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手術の日
手術の話少し続けます。
入院して当日まで19日間は気持ち的には大変でした。
なにせ、19日後にはこの世には存在しないかもしれないと思って、入院しているんです。
死刑囚の死刑宣告に近いものがあるのかもしれません。
当時の心臓の手術は難しかったのです。
それは今でもきっと変わらないのかもしれません。
前日の夜、寝れない夜を初めて経験しました。
考えるのは、ここまで生きてきた人生や、思いでの類で、未来につながる思いをどうしても持つことができませんでした。
それまで、ぼんやりとして自分の病気を治そうと思ってはいった鍼灸の道を、もし生きて病院を出たらみんなの幸せのために仕事をしようと誓ったのはなんと前日の夜の事でした。
それまではぼんやりとしか思っていなかった思いでしたが、しっかりと胸に刻んだのはこの日だったのです。
手術の当日、ストレッチャーに乗せられ、両親の見守る中、手術室に向かい母が、起きたらすぐに行くからね。それまでゆっくりおやすみなさい。
そう言ってくれたのを覚えています。
手術は午後2時開始になり、夜8時過ぎまで終わりませんでした。
深夜の12時過ぎに、僕は目を覚ましたのだと思います。
見えるのは白い天井でした。
全身麻酔の手術をした人はだいたいわかるでしょうが、記憶があいまいなのです。いったい今はどこにいるんだろう。どうしてここにいるのか・・・そう考えはじめると、なかなか前に進みません。
起きた事に気が付いた看護師さんが、渡邊さん、今は夜12時です。手術は無事に終わり、ここはICUです。
人工呼吸器が入っているので、言葉を発することはできませんが、このホワイトボードに書かれているひらがなを指さしてください。
それで、言いたいことを伝えてください。
そういい、ホワイトボートを目の前に差し出してくれました。
み ず が の み た い
お水は飲めませんので、口を湿らせて上げますね。
冷たい水を含ませた綿花をもってきます。
これで唇と、口の中を濡らしますから。
そういって口に綿花をいれて、濡らしてくれたのを覚えています。
15分も経ったころ、看護師さんが、そろそろ外にいるご両親をおよびします。
いいですか?
は い
そういって、両親をいICUに入れてくれたのです。
母は約束どうり おはよう ゆっくり寝たね。そう言ったのです。