な日々を過ごしていました。そんな時、同級生の日向子から俳句甲子園に誘われ俳句の面白さに目覚めていきます。
俳句甲子園は、単に俳句を提出して終わりではありません。大会は言わばディベートの場。自分たちの俳句を読み上げた後、対戦相手からの鋭い質問に答えなければなりません。
この句にどういう意味をこめたのか、なぜこの言葉を選んだのか、表現として弱くはないか、など質問は細かく多岐に渡ります。
それにきちんと答える一方で、こちらも相手の句に対して的確な質問をしなければなりません。俳句そのものを評価する「作品点」とディベートによる「鑑賞点」を合わせた得点で勝敗が決まるのです。
このディベートがすごく面白い!
1つの言葉にどれほどの思いをこめられるのか、わずか17字でどれだけの世界を作ることができるのか。
真剣に向き合う高校生たちの熱い「言葉のバトル」は私たちが知らなかった日本語の繊細さ、豊かさを教えてくれます。
「南風」をテーマに詠まれた二つの句を皆さんならどう鑑賞しますか?
(白) 「南風地球の裏の裏に吹く」
(赤) 「南風やすべては海のかなたから」
「わたしの好きな季語」 川上弘美
作家であり俳人でもある川上弘美が、好きな季語について語る俳句エッセイです。
96個の季語の中には「え?その季語がその季節なの?」というのもたくさんありました。
「蚯蚓」や「木耳」が夏の季語って知ってました?
「枝豆」や「生姜」は秋の季語なんですよ。「夜長妻」みたいに初めて聞く言葉もありました。(秋の季語だそうです)
そんな一つ一つの季語にまつわる思い出や体験が語られ、最後にその季語を用いた俳句が紹介されます。
先ほどの季語「夜長妻」を用いた俳句です。どんな夫婦の語らいを想像しますか?
軽妙洒脱な川上弘美のエッセイと、奥深い俳句の世界が交差する楽しい1冊です。
以上、3冊の本を紹介しました。
いつか「短歌」の本も紹介したいなあ…
読んで下さってありがとうございました。
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